Sightsong

自縄自縛日記

佐々木幹『リハビリ 生きる力を引き出す』

2019-08-25 10:27:17 | もろもろ

佐々木幹『リハビリ 生きる力を引き出す』(岩波新書、2019年)を読む。

生きていると病気を抱え込んでしまう人が周りに何人も。

自分も大きな病気をして、幸いリハビリが必要というものではなかったけれど、それは運がそのように転んだ結果に過ぎない。今後だってそうだし、誰だってそうである。年齢や生活環境にはあまり関係がない。親しくなってみると実はわたしも、と共有してくれる人も少なくない。

悲しさも不自由もすべて人生の親戚(大江健三郎の本をそのたびに思い出す)、リハビリも人生の親戚とともに生活する過程かもしれない。

本書を読んでいてあらためて思ったことは、病気とは単なる機能不全ではないということだ。機能不全を望ましくないことのように言うなら、誰しもそれを潜在的に抱えている。人間をそんなくだらぬ機能の比較によって評価してはならない。そして重要なことは、リハビリという過程そのものを「望ましい状況」への無駄な時間ととらえるべきではないこと、他者の認識も自分自身の思考も極めて重要であること。これを著者は主体性と呼んでいる。


安保徹+松井節子+小杉敏+村田憲一郎@行徳ホットハウス

2019-08-25 09:36:08 | アヴァンギャルド・ジャズ

行徳のホットハウス(2019/8/24)。

Toru Ambo 安保徹 (ts)
Setsuko Matsui 松井節子 (p)

Satoshi Kosugi 小杉敏 (b)
Kenichiro Murata 村田憲一郎 (ds)

実は安保徹さんを観たかったのだ。前回はと思い出すと、たぶん90年代半ばに新宿ピットインやNARUで椎名豊さんとの共演を観た記憶があるからもう20年以上が経っている。

その際のテナーの印象は、固い音色で積み木のようにソロを構築していくようなものだった。久しぶりに近くで聴くと、微妙にかすれ、微妙に裏返り、ケレンのない音。デクスター・ゴードンの「Cheese Cake」では同じ音をデックス的に繰り返し、しかしデックスほどにはレイドバックせず、安保さんのいいテナー。

「It Could Happen to You」、「All The Things You Are」、「Body And Soul」、「Blue Monk」。セカンドセットからリクエストに応じて、トリオでの「Begin the Beguine」(松井さんのこの曲の演奏については平岡正明が絶賛している)、「Easy Living」(わたしがリクエスト)、「Wave」、「Cheese Cake」。ふたたび自分たちで選んで、「I Should Care」、「Perdido」。そして松井さんが時間がないときっぱりと言い放って「Goodbye」。

松井さんも元気で、細かいことに拘泥せずクールに切り上げるソロを聴くことができた。いやカッチョいい。

来るたびに人を紹介してもらったり、ベトナムやキューバのお土産をいただいたりと、本当にいい感じのお店。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4

●参照
澤田一範+松井節子+小杉敏+村田憲一郎@行徳ホットハウス(2019年)
中村誠一+松井節子+小杉敏+村田憲一郎@行徳ホットハウス
(2018年)


HIROKI BAND@南青山ZIMAGINE

2019-08-25 08:47:55 | アヴァンギャルド・ジャズ

南青山のZIMAGINE(2019/8/24)。

Koichi Hiroki 廣木光一 (g)
Nobumasa Tanaka 田中信正 (p)
Masaharu Iida 飯田雅春 (b)
Kazuko Habu 羽生一子 (ds)

このメンバーで悪いわけはないのだが、期待を上回る興奮と満足。

最初はミンガスの「Goodbye Pork Pie Hat」から始まった。ちょっとしたドラムスの変化によってピアノが音風景を変えたのには目が醒めてしまった(暑くてぐったりしていた)。続いて、「I Remember You」をクールジャズのコンセプトで書き換えたという「Remember Jojo」。それはまさにトリスターノ~コニッツ、またタイトルの通り高柳昌行の解釈を踏まえた再解釈で、淡々と研ぎ澄まされた廣木さんのギターと他とのユニゾンが良い。飯田さんは「Our Love Is Here To Stay」を引用したような気持ちの良いソロを弾いた。

廣木さんのオリジナル「白いシクラメン」では田中さんのここまで拡がるかという煌びやかなピアノに驚かされる。シコ・ブアルキの「ウ・キ・セラ」は飯田さんのベースソロからはじまった。それはあたたかく残響を効かせていた。羽生さんは頻繁にギアを入れ替えた。

セカンドセットはスティーヴ・スワロウの「Ladies in Mercedes」から。繰り返し快感という地獄に向かうスワロウらしい曲、これにHIROKI BANDのサウンドはとても合っているように思えた。題名のまだないオリジナルのあとのやはりオリジナル「Otaru Shibuya Yokohama」では、みんなノリノリで、羽生さんがシンバルの上を叩くことによる尖ったパルスが刺激剤となった。

驚いたことに、ここで「涙そうそう」。先日の終戦記念日には、廣木さんは一日中YouTubeで夏川りみのクリップを観ていたという。と照れながらメンバー全員が一緒に出て、不協和音もはさんだピアノソロ。音をぎちぎちに詰め込んだベースソロではメロディを風のように使ったりもした。最後のオリジナルではふたたび目が醒めるドラムソロ、それは硬く光る切子グラスを思わせた。

廣木さんや飯田さんと、齋藤徹さんの話をすこし。飯田さんの初吹き込みは徹さんの『アウセンシャス』だった。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●廣木光一
廣木光一+渋谷毅『Águas De Maio 五月の雨』(2018年)
廣木光一+永武幹子@cooljojo(2018年)

高田ひろ子+廣木光一@本八幡cooljojo(2017年)
安ヵ川大樹+廣木光一@本八幡Cooljojo(2016年)
吉野弘志+中牟礼貞則+廣木光一@本八幡Cooljojo(2016年)
廣木光一+渋谷毅@本八幡Cooljojo(2016年)
Cooljojo Open記念Live~HIT(廣木光一トリオ)(JazzTokyo)(2016年)
廣木光一(HIT)@本八幡cooljojo(2016年)
廣木光一『Everything Shared』(2000年)
廣木光一『Tango Improvisado』(1995年)

●飯田雅春
廣木光一(HIT)@本八幡cooljojo(2016年)

●田中信正
森山威男 NEW YEAR SPECIAL 2019 その2@新宿ピットイン(2019年)
纐纈雅代トリオ@新宿ピットイン(2017年)
森山威男3Days@新宿ピットイン(2017年)
喜多直毅+田中信正『Contigo en La Distancia』(2016年)
松風鉱一トリオ@Lindenbaum(2008年)
廣木光一『Everything Shared』(2000年)