Sightsong

自縄自縛日記

ウラジーミル・タラソフ+エウジェニュース・カネヴィチュース+リューダス・モツクーナス『Intuitus』

2016-05-14 16:14:31 | アヴァンギャルド・ジャズ

ウラジーミル・タラーソフ+エウジェニュース・カネヴィチュース+リューダス・モツクーナス『Intuitus』(NoBusiness、2014年)を聴く。LP 2枚組である。

Vladimir Tarasov (ds, perc, cimbalom and hunting horn)
Eugenijus Kanevičius (b, electronics)
Liudas Mockūnas (ss, ts, cl, bcl)

もっとも印象深い音は、リューダス・モツクーナスの多彩なリードと、へヴィー級のエウジェニュース・カネヴィチュースの重いベースなのであり、実際のところウラジーミル・タラソフは「背後でヘンな音を出しているな」くらいだったのだが。

2回ほど通して聴いたあとに、「JazzTokyo」に岡島豊樹さんが執筆されたレビュー(>> リンク)を読んだところ(聴く直前に読むと印象が引きずられるので避けていた)、吃驚してしまった。曰く、

「タラーソフは多彩な音を繰り出しているが、その中で「シュッ、シュッ、シュッ」というブラシで出した音は「輸送車」が出発する直前にたてる音として象徴的なものであると教えられて絶句してしまった。(略)これを聴いてしまった人は誰しも、以後タラーソフのパフォーマンスを流し聴きすることなど不可能になるだろう。」

そして、ジャケットの写真は、風がどこからともなく吹いてきて聖書の頁がめくれるという、タラソフ自身によるインスタレーションであるという。また、沼野充義編著『イリヤ・カバコフの芸術』によれば、ウラジーミル・タラソフがカバコフに何度も協力していた。

つまり、タラソフの音楽は観なければ、それができないとすれば想像力をフルに発揮しなければならないということである。こんな耳ではいけない。

●ウラジーミル・タラソフ
イリヤ・カバコフ『世界図鑑』(2008年)
モスクワ・コンポーザーズ・オーケストラ feat. サインホ『Portrait of an Idealist』(2007年)
ロシア・ジャズ再考―セルゲイ・クリョーヒン特集(2007年)
ガネリン・トリオの映像『Priority』(2005年)

●リューダス・モツクーナス
「JazzTokyo」のNY特集(2015/12/27)


セシル・マクビー『Mutima』

2016-05-14 10:19:32 | アヴァンギャルド・ジャズ

セシル・マクビー『Mutima』(Strata-East、1974年)、オリジナル盤。

Cecil McBee (b)
Tex Allen (tp, flh)
Art Webb (fl)
Allen Braufman (as)
George Adams (ts, ss)
Onaje Allen Gumbs (p, elp)
Jimmy Hopps (ds)
Jaboli Billy Hart (cymbal, perc)
Lawrence Killian (congas)
Michael Carvin (gong, perc)
Dee Dee Bridgewater (vo)
Cecil McBee, Jr. (elb)
Allen Nelson (ds)

セシル・マクビーの引き締まったベースがぶんぶん鳴り、ときにはしゃぐほど弾いて、サウンドを牽引している。もはや快感そのものなのだが、この人は曲作りもすごく巧いのだなと思う。

A面は、本人だけのアルコ弾きを多重録音した「From Within」からはじまり、ディー・ディー・ブリッジウォーターが歌う短い曲「Voices of the 7th Angel」、ジョージ・アダムスのテナーが嬉しい「Life Waves」。

B面の表題曲「Mutima」とは「視えない力」という意味だそうであり、ブラック・アフリカに捧げたものになっている。歓びを爆発させたような曲で、その変わりゆく展開を、パーカッションやコンガなどの打楽器を打ち鳴らして祀りにまで昇華しているように聴こえる。短い「A Feeling」においてアート・ウェッブのフルートとアルコとの絡みを聴かせ、そして最後はファンクのような「Tulsa Black」。ここでもアダムスのひしゃげた音のテナー、さらに、テックス・アレンの勢いあるトランペット、マクビーの息子によるエレベがいい。なんだこの盛り上がりようは。100人が聴いたら99人はカッコいいとため息をもらすだろう。

いまマクビーは80歳。山下洋輔ニューヨーク・トリオのライヴを2度ばかり観たがその響きが素晴らしかった。また演奏を目の当たりにする機会が欲しい。

●セシル・マクビー
エルヴィン・ジョーンズ+田中武久『When I was at Aso-Mountain』(1990年)
アミナ・クローディン・マイヤーズのベッシー・スミス集(1980年)
チコ・フリーマンの16年(1979, 95年)
チコ・フリーマン『Kings of Mali』(1977年)
ハンプトン・ホーズ『Live at the Jazz Showcase in Chicago Vol. 1』(1973年)


本田竹広『This Is Honda』

2016-05-14 08:24:46 | アヴァンギャルド・ジャズ

本田竹広『This Is Honda』(TRIO、1972年)。むかしダビングして聴いただけでもあり、LPを見つけて入手した。

Takehiro Honda 本田竹広 (p)
Yoshio Suzuki 鈴木良雄 (b)
Fumio Watanabe 渡辺文男 (ds)

ブルージーな本田竹広を聴こうと思ってターンテーブルに載せて、スピーカーからは欲しかった音以上の音が出てくる。

「You Don't Know What Love Is」「Bye Bye Blackbird」「Round About Midnight」「Softly As In A Morning Sunrise」「When Sunny Gets Blue」「Secret Love」という有名スタンダードばかりなのだが、すべてホンダ・テイストになっている。微妙に左と右をずらして合わせる和音が絶妙であり、また、装飾音の数々やおもむろに盛り上げてゆくときに滲み出てくる喜びがある。

そんなわけで、A面もB面もなんども繰り返し聴いたのだが、ぜんぜん飽きない。

●参照
本田竹広『BOOGIE-BOGA-BOO』(1995年)
本田竹広『The Trio』(1970年)