Sightsong

自縄自縛日記

魔法瓶@渋谷公園通りクラシックス

2018-07-06 20:26:39 | アヴァンギャルド・ジャズ

渋谷の公園通りクラシックスにて、藤井郷子さんの新グループ・魔法瓶(2018/7/5)。

Mahobin:
Natsuki Tamura 田村夏樹 (tp)
Satoko Fujii 藤井郷子 (p)
Ikue Mori モリイクエ (electronics)

このグループのデビュー盤『Live at Big Apple in Kobe』にはさらにロッテ・アンカー(サックス)が参加している。なんて魅力的な組み合わせか。正式には8月発売ではあるけれど、もう現物は出来上がっている。

藤井さんが棒で内部奏法をはじめる。一瞬おいて、田村さんが鈴を鳴らし、モリさんがラップトップを操り、いきなり満天の星空を幻視した。ここからの音絵巻は魅了されるものだった。モリさんの音はコズミックであり、またチャーミングでもあり、素晴らしい。無数の星がこぼれ落ち流れていくようでもあり、ときに夏の夜に聴こえる虫の声のようでもあり、それらがはっと気が付いたときには変貌してしまっている。耳を傾けてしまうようなスタティックなものであると同時に、実にダイナミックでもある。

その魔術師・モリイクエさんの横で、藤井さんもまた多彩なピアノを弾く。和声がシンクロしたり、抒情的なわらべうたを思わせるときもあり。藤井さんがドライヴを開始すると、田村さんのトランペットもまた鳴り、風を切るような音も出す。そしてモリさんがハコ全体にまき散らした星々は、ドライヴとともに後方へと逃げ光芒を描く。藤井さんが低音を響かせると、モリさんは洞窟の中のような残響、それがトランペットと相まってなんとも言えない余韻を残す。

夜の街。銀河鉄道。ピアノで諄々と語り聞かせようとする物語。ピアノの雷とエレクトニクスの放電。雨のあと。トランペットの輝き。さまざまなイメージが訪れては去っていった。

セカンドセットは、自律的に動く装置も使ったプリペアド奏法から。こんな合間での田村さんの鈴もなかなか気持ちが良い。やはりまた淡々として気が付いたら去来するイメージの数々。ピアノが高音を攻めるときは白昼夢のようだ。またプリペアドで鍵盤の音が積み木のように変わり、それにより、おとぎ話の世界になってもいる。そんなときにはモリさんの音はさまざまに蠢く動物であったりもする。脈動的なアンビエント、そして田村さんの魅力的なロングトーン。

ふとすべてが重なり合い、その騒乱はクリスタル内の乱反射のごときである。またしてもピアノが物語を紡ぎ、トランペットが惜別の音を放ち、そして、モリさんの星々は無数の流星群と化す。そういった役割は3人の間で交換もなされた。残響、愛惜、輝き。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4

●藤井郷子、田村夏樹
MMM@稲毛Candy(2018年)
藤井郷子オーケストラ東京@新宿ピットイン(2018年)
藤井郷子オーケストラベルリン『Ninety-Nine Years』(JazzTokyo)(2017年)
晩夏のマタンゴクインテット@渋谷公園通りクラシックス
(2017年)
This Is It! @なってるハウス(2017年)
田村夏樹+3人のピアニスト@なってるハウス(2016年)
藤井郷子『Kitsune-Bi』、『Bell The Cat!』(1998、2001年)

●モリイクエ
イクエ・モリ『Obelisk』(2017年)
イクエ・モリ+クレイグ・テイボーン@The Drawing Center(2017年)
クレイグ・テイボーン+イクエ・モリ『Highsmith』(2017年)
エヴァン・パーカー、イクエ・モリ、シルヴィー・クルボアジェ、マーク・フェルドマン@Roulette(2015年)
Rocket Science変形版@The Stone(2015年)
エヴァン・パーカー US Electro-Acoustic Ensemble@The Stone(2015年)
シルヴィー・クルボアジェ+マーク・フェルドマン+エヴァン・パーカー+イクエ・モリ『Miller's Tale』、エヴァン・パーカー+シルヴィー・クルボアジェ『Either Or End』(2015年)
エヴァン・パーカー ElectroAcoustic Septet『Seven』(2014年)
イクエ・モリ『In Light of Shadows』(2014年)


