からりと晴れて海から強風が吹きつける中、新木場のStudio Coastにて開催された「Worldwide Session 2016」に足を運んだ(2016/5/4)。
今回は、サン・ラ・アーケストラを率いてマーシャル・アレンが再来日している。剛田武さんによるインタビューに同席し、たまに口をはさみ、レジェンドの写真を撮ることがミッションである。その詳細は後日なのだが、いや、92歳なんてとても信じられなかった。
■ ミゲル・アトウッド・ファーガソン
Miguel Atwood-Ferguson (5 String Violin)
Jamire Williams (ds)
Gabe Noel (b)
Marcel Camargo (g)
Josh Nelson (p, key)
Walter Smith III (ts)
マーシャル・アレンのエネルギーに気圧されたためか、エネルギーを吸い取られたためか、最初のうちは眠くて意識を失っていた。しかし、それはミゲル・アトウッド・ファーガソンの流麗なヴァイオリンと、心地よいサウンドのためでもあった。注目のウォルター・スミスIII世のテナーはスムースなものだった。
■ サン・ラ・アーケストラ feat. マーシャル・アレン
Marshall Allen (as, fl, cl, EVI, Kora)
Knoel Scott (as, vo, perc, dance)
Danny Ray Thompson (fl, bs)
James Stewart (ts)
Cecil Brooks (tp)
Michael Ray (tp)
Dave Davis (tb)
Tyler Mitchell (b)
Francis Middleton (g)
George Burton (p)
Wayne Anthony Smith, Jr. (ds)
Elson Nascimento (Surdo percussion)
Tara Middleton (vo)
ぎらぎらのヒカリモノに身を固めた面々による、予想を遥かに超えるパフォーマンス。タラ・ミドルトンが叫ぶ「Space is the place!」の掛け声とともに、会場は狂乱の渦と化した。宇宙からのゲストらしく「Fly Me to the Moon」や、「Everyday I Have the Blues」なんかも演った。
渦の中心は間違いなく御大マーシャル・アレンであった。旋律をジャンプするどころか、なんだかよくわからない音をケレン味たっぷりに発しまくる。観たかったものは、かれが右手でアルトをばしばし叩くワザなのだが、さらに、下から凄い勢いでスライドするようにアルトを叩いていた。しかもステージの右から左まで、どうだ凝視しろと言わんばかりに高速でカニ歩きしながら。ショーマンシップの神髄を見せつけられたような気分だ。
アレンは故サン・ラの役もすべて引き受けている。凄まじいアルト演奏だけではない。バンドメンバーに痙攣するように何やら指示し、指示された側はえっ何?何?とばかりに慌てて演奏していた。そしてEVIでの情けない電子音により創りだされる、過去から人びとの心に存在する宇宙。見事に、巨大なスペースに集まった観客の心をとらえていた。
■ ソイル
元晴 (sax)
タブゾンビ (tp)
丈青 (p, key)
秋田ゴールドマン (b)
みどりん (ds)
社長 (agitator)
Guest:
日野皓正 (tp)
サン・ラのあとでは誰でも分が悪いと思うが、社長のよくわからぬアジで会場を最後まで盛り上げた。みんな巧くて聴かせる。なかでも丈青のピアノは尖がっていて、際立って鮮やかだった。
ヒノテルのプレイを観るのは何年ぶりだろう、新宿ピットインで菊地雅章とのデュオを観て以来ではないのかな。突き抜けないトランペット、軽やかな動き(照れなければいいのに)、妙なトークなど、この人も相変わらずである。
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そんなわけで昼から夜まで大満足。帰り路で立ち寄った浦安のバーで、「新木場に行ってきたよ、何て言ったっけ」「ああスタジオコースト?若い人ばっかりだったんじゃないの」、「なんだっけ、ジャイルス・ピーターソンとか松浦俊夫とかのDJが」「いやそりゃ有名だよ」。要するにこのへんの音楽に関してわたしが無知なだけなのだが。
マーシャル・アレンはなぜか自分自身の上ではなくキッド・ジョーダンの上に笑いながらサインした
●参照
アレン/ドレイク/ジョーダン/パーカー/シルヴァ『The All-Star Game』(2000年)
ビリー・バング+サン・ラ『A Tribute to Stuff Smith』(1992年)
サン・ラの映像『Sun Ra: A Joyful Noise』(1980年)
ポール・ブレイ『Barrage』(1964年)(マーシャル・アレン参加)