Sightsong

自縄自縛日記

大工哲弘『八重山民謡集』

2016-05-12 22:30:25 | 沖縄

大工哲弘『八重山民謡集』(沖縄レコード商事、1970年代?)を聴く。

何年前だったか、那覇の国際通り沿いにあった高良レコードで買ったLP。目につくところには置いていなかったのだが、ご主人に民謡のレコードはないのかと尋ねてみると、嬉しそうに、棚を開けてくれた。そこにはデッドストックがかなりあった。いまその店舗は移転工事中らしい。はたしてあのレコードの山はまだあるのだろうか。

大工哲弘(うた、三絃)
知名定男、北島角子、八木政男、久場洋子、大城美佐子、安里勇(返し、手拍子、太鼓、サンバ、鳴物、はやし)

はじめて大工哲弘を観たのは90年代後半だったから、当時大工さんは50歳前後だったことになる。板橋文夫のグループで、新宿ピットインで唄っていた。そのとき、鼻にかかって引っ張る唄い方が新鮮で驚きもしたのだったが、20代のころに吹き込まれたと思しきこのレコードを聴いても、若々しいという感じはあまりしない。なんだか永遠に変わらない人なのではないか。

本盤では、「安里屋ユンタ」「与那国のマヤー小」「デンサー節」「トバルマ」という有名な曲も、知らない曲も唄っている。いずれにしても、歌詞を読みながら聴いても意味がよくわからなかったりするのだが、とてもいい。中途半端なところで区切って息継ぎをしたり、微妙に張り上げた声がよれたり。

大城美佐子や知名定男の参加も嬉しいのだが、最後の「トバラマ」では安里勇が返しで参加している。このフォギーな声。

●参照
板橋文夫『うちちゅーめー お月さま』(1997年)
小浜司『島唄レコード百花繚乱―嘉手苅林昌とその時代』
『週刊金曜日』の高田渡特集


マッツ・グスタフソン+サーストン・ムーア『Vi Är Alla Guds Slavar』

2016-05-12 07:38:08 | アヴァンギャルド・ジャズ

マッツ・グスタフソン+サーストン・ムーア『Vi Är Alla Guds Slavar』(OTOROKU、2013年)を聴く。180グラム、1000枚限定のLPである。

Mats Gustafsson (ss, electronics)
Thurston Moore (g)

まるで『サンダvs. ガイラ』のような、似た者同士の怪獣の邂逅である。

サーストン・ムーアがマッツ・グスタフソンの存在を意識したのは、たまたま、グスタフソンとバリー・ガイとのデュオ盤を聴いて驚いたからだという(1997年の『Frogging』のことか?わたしは歌舞伎町のナルシスで紹介してもらったのだった)。そして、ムーアがストックホルムのレコード店に足を運んだときに、いやグスタフソンというサックス奏者の音源を探しているんだけど、と相談したのだが、その相談を受けた店員がグスタフソンだったという。時系列的には出逢いのあとにこのCDがあったのではないかと思うが、まあ何にしても愉快な話である。

ここでグスタフソンはソプラノサックスとエレクトロニクスを同列に扱う。また、音を使った即興と、音そのものとを同列に扱う。その音の濁流がムーアの濁流と合流して、泥と泡とをまき散らして、さらに絢爛豪華な泥流を創りだしている。濁流に呑まれ押し流されて聴いていると、たいへんなカタルシスが得られてしまう。

「The Thing」もいいが(昨年のライヴには行けなかった!残念)、このデュオも是非生で立ち会いたいものだ。

●参照
ザ・シング@稲毛Candy(2013年)
ペーター・ブロッツマンの映像『Concert for Fukushima / Wels 2011』(2011年)(マッツ・グスタフソン登場)
ペーター・ブロッツマンの映像『Soldier of the Road』(2011年)(マッツ・グスタフソン登場)
大友良英+尾関幹人+マッツ・グスタフソン 『ENSEMBLES 09 休符だらけの音楽装置展 「with records」』(2009年)
マッツ・グスタフソンのエリントン集(2008年)
ウィリアム・フッカー『Shamballa』(1993年)(サーストン・ムーア参加)