白石民夫@新宿西口カリヨン橋 その5

2018-07-05 00:11:22 | アヴァンギャルド・ジャズ

2年ぶりに白石民夫さんが新宿西口カリヨン橋に立った(2018/7/4)。

Tamio Shiraishi 白石民夫 (as)

雨がいまにも降り出しそうで、橋から飛ばされそうな強風。このような中で、音がうまく響かず流れていくのではないかと危惧したのだが、それはまったくの杞憂であった。それどころか、白石さんは演奏前に、ちょっと雨が降っているくらいのほうが良いと言ったのだった。

高層ビルに挟まれ、同時に空に向かって開かれた場所。ここは確かに特別な場所に違いない。

独特の高周波のアルトがかまいたちのように空気にするどい裂け目を入れてゆく。ちょっと白石さんの音がこれまでと違うようにも思えた。というのも、内奥をがりがりと削るような音と高周波音とのコンビネーションの雰囲気もそうだが、吹いて場に放つフレーズが、まるで韓国のパンソリのように響いたからである。抽象と情とにやはり何かを抉られた。

白石さんはマウスピースやリードを5、6回取り換えて、20分間ほどで、ふたたび一期一会の世界をみせてくれた。

ところで、演奏前に少し話したこと。クリス・ピッツィオコスや山崎阿弥さんのことに加え、ヴォイス・パフォーマーのジャイナ・ブートレグ(Gyna Bootleg)とまた共演したいがどうなるか、と。youtubeで共演の映像を観ると、たしかにただごとでない。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4

●白石民夫
2016年の「このCD・このライヴ/コンサート」
白石民夫@新宿西口カリヨン橋 その4(2016年)
白石民夫@新宿西口カリヨン橋 その3(2016年)
白石民夫@新宿西口カリヨン橋 その2(2015年)
白石民夫@新宿西口カリヨン橋(2015年)


波多江崇行+加藤一平@なってるハウス

2018-07-03 23:59:44 | アヴァンギャルド・ジャズ

入谷のなってるハウスで、波多江崇行・加藤一平デュオ(2018/7/3)。

Takayuki Hatae 波多江崇行 (g)
Ippei Kato 加藤一平 (g)

インプロを2セット。と言いつつ曲も微妙に聴こえてきたりして、ふたりとも愉しんでいる。

加藤さんの足元もとにはエフェクターボード。波多江さんはそれほどには多くないが、テーブルの上に何個ものエフェクター。プレイスタイルも対照的。加藤さんはそのエフェクターを駆使しつつ、細かな変態的フレーズを次々に繰り出している。波多江さんは、ギターもエフェクターもほとんどカラテのように叩きまくり、音を激しく揺らしまくる。こんなときも幽体離脱して次の展開を眺めているのだろうか、それとも魂は肉体から抜けられず痙攣しているのだろうか。

轟音の朦朧とする展開。どちらがより変態なのか甲乙つけがたい。弾く方も愉しいだろうけど、聴く方も愉しい。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4

●波多江崇行
波多江崇行+川下直広+小山彰太(Parhelic Circles)@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2018年)
波多江崇行+川下直広+小山彰太『Parhelic Circles』
(2017年)

●加藤一平
永武幹子+加藤一平+瀬尾高志+林ライガ@セロニアス(2018年)
竹内直+加藤一平@セロニアス(2017年)
鈴木勲セッション@新宿ピットイン(2014年)


