オリジナルが少年漫画誌連載である藤本タツキ作品の劇場版アニメ化。漫画がテーマと言うこと、同性二人が共同で作品を創ってゆくとこなど「バクマン。」を連想しないでもないが、本書はずっと内面的と言うかシリアスと言うか、重い作品に感じた。
ちょっと描けるとクラスの人気者で有頂天になっていた主人公は、不登校だった同級生が実は遥かに上手い絵を描くことに愕然とするが虚勢を捨てられず、自分を慕ってきたその同級生をアシスタントとして作品を描き雑誌に掲載されてゆく。いよいよ連載デビューの話が来たタイミングでその同級生が、漫画を辞め自分の絵を描くため美術学校に行きたいと言い出し喧嘩別れしてしまう。その同級生を襲った悲劇と、その遠因は自分だと気付いた(思い込んだ)主人公。
失ったものの大きさ、かけがえない思い出の悲しみに浸りながら、それでも一人、漫画を描き続ける道を選んだ主人公のラストシーンが何とも言えず切なく感じる。生きてくのも辛そうだな。彼女は一生、自分を責め続けるのかな。先日見た「トラペジウム」の主人公とどっちがイヤなヤツかな。でもどちらも、とことん自分の心に忠実なだけだったのかな。
来場者特典に本作のオリジナルコミックを貰ったが、同じストーリーのこの絵を見て、こんなキャラデザインでアニメ化した監督を凄いと思った。監督・脚本・キャラクターデザインすべて押山清高。
2024年6月28日 川崎・チネチッタにて