日本カメラ博物館のウェブサイトに紹介してあった、柊サナカ『谷中レトロカメラ店の謎日和』(宝島社文庫、2015年)を読む。
変人の男と謎めいた女とが繰り広げるカメラ・ミステリー。軽いのですぐに読めてしまうのだが、ツボを突かれていちいち愉快。
登場するカメラは、コダック・シグネット35、フォクトレンダー・ベッサII、ワンテンのハリネズミカメラ、リコー・オートハーフ、ニコンF、ステレオグラフィック、ローライドスコープ、ライカIIIf。古い銀塩カメラは人間的で、ひとつひとつが違って、やはり愛すべきモノなんだな。
しかも、舞台が日暮里~谷中墓地~夕やけだんだん~谷中銀座~へび道あたり。学生時代に住んでいた近くで、先日も「ザクロ」というペルシャ料理の店に行く道々で、ここは変わった、ここは前と同じだなどと呟きながら歩いていると、懐かしさでどうしようもない気持ちになってしまった。
カメラや写真のメカニズム的なものをネタにした小説といえば、高齋正『透け透けカメラ』『UFOカメラ』、真保裕一『ストロボ』。それから、ハヤカワ文庫の翻訳ミステリで写真家が出てきて、一見何も写っていないネガの秘密を解く話・・・作家名すら覚えていない。(思い出した。ディック・フランシス『反射』だった。)