マイク・ディルーボ『Live at Smalls』

2018-07-03 07:38:37 | アヴァンギャルド・ジャズ

マイク・ディルーボ『Live at Smalls』(SmallsLIVE、2017年)を聴く。

Mike DiRubbo (as)
Brian Charette (p)
Ugonna Okegwo (b)
Jongkuk Kim (ds)

この手の「現代も熱いハード・バップ」的などジャズを、いま誰が聴いているのだろう。フォーマットや仕掛けの新しさはない。どジャズ万歳、というだけである。わたしももちろん好きである。

2015年に同じNYのSmallsでディルーボを観たときには(ピアノもベースも同じ)、直情的で気持ちのよいアルトだと感じた。本盤を聴くと、どちらかと言えば、艶消しでスモーキーな音色に思える。その分からりと飛翔するのではなく、少し重力に引っ張られて微妙なタメを作っている。それもまた良い。

そしてSmallsの地下の熱い空気が封じ込められているような雰囲気の録音。

●マイク・ディルーボ
マイク・ディルーボ@Smalls(2015年)
マイク・ディルーボ『Threshold』(2013年)


ジョイス・キャロル・オーツ『生ける屍』

2018-07-02 23:55:55 | 北米

ジョイス・キャロル・オーツ『生ける屍』(扶桑社ミステリー、原著1995年)を読む。

Q・Pはかなりヤバい奴であり、自分にNoではなくYesだけで従うゾンビを作ろうとして、何人かにロボトミー手術を施す。施そうとする、ではない、施す。それはかなり原始的なもので、眼窩の(以下略)。

そんな感じで、何も起きないようでいて、凄まじいことが起きている。凄まじいことが起きているようでいて、日常の時間が流れている。

オーツはQ・Pの心理を淡々と描いている。異常なのかなんなのかよくわからない。しかも、奇妙な心の眼に写ったものが可視化されたような図や、社会に既にある図(つまり、どこかの本の中に)を用いたり、ゴシック体でなにやらの用語を強調したりして。横並びの情報処理とフェティシズムがまた怖い。

やはり読後のイヤなじわじわ感が半端ない。なんなんだ。

もうこの人の小説を読むのはしばらくやめようと思いつつ、また手を出してしまった。今度は本当にやめよう。

●ジョイス・キャロル・オーツ
ジョイス・キャロル・オーツ『Daddy Love』(2013年)
ジョイス・キャロル・オーツ『Evil Eye』(2013年)
ジョイス・キャロル・オーツ『とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢』(1996-2011年)
ジョイス・キャロル・オーツ『アグリーガール』(2002年)
林壮一『マイノリティーの拳』、ジョイス・キャロル・オーツ『オン・ボクシング』(1987年)
ジョイス・キャロル・オーツ『Solstice』(1985年)
ジョイス・キャロル・オーツ『エデン郡物語』(1966-72年)


フタリのさとがえり@Ftarri

2018-07-02 22:39:13 | アヴァンギャルド・ジャズ

水道橋のFtarri(2018/7/1)。

フタリらしからぬ柔らかいイベント名。すずえりさんが、池田謙さんの一時帰国(さとがえり)にあわせて企画し、30歳以下の「いまみたいなぁという若い人をブッキングした」ものだった。かれらの中にも「さとがえり」者がいた。

■ 松浦知也 (exidiophone)

ふたつのスピーカーがあり、一方で、音を発信する機器に、不自然なほど長いラッパや、樹脂のパイプや、端子が付けられている。後者のいろいろをスピーカーに近づけて微妙な間合いによってフィードバックを起こし、また原音を手でコントロールすることによって、人の声にある連続性や応答がそこにあらわれた。かれは小さな呼子笛も吹き、それが、人力による直接的なアナログ音と間接的(結果的)なアナログ音との重なりを創り出した。

■ 時里充 (handmade instruments, etc)+小林椋 (handmade instruments, etc)+中村としまる (no-input mixing board)

