Sightsong

自縄自縛日記

川島誠『HOMOSACER』

2017-04-27 22:45:07 | アヴァンギャルド・ジャズ

川島誠『HOMOSACER』(PSF、-2015年)を聴く。

Makoto Kawashima 川島誠 (as)

このプレイヤーの演奏は、ネット上の動画で観たくらいでもあり(白石民夫とNYの地下鉄で共演する動画は必見)、CDを聴きたいと思っていた。ちょうど先日、川島さんがバーバー富士における齋藤徹さんのライヴを観にいらしていて、2枚をもとめた。本盤はそのひとつである。

ここには2曲の演奏が収録されている。最初のインプロは、場に自身を溶け込ませたような演奏。2曲目は「赤蜻蛉」と付されたタイトルのように、過ぎ去った過去の記憶を掘り起こされるような演奏。

白石民夫のような彼岸の抽象ではない。無機生命体の橋本孝之とも違う。柳川芳命のようなアジアン・ブルースとも違う。まるで、あるがままを受けとめるような佇まいが感じられる。それはレヴィナスを引用するまでもなく、ある程度は苛烈な覚悟によって成り立っているに違いない。したがって、哀しみの印象もある。


ポール・オースター『冬の日誌』

2017-04-27 21:58:48 | 北米

ポール・オースター『冬の日誌』(新潮社、原著2012年)を読む。

「冬」すなわち老境に入ってきた作家による、自伝的な作品である。

さまざまな状況や事件があった。怪我。両親の離婚。貧乏と困窮。引っ越し。性欲。恋愛。確執。結婚。離婚。愚かな行い。大事故。偶然。

そのひとつひとつが記憶に刻みこまれ、偶然という意味や無意味という意味を与えられる。まるで偶然と必然とが支配し、時々刻々、同じものがふたつとない物語を創ってゆく野球のように。これを読む者は、間違いなく、要素の数々を刻み付け縒り合わせるプロセスを自分のものとしてとらえることだろう。

「ニューヨーク三部作」に魅せられてから長い時間が経つが、オースターを読み続けてきたことにも大きな意味があった。「生きていることも悪くはない」と思えてしかたがない。

●ポール・オースター
ポール・オースター+J・M・クッツェー『ヒア・アンド・ナウ 往復書簡2008-2011』(2013年)
ポール・オースター『Sunset Park』(2010年)
ポール・オースター『Invisible』(2009年)
ポール・オースター『闇の中の男』再読(2008年)
ポール・オースター『闇の中の男』(2008年)
ポール・オースター『写字室の旅』(2007年)
ポール・オースター『ブルックリン・フォリーズ』(2005年)
ポール・オースター『オラクル・ナイト』(2003年)
ポール・オースター『幻影の書』(2002年)
ポール・オースター『トゥルー・ストーリーズ』(1997-2002年)
ポール・オースター『ティンブクトゥ』(1999年)
ポール・オースター『リヴァイアサン』(1992年)
ポール・オースター『最後の物たちの国で』(1987年)
ポール・オースター『ガラスの街』新訳(1985年)
『増補改訂版・現代作家ガイド ポール・オースター』
ジェフ・ガードナー『the music of chance / Jeff Gardner plays Paul Auster』


クレイグ・テイボーン+イクエ・モリ『Highsmith』

2017-04-27 09:27:53 | アヴァンギャルド・ジャズ

クレイグ・テイボーン+イクエ・モリ『Highsmith』(Tzadik、2017年)を聴く。

Craig Taborn (p)
Ikue Mori (electronics) 

あっと驚くデュオ。2015年にNYのStoneでエヴァン・パーカーのセッションをやったとき、テイボーンが間違いで現れず、このふたりの共演を観ることはできなかった。しかし予想通り、相性は抜群に良い。

イクエ・モリはいつもチャーミングだ。彼女のエレクトロニクスは満天の星空に流れる彗星をみるようで、宇宙的な広がりも、ファンタジックなイメージ喚起力もある。1997年に法政大学でジョン・ゾーン、マイク・パットンと共演するライヴを観たときにはそこまで浸透してこなかった。脳の障壁を取り払うのはそんなに簡単なことではない。

