ジョン・ブッチャー+マシュー・シップ『At Oto』(Fataka、2010年)を聴く。
サックス奏者・吉田野乃子さんご推薦のNYのレコ屋「Other Music」で買った。なんでも、昔タワレコが入っていた場所の向かいにできたため、そのように命名されたという(笑)。小さいながら愉快なところで、LPの「Experimental」コーナーの一番手前には、白石民夫さんの『大凶風呂敷』が輝いていた。
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John Butcher (ts, ss)
Matthew Shipp (p)
ブッチャーのサックスソロが15分ほど、シップのピアノソロがやはり15分ほど、そのあとにデュオが30分ほど。
まるで周辺環境そのものを共鳴体としているかのような人・ブッチャーは、ここでも、実に多彩で激しい共鳴音を響かせる。かれは偶然性を排し、サックスを完璧にコントロールしているとしか思えないのだがどうか。その意味でカメレオンでありストラテジストである。
ソロもいいのだが、硬質なシップのピアノと組み合わさることによって、まるでペインティング・ナイフで網膜が千切れそうな色彩の変化を提示するゲルハルト・リヒターのペインティングが、さらにダイナミックに、あちこちでぱちぱちと爆ぜているようなイメージを幻視する。
録音は2010年2月14日。わたしは同じ月の少し前に、これが演奏されたロンドンのCafe Otoにおいて、ロンドン・インプロヴァイザーズ・オーケストラを観ていた。そしてそのあとマドリッドに移動し、ジョン・ブッチャーと大友良英のデュオを観た(2010/2/12)。ブッチャー氏はそのあとロンドン入りし、2日後にCafe Otoで演奏したということか。不思議な縁である。
●参照
ロードリ・デイヴィス+ジョン・ブッチャー『Routing Lynn』(2014年)
ジョン・ブッチャー@横浜エアジン(2013年8月)
ジョン・ブッチャー+大友良英、2010年2月、マドリッド(2010年)
フレッド・フリス+ジョン・ブッチャー『The Natural Order』(2009年)
ジョン・ブッチャー『The Geometry of Sentiment』(2007年)
デレク・ベイリー+ジョン・ブッチャー+ジノ・ロベール『Scrutables』(2000年)
ジョン・ラッセル+フィル・デュラン+ジョン・ブッチャー『Conceits』(1987、92年)