Sightsong

自縄自縛日記

ウラジーミル・ナボコフ『ロリータ』

2015-10-08 23:35:00 | 北米

ウラジーミル・ナボコフ『ロリータ』(新潮文庫、原著1955年)を読む。

読了まで妙に時間がかかってしまったのは、もちろん長いからでもあるが、ディテールによって楽しませる作品だからであり、また満員電車で読みにくいからでもある(カバーをしていても、各頁の上に「ロリータ」と記されていると、ちょっとアレでしょう)。

それにしても予想を超えて奇怪で面白い。スタンリー・キューブリックが映画化した同名の作品は、ピーター・セラーズの偏執狂のような見事な演技もあって傑作だと思っているのだが、この小説はさらに偏執狂的である。十代前半の少女に対する欲望に憑りつかれた中年男の語りという形を取っており、そのヤバさが底無しの感覚なのだ。

嗜好は人それぞれであるとしても(一応言っておくと、わたしにはそうした趣味はない)、我執の大伽藍から逃れることができないという恐怖は、誰にとっても無縁ではないに違いない。それが迫りくるために恐怖を覚え、痙攣するような笑いを発してしまうわけである(たぶん)。


ビリー・バング『Rainbow Gladiator』

2015-10-08 07:04:52 | アヴァンギャルド・ジャズ

ビリー・バング『Rainbow Gladiator』(Soul Note、1981年)を聴く。(レコ屋の500円コーナーから救出した。)

Billy Bang (vln)
Charles Tyler (as, bs)
Michele Rosewoman (p)
Wilber Morris (b)
Dennis Charles (ds)

何度聴いても、この時代のセッションなのだなというばかりの印象。それでも、ビリー・バングが愉しそうにヴァイオリンを爪弾いたりしている姿が想像できて、ついにやりとしてしまう。ウィルバー・モリスの中音域で駆動するベースの匂いは、デイヴィッド・マレイの音楽が発していた匂いの一要素でもあったのだという気付きもある。

それよりも、ミシェル・ローズウーマンのピアノがとても溌剌としていて爽やかだ。この人には、M-BASEの面々とも吹きこんだ作品があり、それも聴いてみたくなる。

●参照
ビリー・バング+サン・ラ『A Tribute to Stuff Smith』(1992年)
チャールス・タイラー