Sightsong

自縄自縛日記

ジョン・ブッチャー+ジノ・ロベール『Bottle Breaking Heart Leap』

2018-06-10 09:00:00 | アヴァンギャルド・ジャズ

ジョン・ブッチャー+ジノ・ロベール『Bottle Breaking Heart Leap』(2013年)を聴く。

Gino Robair (energised surfaces, blipoo box)
John Butcher (sax)

1997年から続けられているという、ジョン・ブッチャーとジノ・ロベールとのコラボレーションのひとつ。わたしはこれまでに、デレク・ベイリーを含めた3人で吹き込んだ『Scrutables』(2000年)と、dieb13が参加してやはり3人で共演した、The Open Secret『A Geography For Plays』(2014年)を聴いた。本盤は時期的にはその間である。

本盤の印象は、ブッチャーがロベールの放つさまざまな音にあわせて変身・変貌を続けるというよりは、対等なパートナーとしてサックスで絡み合っているというところだ。ブッチャーのテクはいつも通りであり、生音も増幅音もじっと悦びに耐えるようにして受け取るものばかりである。15分前後の共演が2つ、その後半ではロベールの「blipoo box」だろうか、パーカッション音が多くなりより活発となっている。

そして即興音楽としては、明らかに、NYのノイズ/アヴァン(や音響派)のように次々に己の持てるものを開陳し、暴き、裁いてもらうものとは明らかに異なっている。それは欧州との精神の違いによるものかもしれないが、そこまで言うと雑だろう。ただ、サウンドの展開する時間間隔が長く、ひとつひとつの音も大きなうねりに至るためのものとしてとらえられているような雰囲気がある。

このコラボレーションはぜひナマで目撃してみたいものだ。

●ジョン・ブッチャー
ジョン・ブッチャー+ジョン・エドワーズ+マーク・サンダース『Last Dream of the Morning』(2016年)
歌舞伎町ナルシスの壁(2016年)
ジョン・ブッチャー+高橋悠治@ホール・エッグファーム(2015年)
鈴木昭男+ジョン・ブッチャー『Immediate Landscapes』(2006、15年)
ジョン・ブッチャー+ストーレ・リアヴィーク・ソルベルグ『So Beautiful, It Starts to Rain』(2015年)
The Open Secret『A Geography For Plays』(2014年)
ジョン・ブッチャー+トマス・レーン+マシュー・シップ『Tangle』(2014年)
ロードリ・デイヴィス+ジョン・ブッチャー『Routing Lynn』
(2014年)
ジョン・ブッチャー@横浜エアジン(2013年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+ジョン・ブッチャー+ポール・リットン『Nachitigall』(2013年)
ジョン・ブッチャー+大友良英、2010年2月、マドリッド(2010年)
ジョン・ブッチャー+マシュー・シップ『At Oto』(2010年)
フレッド・フリス+ジョン・ブッチャー『The Natural Order』(2009年)
ジョン・ブッチャー『The Geometry of Sentiment』(2007年)
デレク・ベイリー+ジョン・ブッチャー+ジノ・ロベール『Scrutables』(2000年)
『News from the Shed 1989』(1989年)

ジョン・ラッセル+フィル・デュラン+ジョン・ブッチャー『Conceits』(1987、92年) 


コーリー・スマイス+ピーター・エヴァンス『Weatherbird』

2018-06-10 07:08:56 | アヴァンギャルド・ジャズ

コーリー・スマイス+ピーター・エヴァンス『Weatherbird』(More and More / Tundra、2015年)を聴く。

Cory Smythe (p)
Peter Evans (tp, piccolo tp)

かつてルイ・アームストロングとアール・ハインズがデュオで演奏した「Weatherbird」を最初と最後に配置したアルバム。それらにはやはり伝統へのリスペクト感や帰属の嬉しさのようなものがある。もともとはクラシック畑のコーリー・スマイスと、完璧なトランペット演奏技術を持つピーター・エヴァンスであるだけに、ああ、こんなことは出来て当然なんだなというところだろう。

それらの間に差し挟まれた4曲は面白くて、リズムやパターンを連続的・現代的に発展させた変奏的なもの、インプロ界への突入の可能性を示唆して寸止めで戻るもの、ちょっとしたショーケースである。エヴァンスの音色の豊かさにはここでも驚かされる。ピッコロ・トランペットを使っているのだろうか、クラリネットに聴こえるような時間もある。

それでも、終始リラックスムード。悪くない。

●コーリー・スマイス
ネイト・ウーリー『Argonautica』(2014年)

●ピーター・エヴァンス
ピーター・エヴァンス+ウィーゼル・ウォルター『Poisonous』(2018年)
マタナ・ロバーツ「breathe...」@Roulette(2017年)
Pulverize the Sound、ケヴィン・シェイ+ルーカス・ブロード@Trans-Pecos(2017年)
ピーター・エヴァンス『House Special』(2015年)
Pulverize the Sound@The Stone(2015年)
Rocket Science変形版@The Stone(2015年)
エヴァン・パーカー US Electro-Acoustic Ensemble@The Stone(2015年)
トラヴィス・ラプランテ+ピーター・エヴァンス『Secret Meeting』(2015年)
ブランカート+エヴァンス+ジェンセン+ペック『The Gauntlet of Mehen』(2015年)
エヴァン・パーカー ElectroAcoustic Septet『Seven』(2014年)
MOPDtK『Blue』(2014年)
チャン+エヴァンス+ブランカート+ウォルター『CRYPTOCRYSTALLINE』、『Pulverize the Sound』(2013、15年)
PEOPLEの3枚(-2005、-2007、-2014年)
ピーター・エヴァンス『Destiation: Void』(2013年)
ピーター・エヴァンス+アグスティ・フェルナンデス+マッツ・グスタフソン『A Quietness of Water』(2012年)
『Rocket Science』(2012年)
MOPDtK『(live)』(2012年)
ピエロ・ビットロ・ボン(Lacus Amoenus)『The Sauna Session』(2012年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Mechanical Malfunction』(2012年)
ピーター・エヴァンス+サム・プルータ+ジム・アルティエリ『sum and difference』(2011年)
ピーター・エヴァンス『Ghosts』(2011年)
エヴァン・パーカー+オッキュン・リー+ピーター・エヴァンス『The Bleeding Edge』(2010年)
ピーター・エヴァンス『Live in Lisbon』(2009年)
MOPDtK『The Coimbra Concert』(2010年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Electric Fruit』(2009年)
オッキュン・リー+ピーター・エヴァンス+スティーヴ・ベレスフォード『Check for Monsters』(2008年)
MOPDtK『Forty Fort』(2008-09年)