時里さんは小さいながらも異常に強力な巻き上げ力を持つ機械を、まるでクワガタ同士で闘わせる子どものように酷使する。いくつもの養生テープがひたすらに巻き上げられ、独特の臭いを放ち、別のものに化けてゆく。それは時里さんが制御している。しかし、制御不可となり自律的な運動を始めるようにもみえる。一方で小林さんが操る機械は、いくつもののたうつ胴体・尾を持ち、やはり檻から解き放つも思うがままには動いてくれない。そしてこの奇怪な機械猛獣2匹を前にして、中村としまるの音は、磁場となったかのように機能した。この自律的なカリカチュアのようなサウンド・インスタレーションは、かなり面白いものだった。

すずえり (prepared p, etc.)+池田謙 (electronics)

ピアノの横で、回転する羽根とミラーボールがぐるぐると回る。ピアノの内部にはもう少し大きな羽根やバネが取り付けられ、その中ですずえりさんが鍵盤を叩いていく。それも執拗に。比較的にシンプルさを選んでの攻め方のようにも思えた。池田さんのエレクトニクスは、はじめは綺麗なピークをもった音としてリニアに伸びてゆき、やがてピアノとシンクロしてピアノと奇妙な共鳴を起こし、まるでサウンド全体が交響曲のような拡がりを持った。そして脈動へと化していくように聴こえた。

ところで、すずえりさんご自身のポートフォリオ本『suzueri works』を頂戴した。小さくて可愛い本である。ここに以前のライヴでの写真を2枚使っていただいた。なるほどその頁はフタリっぽい。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4

●すずえり
Zhao Cong、すずえり、滝沢朋恵@Ftarri(2018年)
ファビオ・ペルレッタ+ロレンツォ・バローニ+秋山徹次+すずえり@Ftarri(2017年)
すずえり、フィオナ・リー『Ftarri de Solos』(2017年)

●池田謙
池田謙+秋山徹次@東北沢OTOOTO
(2017年)

●中村としまる
竹下勇馬+中村としまる『Occurrence, Differentiation』(2017年)
クレイグ・ペデルセン+中村としまる@Ftarri(2017年)
広瀬淳二+中村としまる+ダレン・ムーア@Ftarri(2017年)
Spontaneous Ensemble vol.7@東北沢OTOOTO(2017年)
中村としまる+沼田順『The First Album』(2017年)
内田静男+橋本孝之、中村としまる+沼田順@神保町試聴室(2017年)
山内桂+中村としまる『浴湯人』(2012年)


『ネイティブ・サン』

2018-07-01 10:55:43 | アヴァンギャルド・ジャズ

わたしはフュージョン世代でも何でもない。ネイティブ・サンも、むかし、この第1作(1978年)を聴かせてもらってふーんと思った程度。最近妙に聴きたくなってLPのオリジナル盤を手に入れた。

Takehiro Honda 本田竹曠 (key)
Kohsuke Mine 峰厚介 (ts, ss)
Motonobu Ohde 大出元信 (g)
Tamio Kawabata 川端民生 (b)
Hiroshi Murakami 村上寛 (ds)
Damiao Gomes De Souza (cuica)

今さら言うなという感じかもしれないのだが、すんごくカッコ良い。やっぱりね。

70年代のフュージョンサウンドなのだが、本田竹広(このときは竹曠)のキーボードは氏ならではで、沁みるようなブルースも野蛮に飛ぶような勢いもある。A面の「Heat Zone」でのあたたかなソロも、B面の「Twilight Mist」での哀しくもある感覚も、ひたすら、ジス・イズ・ホンダ。うう痺れる。何もこの盤を脇に置かなくても、他のジャズやファンキーな作品と同じである。

そして真っすぐでちょっと音がずれた匂いのある峰厚介のサックスも良いし、村上寛のスタイリッシュなドラミングも最高。

ところでこれによらず、気分がフュージョン回帰。というかもともと限られたものしか聴いていないので、今になって、コミュニティ的で希望があるようなフュージョンのサウンドに惹かれている。なぜだろう。個人の気分?時代か?

