【ぼちぼちクライミング&読書】

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「キリスト教と日本人」石川明人

2023年05月15日 07時43分11秒 | 読書(宗教)


「キリスト教と日本人 宣教史から信仰の本質を問う」石川明人

日本にキリスト教が浸透しなかったのはなぜ?
宣教史から振り返った作品。

P52
キリシタンへの改宗者が増えていくと、布施の額が減るという現実的な問題も出はじめたようで、ザビエルと僧侶たちとの関係は悪化して、嫌がらせや攻撃をされるようになっていった。

P87
伴天連追放令の背景としてさらにもう一つ言及すべきなのは、当時ポルトガル人が女性や子供を含む日本人を奴隷として売買していたという問題である。秀吉にはそれも許せなかったのである。(秀吉は、美女の誉れ高いガラシャに振られて、キリシタンを嫌うようになったという説もある)

P98
秀吉の時と違って完全な「禁教」にすることができたのは、カトリックであるスペイン・ポルトガルに対し、プロテスタントのオランダ・イギリスとのあいだで宣教を伴わない貿易が可能になったからでもある。

P106
こうした鎖国およびキリシタン迫害の背景には、カトリック国であるスペイン・ポルトガルと、新興のプロテスタント国であるイギリス・オランダとの世界覇権をめぐる争いもあった。

P114
ペリー自身も当然キリスト教徒である。彼が属していた教派は、英国教会の系統にある「聖公会」だ。初代駐日大使で日米修好条約を締結したタウンゼント・ハリスも、同じく聖公会に属していた。(中略)
海軍のペリーから約90年後、今度は陸軍のダグラス・マッカーサーが連合軍最高司令官として日本にやってきたが、彼も同じく聖公会の信徒で、日本にキリスト教を広めることに大変熱心であった。

P128
フルベッキは集まった日本人に対し、「平和は哲学者の夢であり、キリスト教徒の希望であるますが、戦争は人類の現実の歴史です」と述べた。これまでイギリスが世界各地で何をしたか、フランスやドイツやロシアはこれまで何をしたかを考えてみよ、とフルベッキは言い、現実に「危険」があるのだと繰り返した。
そして次のように続けている。「私の助言は、海岸を固めると同時に、真に国家的な軍隊をつくりなさいということです。若者を訓練し、教育しなさい。そしてすべての人に昇進の道を開きなさい」(『ミカド――日本の内なる力』P137)

P224
日本のキリスト教徒数は、総人口の1%程度という状態が続いている。(中略)
これまで宣教に費やしたコストとその成果に比べるならば、やはりキリスト教は日本で成功したとは言い難い。(中略)
確かに日本でもクリスマスなどのイベントは定着し、キリスト教式で結婚式を挙げる人は多い。(中略)日本人の半数近くは、牧師と神父の区別もついておらず、カトリックとプロテスタントの違いも説明できないのではないだろうか。
(韓国でのキリスト教徒の割合は約30%。この理由は次のように説明されている・・・以下、「教養としての宗教事件史」島田裕巳より――朝鮮王朝(李氏朝鮮)の時代になると、儒教が国教に定められ、仏教は弾圧を受けて衰退した。
儒教は基本的に男性のための宗教、上層部のための宗教であり、女性や下層階級はその枠のなかから排除されてしまう。朝鮮半島でも仏教の信仰が衰えなかったとしたら、それは女性や下層階級を含む民衆を救済する役割を果たし、宗教的な空白を作ることはなかったであろう。ところが、空白が存在したために、代わってキリスト教がそれを埋めることになったのである。P252)

P228
かつて、ヨーロッパのキリスト教徒たちは、外国に行っては現地の宗教文化を排斥し、壊滅させ、反抗する原住民を虐殺してきた。(中略)
しかし、日本はヨーロッパのキリスト教徒による侵略が当たり前だった時代に、それをさせなかった。あるいは、それをされずに済んだ。そのことが日本にキリスト教徒が広まらなかった理由の全てとは言わないまでも、重要な背景の一部であることは確かである。

P230
また森岡(清美)は、日本人には「敬畏すべき神」を忌み、「親しみやすい神」を慕う、という傾向があることも認めている。(中略)
そうした「神」を求める傾向のある多くの日本人には、キリスト教のように、まず何よりもおのれの罪を自覚させ、悔い改めを迫り、神の栄光に奉仕することを求める宗教には入り込みにくいのではないか、というのが彼の分析の大枠である。

