佐野眞一『沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史』(上下巻)(集英社文庫、2008/11年)。出てからかなりの時間が経ってしまったが、ようやく読んだ。
沖縄ヤクザの戦後史も、それが沖縄空手や実業家たちとかなり密接にかかわっていたことも、ほとんど知られていない。また、沖縄現代史といえば沖縄戦や施政権復帰や基地負担に偏っており、「沖縄財界四天王」(大城組の大城鎌吉、國場組の国場幸太郎、琉球セメントの宮城仁四郎、オリオンビールの具志堅宗精)について「本土」の者が言及することが少ないのもその通りである。知らないことが多く勉強になった。
「大文字」ではなく「小文字」で語る歴史を重視することは良い。また「清濁併せ吞む」ように立場の異なる者との関係を深めていった者たちに「人間らしさ」を見出すのも良い。だが、その結果、なんであれ談合的な政治を行ってきた者たちばかりを評価していることはダメだろう。辺野古についていま読んでみると、著者の見立てが実に甘かったことがよくわかる。
●佐野眞一
佐野眞一『僕の島は戦場だった 封印された沖縄戦の記憶』(2013年)