松尾昭典『沖縄10年戦争』(1978年)を観る。
前作の『沖縄やくざ戦争』(1976年)と同様に、「第4次沖縄抗争」(1973-81年)を描いている(らしい)。前作では、千葉真一が冗談のようにエキセントリックな役を演じていたが、ここでは、よりリアルな演出がなされている。わかりやすいが、映画としての突破力は前作に劣るかもしれない。
沖縄の施政権返還に伴う「本土」やくざの進出を防ぐために、沖縄の中で統一されたはずのやくざ組織であった。しかし、やがて内部抗争が激化し、「ヤマトンチュー」はそこに付け込む。狙いは、沖縄進出のみならず、海洋博(1975年)の巨大な利権獲得でもあった。そして海洋博が終わり、カネの大半は「本土」に流れ、「ヤマトンチュー」は沖縄から去ってゆく。亀甲墓での沖縄人同志の殺し合いの中で、かれらの脳裏に蘇ったのは、食料すら沖縄人から奪っていった日本兵の姿であった。
それにしても、松方弘樹、佐藤允、千葉真一、小池朝雄など芸達者な面々。にしきのあきらや山田隆夫の登場にはにやりとさせられる。意外な登場は、栗田ひろみである。大島渚『夏の妹』(1972年)において、沖縄を訪れるイノセントな存在として描かれたのであったが、6年後の姿はその鮮烈さを失っていた。