そんなときに、播磨のジャズ誌『Voyage』でもネイティブ・サン特集が組まれている。さらに、守谷美由貴・福井アミ・伊地知大輔・ませきゆうと・細井徳太郎というメンバーで「ネイティブ・サン祭り」をやるとの報(2018/8/15、池袋インディペンデンス)。再発見の波が来る前に直系によるネイティブ・サン再興か。それともわたしが気付かなかっただけで何か大きな動きがあったのか。

●本田竹広
本田竹広『BOOGIE-BOGA-BOO』(1995年)
本田竹広『EASE / Earthian All Star Ensemble』(1992年)
本田竹広『This Is Honda』(1972年)
本田竹広『I Love You』(1971年)
本田竹広『The Trio』(1970年)


サリム・ワシントン『Dogon Revisited』

2018-07-01 09:57:20 | アヴァンギャルド・ジャズ

サリム・ワシントン『Dogon Revisited』(Passin' Thru、-2018年)を聴く。

Salim Washington (ts, fl, oboe, Mbira)
Tyshawn Sorey (ds)
Hill Greene (b)
Melanie Dyer (viola, voice)

テナーは太く迫力があり真っすぐで、オーボエも肺活量のためか強い音を出していて、悪くない。

しかし、ジュリアス・ヘンフィルの「Dogon AD」を演奏しており、それにはメラニー・ダイア―のヴィオラが並走しているのだ。つまり、形としてヘンフィルのオリジナルと比較してしまい、どうしたって分が悪い。逆に言えばヘンフィルの演奏はいつ聴いても最高である。

聴き所は、むしろ、多彩でさらにポテンシャルの巨大さを感じさせるタイショーン・ソーリーのドラムス。


波多江崇行+川下直広+小山彰太(Parhelic Circles)@阿佐ヶ谷Yellow Vision

2018-07-01 08:23:42 | アヴァンギャルド・ジャズ

阿佐ヶ谷のYellow Vision(2018/6/30)。

Parhelic Circles:
Takayuki Hatae 波多江崇行 (g)
Naohiro Kawashita 川下直広 (ts, vln, perc)
Shota Koyama 小山彰太 (ds)

ファーストセット。川下さんはヴァイオリンを中心にして間にテナーサックスを挟み、さらにその間には小さいパーカッション。そのヴァイオリンについて、ステージ前後に小山さんが絶妙な軽さだと絶賛していたのだが、軽さはともかく、擦れ音のよれ具合や倍音の具合が確かにとても良い。そして波多江さんのギター表現の振幅の大きさに驚かされる。細かな音を積み重ねてゆき、特に低音を中心としてさまざまな色がわさわさと混じりあったクラスターを創り出し、またときには静かに爪弾く。小山さんも川下さんの楽器の持ち替えや、サウンド全体のそのときの振れ幅に応じて、ノイズが敢えて残るようなドラム、鐘、シンバルを即妙に繰り出してくる。眼前で幻のような音絵巻が予想外に展開し、呑まれているうちに終わった。

セカンドセット。川下さんのノイズ多いテナーソロから始まる。しばらくはギターとのデュオが続いたのだが、ふたりの間がなかなか隙間が多くて素晴らしく、また波多江さんはそれに応じて、金属板でしなるような音、スライド、静かな爪弾きなど、やはり淡々と幅広い表現を行う。あとで訊くと、演奏中は、まるで外から自分自身をレコードのように観察して次の展開を考えているような按配だとのことであり、それゆえ過度にひとつのものだけに没入しない結果となるのかもしれない。川下さんがヴァイオリンに持ち替えると、ギターはあたたかいトーンとなった。ここで絶妙に小山彰太スタイルとしか言いようのないドラムス参入。騒めきの中でギターが浮上した。

