Sightsong

自縄自縛日記

エヴァン・パーカー『残像』

2016-05-08 23:25:12 | アヴァンギャルド・ジャズ

エヴァン・パーカー『残像』(Jazz & NOW Records、1982年)を聴く。貴重なLP盤。

Evan Parker (ss, ts)

仙台、秦野、横浜における演奏の記録である。ここではA面でソプラノ、B面でテナーとソプラノを吹いている。この音の群れに陶然とする。

もちろん昨年や今年のライヴも、忘れがたい体験だった。ただ当時と今とで大きく違うのはテナーであるように思える。ソプラノが連続的な音のひとつながりを出してくるのに対し、テナーは音を小分けにして放出する。いまのテナーは重力を感じさせ、ブルースの味もつけられている。一方、ここで聴くことができるテナーには、重力など感じさせない。まだエヴァン・パーカーは40歳になる前であり、エンジンの稼働状況が半端なかったということだろう。

同じ1982年、少し前の別の録音も、ある方に聴かせていただいた。やはり、放たれた音に手を出そうものなら腕ごともっていかれそうなテナーである。いやソプラノだって、当時の推進力はやはりとんでもないものだ。

それでも、かつてのソプラノといまのソプラノ、かつてのテナーといまのテナー、すべてそれぞれいいと思ってしまう。(なんてことのない結論だが。)

●エヴァン・パーカー
エヴァン・パーカー@稲毛Candy(2016年)
エヴァン・パーカー+高橋悠治@ホール・エッグファーム(2016年)
エヴァン・パーカー@スーパーデラックス(2016年)
エヴァン・パーカー、イクエ・モリ、シルヴィー・クルボアジェ、マーク・フェルドマン@Roulette(2015年)
Rocket Science変形版@The Stone(2015年)
エヴァン・パーカー US Electro-Acoustic Ensemble@The Stone(2015年)
エヴァン・パーカー+土取利行+ウィリアム・パーカー(超フリージャズコンサートツアー)@草月ホール(2015年)
エヴァン・パーカー ElectroAcoustic Septet『Seven』(2014年)
ジョン・エスクリート『Sound, Space and Structures』(2013年)
『Rocket Science』(2012年)
ペーター・ブロッツマンの映像『Soldier of the Road』(2011年)

ブッチ・モリス『Possible Universe / Conduction 192』(2010年)
エヴァン・パーカー+オッキュン・リー+ピーター・エヴァンス『The Bleeding Edge』(2010年)
ハン・ベニンク『Hazentijd』(2009年)
アレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハ『ライヴ・イン・ベルリン』(2008年)
シュリッペンバッハ・トリオ『Gold is Where You Find It』(2008年)
エヴァン・パーカー+ネッド・ローゼンバーグ『Monkey Puzzle』(1997年)
エヴァン・パーカー+吉沢元治『Two Chaps』(1996年)
ペーター・コヴァルトのソロ、デュオ(1981-98年)
スティーヴ・レイシー+エヴァン・パーカー『Chirps』(1985年)
シュリッペンバッハ・トリオ『Detto Fra Di Noi / Live in Pisa 1981』(1981年)
シュリッペンバッハ・トリオ『First Recordings』(1972年)


廣木光一(HIT)@本八幡cooljojo

2016-05-08 22:11:29 | アヴァンギャルド・ジャズ

本八幡にcooljojoというハコができた。早速、開店第2日のライヴを観に足を運んだ。

HIT:
Koichi Hiroki 廣木光一 (g)
Masaharu Iida 飯田雅春 (b)
Tomohiro Yahiro ヤヒロトモヒロ (perc)

店名からわかるとおり、故・高柳昌行との縁がある。スペースの一角には、高柳昌行の蔵書が展示されており(清水俊彦、植草甚一、ラヴィ・シャンカール、ノーマン・メイラーなんかの本があった)、また、店のロゴと絵とは氏の夫人・高柳道子さんによるものが使われている。もちろん、廣木さんも高柳に師事していた。本人曰く、18歳のときから17年間、亡くなるまで教わったし、もし存命ならばいまでも毎週教えを受けに行っているだろう、と。

廣木さんのガットギターは、まるで静寂をまとっているかのようであり、周りがどうあれとてもクリアに聴こえた。オリジナルのほか、カルトーラ、ジョビン、ヴェローゾと南米の曲を演奏した。静かで同時に熱く、素晴らしいライヴだった。

終わってから少しお話をしながら、渋谷毅とのデュオ『So Quiet』(大好きなのだ)と、ヴェトナムのクエン・ヴァン・ミンとの共演盤にサインをいただいた。その、渋谷さんとのデュオも、6月に予定されている。

●参照
高柳昌行1982年のギターソロ『Lonely Woman』、『ソロ』
翠川敬基『完全版・緑色革命』(1976年)(高柳参加)
『銀巴里セッション 1963年6月26日深夜』(高柳参加)


ジョン・ダイクマン+スティーヴ・ノブル+ダーク・シリーズ『Obscure Fluctuations』

2016-05-08 09:28:32 | アヴァンギャルド・ジャズ

ジョン・ダイクマン+スティーヴ・ノブル+ダーク・シリーズ『Obscure Fluctuations』(TROST、2015年)を聴く。

John Dikeman (ts)
Steve Noble (ds)
Dirk Serries (g)

基底音は、ダーク・シリーズのエレキギターによるひしゃげた音である。周波数が変動していき、息遣いのように生命力を持って続いていく。瞑想的でもあるが、うっとりして寝てしまわないよう、スティーヴ・ノブルが刺激音を差し挟む。

ジョン・ダイクマンは、身体からまるでエクトプラズムを絞り出すようにテナーを吹く。その倍音やノイズが実に魅力的で、前面に出て叫ぶときも良いが、トリオでぐちゃぐちゃにまみれるときもまた動悸動悸する。ふっとダイクマンが息継ぎをして休むとき、ギターとドラムスとの基底音が浮上してきて、これがまた良い。

LPで聴いてその効果が増したようにも思える。