四谷三丁目の喫茶茶会記に足を運び、かみむら泰一session(2017/5/26)。この日は喫茶茶会記の開店から10年。
Taiichi Kamimura かみむら泰一 (ts, ss)
Toshiki Nagata 永田利樹 (b)
Yoshinori Shiraishi 白石美徳 (ds)
かみむら泰一さんのテナーは実に独特な「吹かない」テナー。なんだか次第に過激さを増してきているような気がする。息を吹き込んで管を鳴らし切るのではなく、周囲の空気と溶け合うサウンドである。ソロが終わっても微妙に音を出し続けており、空気がサウンドと同義語となる。ちょうど風を顔で感じるときに、実際には空気を構成する分子や微粒子が肌に当たって感覚が生起するように、かみむらさんのテナーもまた最小単位で妙なるものを創り出している。ソプラノにはまた違った印象があって、それも面白い。
永田さんのベースが中音域でその空気に振動を与え、紙の上の砂のように、サウンドが絵になってゆく。そしてさらに面白いことに、白石さんのドラムスはやはり叩きすぎず、スティックやブラシの重力にまかせるようにして、ナチュラルな音を発した。
演奏した曲は、オリジナル(ほとんど水墨画的なものもあった)の他に、「Body and Soul」、「Stablemates」、「Everything Happens to Me」といったスタンダード、デューイ・レッドマンの「Love Is」。ソプラノでバディ・ボールデンの曲も吹いた。終わった後に、「Stablemates」はレッドマンの『In London』に、また「Everything Happens to Me」はレッドマンが参加したエド・ブラックウェルの『Walls/Bridges』に収録されているが、それを意識しているのだろうかと尋ねたところ、そうだ、と。やはりかみむらさんのサックスにはデューイ・レッドマンに通じる魅力がある。
Fuji X-E2、XF35mmF1.4
●かみむら泰一
齋藤徹 plays JAZZ@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
かみむら泰一+齋藤徹@キッド・アイラック・アート・ホール(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
かみむら泰一『A Girl From Mexico』(2004年)
●永田利樹
フェローン・アクラフ、Pentax 43mmF1.9(2004年)
●白石美徳
照内央晴「九月に~即興演奏とダンスの夜 茶会記篇」@喫茶茶会記(JazzTokyo)(2016年)