Sightsong

自縄自縛日記

川島誠『you also here』

2019-08-05 23:14:42 | アヴァンギャルド・ジャズ

川島誠『you also here』(Homosacer Records、2016-18年)を聴く。

Makoto Kawashima 川島誠 (as)

ここに収録されている演奏の断片は、2016年から18年まで吹き込まれたアルトソロである。

2016年 12/13 キッドアイラックホール
2017年 1/29 ダウンタウンミュージックギャラリー (NY)
2017年 2/14 川越 i.m.o スタジオ録音
2018年 9/9 飯能 amigo

2016年や17年の音を聴くと、出てしまった音やこれから出る音に問いかける触手的なものを感じる。それと比して、現在のかれの演奏は、手探りや焦燥のようなものがちょっと過去の音となり、出ては消えてゆく音を淡々と受け容れているという印象がある。口蓋から喉までを開いてサックスを鳴らせることは変わらない。しかし、さらに周囲との音の一体化を効果的にしているように思える。いずれにしても、聴く側も無意識に自分の記憶を重ねてしまう力があるようで怖い。

こうして過去の川島さんに触れるのはとても興味深い。

それにしても、NYのDMGのブルースさんはかれの演奏をどう聴いただろう。9月下旬の米国ツアーでは何かが起きるだろうか。ロスでは独特なサックス奏者のパトリック・シロイシが対バンだと言っている。その日共演しようが別々の演奏であろうが、また別の変化が起きるに違いない。

●川島誠
徹さんとすごす会 -齋藤徹のメメント・モリ-(2019年)
マーティン・エスカランテ、川島誠、UH@千駄木Bar Isshee(2019年)
川島誠@白楽Bitches Brew(2019年)
フローリアン・ヴァルター+直江実樹+橋本孝之+川島誠@東北沢OTOOTO(2018年)
照内央晴+川島誠@山猫軒(2018年)
川島誠+齋藤徹@バーバー富士(JazzTokyo)(2018年)
2017年ベスト(JazzTokyo)
川島誠@川越駅陸橋(2017年)
むらさきの色に心はあらねども深くぞ人を思ひそめつる(Albedo Gravitas、Kみかる みこ÷川島誠)@大久保ひかりのうま(2017年)
#167 【日米先鋭音楽家対談】クリス・ピッツィオコス×美川俊治×橋本孝之×川島誠(2017年)
川島誠『Dialogue』(JazzTokyo)(2017年)
Psychedelic Speed Freaks/生悦住英夫氏追悼ライヴ@スーパーデラックス(2017年)
川島誠+西沢直人『浜千鳥』(-2016年)
川島誠『HOMOSACER』(-2015年)


HaraDa ShoGo『1』

2019-08-05 20:23:40 | アヴァンギャルド・ジャズ

HaraDa ShoGo『1』(2019年)を聴く。

Jin Harada 原田仁 (vo, kaossilator)
Shogo Haraguchi 原口承悟 (b, electronics)

何かに憑かれて狂ったように繰り返すドラムパターン、またヤケクソのようでもヤサグレのようでもあるヴォイス。別の怪獣と合体してパワーアップしたデイヴィッド・モスのようだ。この痙攣のあちこちにジェットエンジンが転がっていて、ベースがまた濁り酒をぐるぐると掻きまわして収集がつかなくなっている。ライヴがあったら観にいきたい。

ところでジャケットはDIYで作られたものだが、売り始めたときに1枚適当に選んだら、原口さんが「うわ引きが良い!鳥肌が!」と叫んだのだが、それが何のことだったか忘れてしまった。

●参照
タリバム!&パーティーキラーズ!@幡ヶ谷forestlimit(2019年)
第三回天下一Buzz音会 -披露”演”- @大久保ひかりのうま
(2017年)


ヴィム・ヴェンダース『世界の涯ての鼓動』

2019-08-05 07:40:00 | アート・映画

日比谷のシャンテで、ヴィム・ヴェンダース『世界の涯ての鼓動』(2018年)を観る。

深海とテロ地域という壮大な舞台設定であり、大袈裟な邦題とともにこれをどう自分の中で処理すればよいのかためらう。

しかし、ラストに至り多少は納得する。これは科学や特定の政治についての映画でも、それをドラマのために利用した映画でもなかった。『ランド・オブ・プレンティ』を撮ったヴェンダースがプロパガンダの片方にやすやすと加担するわけはない。むしろそれらを無化する挟間にこそ、ヴェンダースは入り込みたかったのではなかったか。そしてその狭間では「愛」が待っているという、強靭なロマンチストぶりである。

不自然なほどにこちらを正視する顔に、いまもヴェンダースの中に生きる小津安二郎を見出すことは容易である。あらためてスクリーンの顔に視られていると、『都会のアリス』でのアリスの母、『パリ、テキサス』での鏡の向こうの妻、『ベルリン・天使の詩』でのサーカスの舞姫、『アメリカ、家族のいる風景』での骨壺を抱えた女、実に多くの女性たちがこちらをまじまじと凝視していたことに気付くのだった。

●ヴィム・ヴェンダース
ヴィム・ヴェンダース『パレルモ・シューティング』
ヴィム・ヴェンダース『ランド・オブ・プレンティ』、『アメリカ、家族のいる風景』
ヴィム・ヴェンダース『ミリオンダラー・ホテル』
ヴィム・ヴェンダース『ベルリン・天使の詩』