30分が経ち、終わった途端に、小山さんがいきなりブラシで叩きはじめた。演奏再開、そしてやはり独特なドラムスによる独特なタイム感の創出。波多江さんはまるでジョー・パスのように歌を弾く。そのひとつひとつの音に揺らぎがあって、まさにこれも幻日環(パーヘリック・サークル)なのかもしれなかった。川下さんがヴァイオリンで入ってきて、「When I Fall in Love」のような旋律を弾く。その世界は昔のジャズでも昭和歌謡でもあった。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4、XF60mmF2.4

●波多江崇行
波多江崇行+川下直広+小山彰太『Parhelic Circles』
(2017年)

●川下直広
川下直広カルテット@なってるハウス(2017年)
波多江崇行+川下直広+小山彰太『Parhelic Circles』(2017年)
川下直広@ナベサン(2016年)
川下直広カルテット@なってるハウス(2016年)
渡辺勝+川下直広@なってるハウス(2015年)
川下直広『Only You』(2006年)
川下直広『漂浪者の肖像』(2005年)
川下直広+山崎弘一『I Guess Everything Reminds You of Something』(1997年)
『RAdIO』(1996, 99年)
『RAdIO』カセットテープ版(1994年)
のなか悟空&元祖・人間国宝オールスターズ『伝説の「アフリカ探検前夜」/ピットインライブ生録画』(1988年) 

●小山彰太
波多江崇行+川下直広+小山彰太『Parhelic Circles』(2017年)
立花秀輝『Unlimited Standard』(2011年)
2000年4月21日、高木元輝+不破大輔+小山彰太(2000年)
往来トリオの2作品、『往来』と『雲は行く』(1999-2000年)
高瀬アキ『Oriental Express』(1994年)


ダニエル・カーター+ウィリアム・パーカー+マシュー・シップ『Seraphic Light』(JazzTokyo)

2018-07-01 01:02:23 | アヴァンギャルド・ジャズ

ダニエル・カーター+ウィリアム・パーカー+マシュー・シップ『Seraphic Light』(AUM Fidelity、2017年)。傑作。

>> #1532 『Daniel Carter – William Parker – Matthew Shipp / Seraphic Light』

Daniel Carter (fl, tp, cl, ts, as, ss)
William Parker (b)
Matthew Shipp (p)

●ダニエル・カーター
マシュー・シップ『Not Bound』(2016年)
トッド・ニコルソン+ニューマン・テイラー・ベイカー+ダニエル・カーター@6BC Garden(2015年)
ダニエル・カーター『The Dream』、ウィリアム・パーカー『Fractured Dimensions』(2006、03年)

