Sightsong

自縄自縛日記

ジム・ホール『The Complete "Jazz Guitar"』

2015-10-31 10:21:31 | アヴァンギャルド・ジャズ

ジム・ホール『The Complete "Jazz Guitar"』(Pacific Jazz / Essential Jazz Classics、1956-60年)を聴く。

Jim Hall (g)
Carl Perkins (p)
Red Mitchell (b)
Bonus Tracks:
John Lewis (p)
George Duvivier (b)
Percy Heath (b)
Connie Kay (ds)

名盤として名高い『Jazz Guitar』(Pacific Jazz、1957年)は、ホール20代のときの作品。昔図書館で借りてイイカゲンにしか聴いていなかったこともあり、ボーナストラックが5曲も入った廉価盤をあらためて聴いた。

いくら音量を大きくしても大きくならないホールの音色は、やはりとんでもなく気持ちがいい。上品というのか、カシミヤのようだというのか、とても柔らかで、和音を通じて周囲と溶け合うような感覚である。かつてはそれが物足りなくて、いまひとつ熱心に聴かなかったギタリストなのではあるけれど。この後、ホールのギターは成熟を重ね、まるで、丁寧に漉いた和紙を何葉も何葉も重ねていくような素晴らしいものになっていく。

ボーナストラックがまたなかなか良くて、特に、変態男爵(と勝手に呼んでいる)ジョン・ルイスによる、沈思黙考の沼に沈んでいくようなピアノについ聴き入ってしまう(とくに「I Should Care」)。

ウィリアム・クラクストンによるジャケット写真も秀逸。

●参照
チャーリー・ヘイデン+ジム・ホール
ミシェル・ペトルチアーニの映像『Power of Three』
マイケル・ラドフォード『情熱のピアニズム』 ミシェル・ペトルチアーニのドキュメンタリー


吉田野乃子『Lotus』

2015-10-31 00:35:54 | アヴァンギャルド・ジャズ

ようやく聴けた、吉田野乃子『Lotus』(Nonoya Records、2015年)。この1週間というもの、巷でえらく評判が高い。

Nonoko Yoshida 吉田野乃子 (as)

アルトサックスの多重録音である。ヘンな音やヘンなテクらしきもの満載で、噴出する活力が暴発寸前である、というか、暴発をコントロールしている。どこを切ってもドキドキするのだが、たぶんそれは、常に<知覚の扉>が開かれているからだ。

知覚は現在であり、絶えず新しい語りを創出する。ブルースもジャズも<すでに語られたもの>でもあり、それはここにはない。過去があるとすれば、(彼女のお父さんが書いた解説のことばを借りれば)数曲の「哀愁歌謡」の中であり、過去であるからこそ抒情であり哀愁なのであり、そして、これが<知覚の扉>をうまくカモフラージュしているようだ。朗々とアルトを吹くときの血が通った音が、なぜか故・篠田昌巳を想起させる瞬間もあるが、篠田昌巳も、抒情と哀愁に流されず抒情と哀愁を提示した人だった、のかな。

確かに素晴らしい作品。11月にNYのThe Stoneで展開される吉田さんのレジデンシーに行ける人が羨ましい。

https://twitter.com/nonokoyoshida/status/652290188027162624

●参照
ペットボトル人間の2枚