久しぶりにヌスラット・ファテ・アリ・ハーンを聴きたいと思い、『Shahen-Shah』(Real World、1988年)を入手。
言うまでもなく、イスラム教神秘主義スーフィズムの音楽カッワーリーの偉大な歌い手である。この人ばかりは、生前のパフォーマンスに接することができなかったことが残念でしかたがない。
Nusrat Fateh Ali Khan (vo)
Mujahid Mubarik Ali Khan (vo)
Farrukh Fateh Ali Khan (vo, harmonium)
Iqbal Noqbi (chorus)
Asad Ali Khan (chorus)
Dildar Hussein (tabla)
Kaukab Ali (vo)
Atta Fareed (chorus)
Ghulam Fareed (chorus)
Mohammed Maskeen (chorus)
歌詞は、CDの解説によれば、アッラーやムハンマドを讃えるものであったり、愛の切なさを説いたものであったりする。もちろんウルドゥー語などによる歌唱であり、直接には解らない。しかし、ヌスラット・ファテ・アリ・ハーンの映像『The Last Prophet』においては、パキスタンのレコード店に集う男たちが言う。日本では若者がヌスラットを聴いている、彼らは歌詞が解らないが心に刺さってくると言うんだよ、それこそがカッワーリーだ、と。
それは声の力でもあり、繰り返しを基本とする音楽全体の力でもある。ハルモニウムとタブラが基底のサウンドを作り、多数のコーラスが(教えや愛情といったものへの)想いを幾度となく切々と繰り返す中を、ヌスラットの高くよく通るヴォイスがこれでもかと脳を揺らす。聴き手は半覚醒のようなところに連れて行かれる。
●参照
ヌスラット・ファテ・アリ・ハーンの映像『The Last Prophet』