【参考図書】

「キリスト教と戦争」 石川明人


「私たち、戦争人間について」石川明人


「佐藤優さん、神は本当に存在するのですか?」竹内久美子

【ネット上の紹介】
日本人の九九%はキリスト教を信じていない。世界最大の宗教は、なぜ日本では広まらなかったのか。宣教師たちは慈善事業や教育の一方、貿易、軍事にも関与し、仏教弾圧も指導した。禁教期を経て明治時代には日本の近代化にも貢献したが、結局その「信仰」が定着することはなかった。宗教を「信じる」とはどういうことか?そもそも「宗教」とは何か?宣教師たちの言動や、日本人のキリスト教に対する複雑な眼差しを糸口に、宗教についての固定観念を問い直す。
第1章 キリスト教を知らずに死んだ日本人に「救い」はない?
第2章 戦争協力、人身売買、そしてキリシタン迫害
第3章 禁教高札を撤去した日本
第4章 「本当のキリスト教」は日本に根付かないのか
第5章 「キリスト教」ではなく「キリスト道」?
第6章 疑う者も、救われる


「なぜ宗教家は日本でいちばん長寿なのか」島田裕巳

2023年02月20日 06時46分03秒 | 読書(宗教)


「なぜ宗教家は日本でいちばん長寿なのか」島田裕巳

P94
日本の歴史を振り返ってみると、寺や神社は必ず土地をもっていました。これは、皇族や貴族、武家など、上層階級からの寄進によるものです。昔は、「国に税金を取られるくらいならお寺に寄進したほうが良い」という考えが強かったのです。
興福寺などは、藤原氏の氏寺ですから、大和国のすべての土地を寄進されていたほどです。ですから、大和国は鎌倉幕府も室町幕府も守護地頭を置くことができず、税金はすべて興福寺が代わりに徴収していました。

P124
ムハンマドはもともと商人で、中年になったとき悩みを抱え、洞窟で瞑想しているときに天使があらわれて、神のメッセージを伝えられました。
その後、ムハンマドは家庭をもったまま、俗人として神のメッセージを周囲に伝えていきました。このように開祖が俗人であることを貫いたわけですから、その後のイスラム教では出家した聖職者は1人もあらわれなかったのです。(「婚姻の書」アナスによると「預言者ムハンマドは9人の妻を持ち、一晩のうちに数人の妻を訪れる習わしであった」「預言者は当時9人であった彼のすべての妻たちと一晩のうちに交わった」。これを読むと仏教やキリスト教と異なり、性に対する禁欲、ってのがない。「性(セックス)と宗教」より)

P126
カトリックには、ローマ教皇のように、イエス・キリストの地上における代理人とされる存在がいて、それが頂点に立っていますから、神の前での平等には反しています。

【長寿の秘訣】
規則正しい生活(ゲームやTVなど、夜更かししない)
食事も適正(暴飲暴食しない)
ストレスも少ない(穏やかな生活、人から敬意を払われる)
適度な運動(歩き回ったり、座禅を組んだり)
お経を読んで腹式呼吸

【コメント】
「なぜ宗教家は長寿なのか」より、
「なぜ宗教家は絶倫なのか」を書いて欲しい。

【ネット上の紹介】
休禅師(88歳)、親鸞(90歳)、天海僧上(108歳)…彼らはなぜ長命だったのか。その生活スタイルに学ぶところはあるのか?“戒律”にこめられた長寿の秘訣とは?宗教学の第一人者による異色の健康論。
第1章 宗教家は長生き―職業によって差が出る平均寿命(八〇歳超の大台に乗った日本人の寿命
驚異的な戦後の寿命の延び ほか)
第2章 宗教家が長生きである根本的な理由とは(僧侶、神主、牧師と神父
本来の出家は結婚もしないし家庭ももたない ほか)
第3章 仏教以外の宗教家はどうなのか(神主は俗人という神道のあり方
神社で僧侶が経を唱えていた時代 ほか)
第4章 宗教家が長生きする理由(生活が規則正しい
お経を読み呼吸法を実践する ほか)
第5章 私たちが宗教家から学べること(世俗を超越した人の話にふれてみる
プチ修行を経験する人たち ほか)


「「神様」のいる家で育ちました」菊池真理子

2023年02月18日 09時54分15秒 | 読書(宗教)


「「神様」のいる家で育ちました」菊池真理子

宗教2世の問題を扱った作品。
子どもは親を選べない。
つくづく「親ガチャ」、この「当たりはずれ」は大きい。


教祖は都内の一等地でお城みたいな家に住んでる・・・
(中略)
「美咲 今、何がしたいの?」
「どうしてお母さんがそれ言うかな・・・
何もさせてくれなかった
何もできないようにさせられた
あなたたちのせいじゃないの」

「何ももってないよ 誰も助けてくれないよ もう生きていく方法がないよ」
 生まれてきたくなかった――

神や仏に愛されるよりも
私たち親に愛されたかった

【関連図書】

「カルト村で生まれました。 」高田かや

「さよなら、カルト村」高田かや

【ネット上の紹介】
宗教2世。親が宗教を信仰している家の子供。宗教ありきで育てられ、世間とはずいぶん違う生活を送っています。 参加してはいけない学校行事があったり。薬を使わせてもらえなかったり。人を好きになってはいけなかったり。休日は宗教活動のための日だったり。 もちろんそこに幸せを見出す人たちもいるけれど、中には成長するにつれて苦しさを感じる子供達がいることを、知ってほしい。 著者含む、7人の宗教2世たちが育ってきた家での出来事をマンガ化した作品が、加筆修正を加え、単行本化。 単行本描き下ろし45p収録。 「情報ライブ ミヤネ屋」でも紹介された、今年最注目のノンフィクションコミック!