●ウィリアム・パーカー
スティーヴ・スウェル・トリオ@Children's Magical Garden(2017年)
ウィリアム・パーカー+クーパー・ムーア@Children's Magical Garden(2017年)
スティーヴ・スウェル『Soul Travelers』(2016年)
エヴァン・パーカー+土取利行+ウィリアム・パーカー(超フリージャズコンサートツアー)@草月ホール(2015年)
イロウピング・ウィズ・ザ・サン『Counteract This Turmoil Like Trees And Birds』(2015年)
トニー・マラビー『Adobe』、『Somos Agua』(2003、2013年)
ウィリアム・パーカー『Live in Wroclove』(2012年)
ウィリアム・パーカー『Essence of Ellington / Live in Milano』(2012年)
Farmers by Nature『Love and Ghosts』(2011年)
ウィリアム・パーカー『Uncle Joe's Spirit House』(2010年)
DJスプーキー+マシュー・シップの映像(2009年)
アンダース・ガーノルド『Live at Glenn Miller Cafe』(2008年)
ブラクストン、グレイヴス、パーカー『Beyond Quantum』(2008年)
ウィリアム・パーカー『Alphaville Suite』(2007年)
ウィリアム・パーカーのカーティス・メイフィールド集(2007年)
ロブ・ブラウン『Crown Trunk Root Funk』(2007年)
ダニエル・カーター『The Dream』、ウィリアム・パーカー『Fractured Dimensions』(2006、2003年)
ウィリアム・パーカー、オルイェミ・トーマス、ジョー・マクフィーら『Spiritworld』(2005年)
ウィリアム・パーカー『Luc's Lantern』(2005年)
By Any Means『Live at Crescendo』、チャールズ・ゲイル『Kingdom Come』(1994、2007年)
ウィリアム・パーカーのベースの多様な色(1994、2004年)
Vision Festivalの映像『Vision Vol.3』(2003年)
ESPの映像、『INSIDE OUT IN THE OPEN』(2001年)
ペーター・コヴァルト+ローレンス・プティ・ジューヴェ『Off The Road』(2000年)
アレン/ドレイク/ジョーダン/パーカー/シルヴァ『The All-Star Game』(2000年)
ウィリアム・パーカー『... and William Danced』(2000年)
ザ・フィール・トリオ『Looking (Berlin Version)』
エバ・ヤーン『Rising Tones Cross』(1985年)
ウェイン・ホーヴィッツ+ブッチ・モリス+ウィリアム・パーカー『Some Order, Long Understood』(1982年)
『生活向上委員会ニューヨーク支部』(1975年) 

●マシュー・シップ
マシュー・シップ『Not Bound』(2016年)
マシュー・シップ『Piano Song』(2016年)
ジョン・ブッチャー+トマス・レーン+マシュー・シップ『Tangle』(2014年)
マット・ウォレリアン+マシュー・シップ+ハミッド・ドレイク(Jungle)『Live at Okuden』(2012年)
ジョン・ブッチャー+マシュー・シップ『At Oto』(2010年)
DJスプーキー+マシュー・シップの映像(2009年) 


パトリック・シロイシ『Bokanovsky’s Process』、『Tulean Dispatch』、『Kage Cometa』(JazzTokyo)

2018-07-01 00:57:06 | アヴァンギャルド・ジャズ

パトリック・シロイシ『Nakata / Bokanovsky’s Process』、『Patrick Shiroishi / Tulean Dispatch』、『Fujioka, Shiroishi, Casanova / Kage Cometa』。

>> #1531 パトリック・シロイシの近作3枚『Nakata / Bokanovsky’s Process』、『Patrick Shiroishi / Tulean Dispatch』、『Fujioka, Shiroishi, Casanova / Kage Cometa』


「JazzTokyo」のNY特集(2018/7/1)

2018-07-01 00:45:33 | アヴァンギャルド・ジャズ

「JazzTokyo」誌のNY特集、Jazz Right Now(2018/7/1)。いろいろあって3か月ぶり。

■ 連載第30回 ニューヨーク・シーン最新ライヴ・レポート&リリース情報 チャド・テイラー、アナイス・マヴィエル

チャド・テイラー『Myths and Morals』、アナイス・マヴィエルのパフォーマンスについて。

■ ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま 第23回 ラス・ロッシング〜 ケーデンスとの駆け引き、ある瞬間の美〜

蓮見令麻さんの連載。素晴らしいピアニスト、ラス・ロッシングについて。

●Jazz Right Now
「JazzTokyo」のNY特集(2018/4/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2018/1/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2017/12/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2017/9/30)
「JazzTokyo」のNY特集(2017/9/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2017/8/1)

「JazzTokyo」のNY特集(2017/7/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2017/5/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2017/4/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2017/3/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2017/2/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2016/10/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2016/9/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2016/8/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2016/7/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2016/6/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2016/5/1)
「JazzTokyo」のNY特集(2016/4/1)
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「JazzTokyo」のNY特集(2015/12/27)
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「JazzTokyo」のNY特集(2015/8/30)
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