Sightsong

自縄自縛日記

今井和雄『the seasons ill』

2017-04-15 15:30:52 | アヴァンギャルド・ジャズ

今井和雄『the seasons ill』(Hitorri、2016年)を聴く。

Kazuo Imai 今井和雄 (g)

この録音を行った松岡真吾さんによる時折の前情報もあり、とても楽しみにしていた盤。いざ再生してみると予想を遥かに凌駕する。

依拠するものがない中での演奏の集合体である。圧倒的なギター技術の継続した提示がひとつであっても刮目すべきものであるのに、ディレイにより複数のラインが並行して進み、強度が何倍にもなり、轟音を成している。音は抽象だが、それを創出する精神力は想像のなかにあらわれる。また音は抽象だが、そのフラグメンツがおそらく意図せざるイメージをときに幻視させる。得られるのはたいへんなカタルシスだ。

この強度と抽象の巨塔を前にして、このくらいの印象しか言うことができない。人外と失礼なことを言ってみたくなるほど偉大な音楽家による作品。

●今井和雄
第三回天下一Buzz音会 -披露”演”- @大久保ひかりのうま(2017年)
齋藤徹+今井和雄@稲毛Candy(2017年)
Sound Live Tokyo 2016 マージナル・コンソート(JazzTokyo)(2016年)
広瀬淳二+今井和雄+齋藤徹+ジャック・ディミエール@Ftarri(2016年)
坂田明+今井和雄+瀬尾高志@Bar Isshee(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
今井和雄 デレク・ベイリーを語る@sound cafe dzumi(2015年)
今井和雄、2009年5月、入谷
齋藤徹+今井和雄『ORBIT ZERO』(2009年)
バール・フィリップス@歌舞伎町ナルシス(2012年)(今井和雄とのデュオ盤)


仲宗根勇・仲里効編『沖縄思想のラディックス』

2017-04-15 09:54:04 | 沖縄

仲宗根勇・仲里効編『沖縄思想のラディックス』(未來社、2017年)を読む。

6人の論考それぞれが短い(「季刊未来」にリレー連載された)ということもあり、周知のことを概説するにとどまっているもの、逆に読者との共有を拒んでいるもの(川満信一)、空虚な言説(仲里効)が含まれていて、これは1冊の本にまとめたという意義が大きいのだと理解する。

「周知」と言ったところで、日本においてはほとんど「問題」と歴史が知られていない現状がある。わたしが「知っている」ことをアピールしたいのではない。「問題」をずっと追いかけていれば把握できることである。わたしは興味が向かなければ「問題」から容易に離脱できる者に過ぎない。むしろ、「問題」の解決に進んでいないことが逆説的にわかるということだ。その意味で、広く読まれるべきである。

「歴史はそれ自体激しい強大なエネルギーを持っている。その不可思議な動向に関して何の洞察力も創造力もなく、倫理観と批判意識を決定的に欠いている安倍政権がやがて破綻するのは火を見るより明らかではないか。」(八重洋一郎「南西諸島防衛構想とは何か」)

「昨今、沖縄県内の新聞メディアでは「自治権」のみならず、「自己決定権」「民族自決権」、そして「独立」という言葉が散見されるようになった。沖縄におけるこの社会的趨勢は、思想上の議論と理論的な批判検討の段階に入っている。」(桃原一彦「「沖縄/大和」という境界」)

●参照
島袋純さん講演会「島ぐるみ会議の挑戦―自治権拡大の国際的潮流の中で」(2016年)
島袋純さん講演会「"アイデンティティ"をめぐる戦い―沖縄知事選とその後の展望―」(2014年)
琉球新報社・新垣毅編著『沖縄の自己決定権』(2015年)
崎山多美『うんじゅが、ナサキ』(本書に論考)
高嶺剛『変魚路』(2016年)(本書に論考)


アーマッド・ジャマル『Freeflight』

2017-04-15 08:36:48 | アヴァンギャルド・ジャズ

アーマッド・ジャマル『Freeflight』(Impulse!、1971年)を聴く。

Ahmad Jamal (p, el-p)
Jamil Nasser (b)
Frank Gant (ds) 

どうやらアーマッド・ジャマルは本盤ではじめてエレクトリック・ピアノを使ったようなのだが、70年代のファンキーでスピーディーな感じになるのではなく、あくまでジャマルのサウンドになっていることが面白い。音は揺れ動き、コアの美味しいところを取らずに軌道から離れたり戻ってきたり。(一方、ベースはいかにも古くさく苦笑してしまう。)

それはアコースティック・ピアノでも同じことであって、旋律の周辺を探るようにして断片を提示するスタイルがとてもいい。そんな風にしてちょっとずつサウンドを積み重ねてゆく「Poinciana」が嬉しい。

本盤では、ハービー・ハンコックの「Dolphine Dance」を演奏している。前年の『The Awakening』(Impulse!、1970年)にも同じメンバーで収録された曲であり、そこではジャマルのスタイルで純化されたような実に美しい演奏を行っていた。比べようと思って改めて聴いてみると、やはり惚れ惚れする。軍配は『The Awakening』に上がる。

Ahmad Jamal (p)
Jamil Nasser (b)
Frank Gant (ds)