Sightsong

自縄自縛日記

ジョイス・キャロル・オーツ『とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢』

2018-06-09 19:34:40 | 北米

ジョイス・キャロル・オーツ『とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢』(河出文庫、原著1996-2011年)を読む。

読む前からわかってはいたようなものだが、やはり、気持ちが悪く、とても怖い。いやタイトルからはもうちょっとファンタジックなジュヴナイルかなとも思ったのだが、違った。気持ちが悪く、とても怖い。

本書にはタイトル通り7つの短編が収録されている。少女たちによる少女誘拐監禁。性犯罪を犯した義父への復讐。何でも知っている不吉な猫。立派で邪悪な兄と不健康でアーティストになった弟の双子。立派に見せかけることが天才的で邪悪な兄を呪う双子の弟。未亡人と、アメリカの戦争ですべてを失なった男との救いようのない話。整形外科医の破滅。 

どれも読んでいて怖くてやめたいのだがやめられない。翻訳者によれば、オーツはプロット重視ではなく心の動きを中心に描き出すアメリカ短編小説作家の系譜に連なるという(もちろん長編小説もたくさん書いている)。最後の短編で整形外科医が悪夢的にわけのわからない領域に突入する描写なんてまさに心の地獄、圧倒的。

でも怖いの苦手だからしばらくオーツは読まないけんね。あっまだ何冊か積んであった。 

●ジョイス・キャロル・オーツ
ジョイス・キャロル・オーツ『Daddy Love』(2013年)
ジョイス・キャロル・オーツ『Evil Eye』(2013年)
ジョイス・キャロル・オーツ『アグリーガール』(2002年)
林壮一『マイノリティーの拳』、ジョイス・キャロル・オーツ『オン・ボクシング』(1987年)
ジョイス・キャロル・オーツ『Solstice』(1985年)
ジョイス・キャロル・オーツ『エデン郡物語』(1966-72年)


マット・ミッチェル『Fiction』

2018-06-09 07:20:31 | アヴァンギャルド・ジャズ

マット・ミッチェル『Fiction』(Pi Recordings、-2013年)を聴く。(ミッチェルがツイッターで最近自薦していて知った。)

Matt Mitchell (p)
Ches Smith (ds, perc, vib)

形はシンプルなデュオなのだが、拡がりは形を超えている。

ミッチェルのピアノは現代音楽的なものであり、より大きなジャズのバンドにいるよりもその側面を押し出しているように聴こえる。はじめはチェス・スミスのドラムスとの共演で、ジャズの法則に縛られない雲の中において、お互いに触手を四方八方に伸ばし続ける。名手たちの優雅な空中遊泳のようでもある。もちろん衝突することはない。

5曲目の「Wanton Eon」において、スミスはヴァイブに切り替え、音風景がさらりと転換される。脳内の響きがとても嬉しい。次の「Dadaist Flu」ではまたドラムスに戻るのだが、ヴァイブを重ねたりもする。そしてその後は両者を平等に使う。ティム・バーンのSnakeoilにおいても、スミスはドラムスとヴァイブを同時かつ公平に(単に両方を、ではなく)使っており、このあたりにスミスの音の独自性を見出せるのでないか。

大きくふわりふわりと拡張も縮小もする素晴らしいサウンド。

●マット・ミッチェル
ティム・バーン+マット・ミッチェル『Angel Dusk』(2017年)
マット・ミッチェル『A Pouting Grimace』(2017年)
2017年ベスト(JazzTokyo)
ティム・バーン Snakeoil@Jazz Standard(2017年)
マリオ・パヴォーン『chrome』(2016年)
クリス・デイヴィス『Duopoly』(2015年)
マット・ミッチェル『Vista Accumulation』(2015年)
ティム・バーン『Incidentals』(2014年)
マリオ・パヴォーン『Blue Dialect』(2014年)
ティム・バーン『You've Been Watching Me』(2014年)
ティム・バーン『Shadow Man』(2013年)

●チェス・スミス
マーク・リボー(セラミック・ドッグ)『YRU Still Here?』(-2018年)
ティム・バーン Snakeoil@Jazz Standard(2017年)
マット・ミッチェル『A Pouting Grimace』(2017年)
チェス・スミス『The Bell』(2015年)
メアリー・ハルヴァーソン『Away With You』(2015年)
ティム・バーン『Incidentals』(2014年)
ティム・バーン『You've Been Watching Me』(2014年)
ティム・バーン『Shadow Man』(2013年)
チェス・スミス『International Hoohah』(2012年)