Sightsong

自縄自縛日記

エディ・ヘンダーソン『Be Cool』

2018-06-27 07:51:26 | アヴァンギャルド・ジャズ

エディ・ヘンダーソン『Be Cool』(Smoke Sessions Records、2017年)を聴く。

Eddie Henderson (tp)
Donald Harrison (as)
Kenny Barron (p)
Esset Essiet (b)
Mike Clark (ds)

エディ・ヘンダーソン健在。過度にではなく自然な領域に抑制していて、端正で、知的で、とても良い。例えば、ウディ・ショウの名曲「The Moontrane」を吹いても見事にエディの音になって、それがまた嬉しい。エディ色ということで言えば、やはり「After You've Gone」なんかの抒情的な曲でもっとも発揮されるように思えるが、特に、吹き終わりの余白での余韻がまたエディ色で聴き惚れる。

実はドナルド・ハリソンも昔から好きなのだ。ちょっとヌメっとした音色で、しかし敢えて自分を誇示するようにこれ見よがしの迫力を持たせるでもなく、あくまでナチュラルなアルト。20年くらい前に観たっきりだが、またどこかでプレイに接することができないかな。

そしてケニー・バロンは明確で目が醒めるようなバッキングとソロ。

いやー、良いなあ。だからどうなんだという盤なのだけど、明らかにかれらの音であって、それで十二分。

●エディ・ヘンダーソン
ベニー・グリーン『Tribute to Art Blakey』(2015年)
ジェレミー・ペルト@SMOKE(エディ・ヘンダーソンが遊びにきていた)(2014年)
エイゾー・ローレンス@Jazz at Lincoln Center(2014年)
ソニー・シモンズ『Mixolydis』(2001年)
ローラン・ド・ウィルド『セロニアス・モンク』(エディ・ヘンダーソンは精神科のインターン時にモンクを担当した)


謝明諺+大上流一+岡川怜央@Ftarri

2018-06-27 07:22:31 | アヴァンギャルド・ジャズ

水道橋のFtarri(2018/6/26)。

Minyen Hsieh 謝明諺 (ts)
Riuichi Daijo 大上流一 (g)
Leo Okagawa 岡川怜央 (electronics, contact mic)

大上・岡川デュオ。大上流一はスライドから始めるが、音の出し方からは一貫性が端から棄てられており、頻繁なペグの操作により周波数も次々に変えられる。つまり最初から意図的な断絶があって、それを集めて続けるという演奏。それを岡川怜央は受けてサウンドに包んでいるようにみえた。刺激剤や起爆剤として前面に提示する音ではなく、逆に、断片の合間にそうと気付かされる音やノイズのあり方。最後に大上さんは、ギター「ならでは」の抒情的な音をいくつか出した。 

謝ソロ。かすかな音を積み重ねてゆく。吹いているだけでなく吸う音も表現手段としている。音のクラスターの合間にはそれなりに長いインターバルがあり、次の展開を組み立てている過程が直接的に出されていた。音がサックスの中で次第に共鳴してゆき、やがてブロウへと移行する。やはり奏法がジャズのイディオムから出来ているように思える瞬間が多々あった。この謝さんの巧みさが、インプロの領域を明らかに拡張していたのだが、逆に言えば、試行という場に固執するタイプのインプロとは異なっていた。

トリオ。三者三様の活動があえて重ならないようになされていた。とは言え、謝さんのサックスが岡川さんのエレクトロニクスを模倣する愉し気な場面もあった。また、岡川さんは素子に触れたりケーブルを持ち上げてノイズを発生させたりして、かなり繊細な音を創出していた。意識をそこに向ければ聴こえ、潜っていても断絶のときにまた意識下に現れるサウンドは面白いものに思えた。

Nikon P7800

●大上流一
Shield Reflection@Ftarri(2017年)
リアル・タイム・オーケストレイション@Ftarri(2016年)

●岡川怜央
『Ftarri 福袋 2018』(2017年)