大工哲弘『八重山民謡集』(沖縄レコード商事、1970年代?)を聴く。
何年前だったか、那覇の国際通り沿いにあった高良レコードで買ったLP。目につくところには置いていなかったのだが、ご主人に民謡のレコードはないのかと尋ねてみると、嬉しそうに、棚を開けてくれた。そこにはデッドストックがかなりあった。いまその店舗は移転工事中らしい。はたしてあのレコードの山はまだあるのだろうか。
大工哲弘(うた、三絃)
知名定男、北島角子、八木政男、久場洋子、大城美佐子、安里勇(返し、手拍子、太鼓、サンバ、鳴物、はやし)
はじめて大工哲弘を観たのは90年代後半だったから、当時大工さんは50歳前後だったことになる。板橋文夫のグループで、新宿ピットインで唄っていた。そのとき、鼻にかかって引っ張る唄い方が新鮮で驚きもしたのだったが、20代のころに吹き込まれたと思しきこのレコードを聴いても、若々しいという感じはあまりしない。なんだか永遠に変わらない人なのではないか。
本盤では、「安里屋ユンタ」「与那国のマヤー小」「デンサー節」「トバルマ」という有名な曲も、知らない曲も唄っている。いずれにしても、歌詞を読みながら聴いても意味がよくわからなかったりするのだが、とてもいい。中途半端なところで区切って息継ぎをしたり、微妙に張り上げた声がよれたり。
大城美佐子や知名定男の参加も嬉しいのだが、最後の「トバラマ」では安里勇が返しで参加している。このフォギーな声。
●参照
板橋文夫『うちちゅーめー お月さま』(1997年)
小浜司『島唄レコード百花繚乱―嘉手苅林昌とその時代』
『週刊金曜日』の高田渡特集