「Mostly Other People Do the Killing (MOPDtK)」という物騒な名前のグループに参加しているサックス奏者、ジョン・イラバゴン。たまたま、『I Don't Hear Nothin' but the Blues』(loyal label、2009年)という吹き込みを見つけた。正確にはソロではなく、ドラムスとのデュオである。ただ、ここではイラバゴンが主役。
Jon Irabagon (ts)
Mike Pride (ds)
ひたすら47分間吹き続けた作品である。ヘンな音も、ユーモア感覚も、過激さもある。ただ、幹は、朗々としたテナーのブロウ。今度(2015年1月)に来日するようで、都合があえばぜひこのブロウを目の当たりにしたいと思っている。どこまで通る音だろう、どこまででかい音だろう。どこまで周囲に即応するだろう。
ところで、柳川芳命というサックス奏者のソロ演奏を聴くと、特にイラバゴンのようなジャズ・ブルースの文脈での演奏の展開とはあまりにも対照的で、文字通り鮮烈な印象を覚える。『邪神不死』(Gokuonsya、1996-97年)は、早川大という書家がライヴの場で書を制作し、その横でアルトサックスを吹いた記録である。
柳川芳命 (as)
早川大 (calligraphy)
この人のサックスは情念をその都度かたちにしたものか。以前に聴いたサックス・ソロ『地と図 '91』でも感じた、「ど演歌」である。音と音の間の残響には、憂鬱というより絶望や諦念があって、内臓に手を突っ込まれたような感覚がある。
名古屋や四日市でよく活動しているようで、ずっと演奏を観たいものだと思っているがまだ叶わない。東京での演奏のときに何とか駆けつけたい。
●参照
直に聴きたいサックス・ソロ、柳川芳命と浦邊雅祥
MOPDtK『Forty Fort』
MOPDtK『The Coimbra Concert』