本八幡のcooljojoにおいて、かみむら泰一・齋藤徹デュオ(2018/6/16)。
Taiichi Kamimura かみむら泰一 (ts, ss)
Tetsu Saitoh 齋藤徹 (b)
このデュオは4年目になるという。CD『Choros & Improvisations Live』が2016年のキッド・アイラック・アート・ホールでの録音(サックスの森順治さんが素晴らしい演奏だったと言っていた)。わたしは、録音から数か月後に同じキッド・アイラックでの演奏、また今年になってこのcooljojoでの演奏を観ることができた。こうして共演を積み重ねるごとに、方法論的なものも表現も深化しているように思える。
ファーストセットはピシンギーニャのショーロ2曲から。音波が伝播する場への溶け込みをはじめるように、かみむらさんのテナーが音にならぬ音を出し始める。この「吹かないサックス」の過激化と方法論化にはやはり驚いてしまう。やがてサックスの管における共鳴が大きくなってゆき、その様子が、まるでネックや朝顔のどの箇所が息との擦れを起こしているのだろうと変なことが脳裏をよぎるのだが、それもまた、場への音の溶け込みが幻視となったからに違いない。
テツさんは術後のご体調のこともあって弦を2本金属に取り換えたという。そのために、従来のノイズの毛羽立ちよりも柔らかく聴こえる。
次に、齋藤徹さんの「オペリータ」から、「旅人の歌」2曲。ことばが大事であるからという理由で、かみむらさんはその詩を朗読した。そしてテツさんが弓で短い音のアーチを作り空中に投げるようにして、震えるソプラノと絡まった。
再びショーロでファーストセットが締めくくられた。悲喜こもごもを包み込み、旋律が大きく上下に行き来してまたいつの間にか戻ってくるような音楽か。テツさんの弓が力強かった。
セカンドセットは即興。ここではふたりがお互いの音に呼応し、間合いを図るプロセスがあった。細切れのテナーの音はまるで弓弾きのようにも聴こえた。マージナルな音領域への浸出を含めた素晴らしいサックスの倍音に対して、弓と棒の2本を弦に当ててのコントラバスの倍音。
ここで特筆すべきことは、かみむらさんの動作もまたデュオならではのものだったということである。テツさんの動きと音とをじっと観察しながら、まるでダンスするかのように動き、ソプラノから音を発する。それによるシンクロと離脱との繰り返しを目の当たりにすると、動きと音とは明確に分けられるものではないのだということがわかる。
ふっと音の盛り上がりが抜けてベースとテナーが浮かび上がる瞬間があって、次に、かみむらさんのオリジナル「Dikeman Blues」。ここでの中間域の音を活かしたサックスは、ジミー・ジュフリーや、やはりデューイ・レッドマンを想起させるものだった。そして最後に再びピシンギーニャのショーロ。面白い曲があって、それに演奏が合わさってゆく愉しい感覚があった。
Fuji X-E2、XF60mmF2.4
●かみむら泰一
かみむら泰一+齋藤徹@本八幡cooljojo(2018年)
かみむら泰一session@喫茶茶会記(2017年)
齋藤徹 plays JAZZ@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
かみむら泰一+齋藤徹@キッド・アイラック・アート・ホール(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
かみむら泰一『A Girl From Mexico』(2004年)
●齋藤徹
DDKトリオ+齋藤徹@下北沢Apollo(2018年)
川島誠+齋藤徹@バーバー富士(JazzTokyo)(2018年)
齋藤徹+喜多直毅@板橋大山教会(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+外山明@cooljojo(2018年)
かみむら泰一+齋藤徹@本八幡cooljojo(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+皆藤千香子@アトリエ第Q藝術(2018年)
2017年ベスト(JazzTokyo)
即興パフォーマンス in いずるば 『今 ここ わたし 2017 ドイツ×日本』(2017年)
『小林裕児と森』ライヴペインティング@日本橋三越(2017年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
長沢哲+齋藤徹@東北沢OTOOTO(2017年)
翠川敬基+齋藤徹+喜多直毅@in F(2017年)
齋藤徹ワークショップ特別ゲスト編 vol.1 ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+佐草夏美@いずるば(2017年)
齋藤徹+喜多直毅@巣鴨レソノサウンド(2017年)
齋藤徹@バーバー富士(2017年)
齋藤徹+今井和雄@稲毛Candy(2017年)
齋藤徹 plays JAZZ@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
齋藤徹ワークショップ「寄港」第ゼロ回@いずるば(2017年)
りら@七針(2017年)
広瀬淳二+今井和雄+齋藤徹+ジャック・ディミエール@Ftarri(2016年)
齋藤徹『TRAVESSIA』(2016年)
齋藤徹の世界・還暦記念コントラバスリサイタル@永福町ソノリウム(2016年)
かみむら泰一+齋藤徹@キッド・アイラック・アート・ホール(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
齋藤徹・バッハ無伴奏チェロ組曲@横濱エアジン(2016年)
うたをさがして@ギャラリー悠玄(2015年)
齋藤徹+類家心平@sound cafe dzumi(2015年)
齋藤徹+喜多直毅+黒田京子@横濱エアジン(2015年)
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
バール・フィリップス+Bass Ensemble GEN311『Live at Space Who』(2012年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹@ポレポレ坐(2011年)
齋藤徹による「bass ensemble "弦" gamma/ut」(2011年)
『うたをさがして live at Pole Pole za』(2011年)
齋藤徹『Contrabass Solo at ORT』(2010年)
齋藤徹+今井和雄『ORBIT ZERO』(2009年)
齋藤徹、2009年5月、東中野(2009年)
ミシェル・ドネダと齋藤徹、ペンタックス43mm(2007年)
齋藤徹+今井和雄+ミシェル・ドネダ『Orbit 1』(2006年)
ローレン・ニュートン+齋藤徹+沢井一恵『Full Moon Over Tokyo』(2005年)
明田川荘之+齋藤徹『LIFE TIME』(2005年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹+今井和雄+沢井一恵『Une Chance Pour L'Ombre』(2003年)
往来トリオの2作品、『往来』と『雲は行く』(1999、2000年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ+チョン・チュルギ+坪井紀子+ザイ・クーニン『ペイガン・ヒム』(1999年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ『交感』(1999年)
齋藤徹+沢井一恵『八重山游行』(1996年)
久高島で記録された嘉手苅林昌『沖縄の魂の行方』、池澤夏樹『眠る女』、齋藤徹『パナリ』(1996年)
ミシェル・ドネダ+アラン・ジュール+齋藤徹『M'UOAZ』(1995年)
ユーラシアン・エコーズ、金石出(1993、1994年)
ジョゼフ・ジャーマン