一方のクレイグ・テイボーンは、まったくケレンで誤魔化したりかわしたりすることもなく、あくまで硬質なピアノで相対する。満点の星空の下、冷え冷えのピアノが結晶のフラグメンツを次々に放つ。

●クレイグ・テイボーン
クレイグ・テイボーン『Daylight Ghosts』(2016年)
チェス・スミス『The Bell』(2015年)
クレイグ・テイボーン『Chants』(2013年)
クリス・ライトキャップ『Epicenter』(2013年)
クリス・ポッター『Imaginary Cities』(2013年)
『Rocket Science』(2012年)
デイヴ・ホランド『Prism』(2012年)
Farmers by Nature『Love and Ghosts』(2011年)
オッキュン・リーのTzadik盤2枚(2005、11年)
ロブ・ブラウン『Crown Trunk Root Funk』(2007年)
アイヴィン・オプスヴィーク『Overseas II』(2004年)
ティム・バーン『Electric and Acoustic Hard Cell Live』(2004年)
ロッテ・アンカー+クレイグ・テイボーン+ジェラルド・クリーヴァー『Triptych』(2003年)

●イクエ・モリ
エヴァン・パーカー、イクエ・モリ、シルヴィー・クルボアジェ、マーク・フェルドマン@Roulette(2015年)
Rocket Science変形版@The Stone(2015年)
エヴァン・パーカー US Electro-Acoustic Ensemble@The Stone(2015年)
シルヴィー・クルボアジェ+マーク・フェルドマン+エヴァン・パーカー+イクエ・モリ『Miller's Tale』、エヴァン・パーカー+シルヴィー・クルボアジェ『Either Or End』(2015年)
エヴァン・パーカー ElectroAcoustic Septet『Seven』(2014年)
イクエ・モリ『In Light of Shadows』(2014年)


永武幹子+瀬尾高志+柵木雄斗@高田馬場Gate One

2017-04-27 01:00:13 | アヴァンギャルド・ジャズ

高田馬場のGate Oneに初めて足を運び、永武幹子、瀬尾高志、柵木雄斗のトリオ。

Mikiko Nagatake 永武幹子 (p)
Takashi Seo 瀬尾高志 (b)
Yuto Maseki 柵木雄斗 (ds)

永武さんと瀬尾さん、これは水と油ではないかと思い、またそれが観ておきたい理由でもあったのだが、やはり化学反応を起こしていてとても面白いライヴだった。

スティーヴ・スワロウ、ミシャ・メンゲルベルク、カーラ・ブレイ(「Sing Me Softly of the Blues」!)、富樫雅彦、アントニオ・カルロス・ジョビン。3人が暴れまくって終盤にフラグメンツを集結させ、それとわかる「Moose the Mooche」。オリジナル曲も面白い。セロニアス・モンクを思わせる「I'm Just Awake」、70年代のキース・ジャレットを彷彿させる「スペードのジャックに会った」。

この変態的とも言える選曲に相応しい多彩なピアノ。背後で瀬尾さんが熱くベースを弾くと、しばしばその音に永武さんが呼応し恍惚とし、さらに相互のフィードバックを繰り返してゆく。そして初めて聴く柵木さんのドラムスのアタックは強く、時折の激しくするどいパルスがサウンドに活を与えていた。

ところで瀬尾さんとは、今井和雄『the seasons ill』がヤバい傑作だという意見で共感。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4

●永武幹子
MAGATAMA@本八幡cooljojo(2017年)
植松孝夫+永武幹子@北千住Birdland(JazzTokyo)(2017年)
永武幹子@本八幡cooljojo(2017年)

●瀬尾高志
森順治+高橋佑成+瀬尾高志+林ライガ@下北沢APOLLO(2016年)
坂田明+今井和雄+瀬尾高志@Bar Isshee(2016年)
板橋文夫『みるくゆ』(2015年)
寺田町+板橋文夫+瀬尾高志『Dum Spiro Spero』(2014年)
バール・フィリップス+Bass Ensemble GEN311『Live at Space Who』(2012年)
寺田町の映像『風が吹いてて光があって』(2011-12年)
齋藤徹、2009年5月、東中野(2009年)