「教養としての宗教事件史」島田裕巳

2023年01月09日 07時56分50秒 | 読書(宗教)


「教養としての宗教事件史」島田裕巳

457Pで読み応えがあった。
中身も充実している。

P207
『歎異抄』を禁書にしたのが、蓮如である。蓮如としては、門徒たちが、悪人正機の考え方を勝手に解釈し、悪人の方が往生がしやすいのなら、むしろ積極的に悪をなした方がいいと考えるようになることを恐れたのであろう。

P252
朝鮮王朝(李氏朝鮮)の時代になると、儒教が国教に定められ、仏教は弾圧を受けて衰退した。
儒教は基本的に男性のための宗教、上層部のための宗教であり、女性や下層階級はその枠のなかから排除されてしまう。朝鮮半島でも仏教の信仰が衰えなかったとしたら、それは女性や下層階級を含む民衆を救済する役割を果たし、宗教的な空白を作ることはなかったであろう。ところが、空白が存在したために、代わってキリスト教がそれを埋めることになったのである。(日本では仏教が受容されていて、空白はなかった。それ故、日本でのキリスト教は1%、韓国は約30%)

P203
密教の形成に影響を与えたヒンズー教は、仏教とは異なり、空の考え方をとらず、むしろ実在論の立場にたつ。したがって、仏教が密教の方向に向かっていくという事は、ヒンズー教にかぎりなく接近していくことを意味した。仏教が密教の性格を強めれば強めるほど、ヒンズー教との区別はなくなり、やがて密教化した仏教は、ヒンズー教の世界のなかに溶け込んでいってしまった。

P274
彼らは、国教会に従わなかったため、「非国教徒」、あるいは「ピューリタン」と呼ばれる。ピューリタンには、もともと杓子定規とか、偽善者といった必ずしも肯定的でない意味が込められていたが、やがてはあくまで純粋な信仰を求める人々の意味で使われるようになっていく。(この説明は納得!)

P277
クリスマスがヨーロッパの異教の祭りを取り入れて成立したものであるため、それを祝うことは神への冒涜とされ、19世紀になるまで、意外にもアメリカでクリスマスは祝われなかったのである。

P322
近代において、忘却されていた神なり、神に近い存在がいきなり政治的に復活をとげたという点で、明治維新は、イランにおけるイスラム革命と似ていた。

P370
自前の財産を持たず、その存在を全面的に国に依存している日本の皇室は、いわばフルタイムの公務員のようなもので、そこには民主主義の国家に属する人間なら誰にでも保証された自由や人権は存在しない。
しかも、皇室の場合には、皇籍という特別な戸籍が存在し、一般の国民とは区別されいる。そのため、イギリスの王室とは異なり、離婚の自由も事実上妨げられている。これでは、イギリス並みに開かれた皇室であることなど、どう考えても不可能なはずである。

P372
天皇制とともに長い歴史を歩んできた日本人にとって、天皇の存在しない日本という国を思い描くことは難しい。国の省庁が消え去ったとき、いったい何を国の中心に据えたらいいのだろうか。

【ネット上の紹介】
現代人にとって、宗教についての知識・教養はもはや必要不可欠。49の最重要事件を取り上げながら、スキャンダラスな面もふくめて、歴史に登場する宗教に生の形でアプローチ。ぐいぐい読めてためになる、学生もビジネスパーソンも必読の宗教入門。
人類はいったいいつ宗教をもったのか
壁画が物語る宗教の発生
謎に満ちた巨大ピラミッドの建設
ゾロアスター教が後世に多大な影響を与える
一神教が誕生し、偶像崇拝が禁止される
老子、釈迦になる
結集から、仏教の歩みがはじまる
パウロとアウグスティヌスの回心が、キリスト教という宗教を生む
新しくやって来た仏教とそれを迎え撃つ神道との対決
三蔵法師、天竺を旅する〔ほか〕


「佐藤優さん、神は本当に存在するのですか?」竹内久美子

2022年12月12日 08時13分40秒 | 読書(宗教)


「佐藤優さん、神は本当に存在するのですか?」竹内久美子

竹内久美子さん、佐藤優さんの対談。


P37
佐藤:ドーキンスの本で勘違いしていけないのは、神については問題にしていても、宗教はさほど問題にしていないことです。

ダーウィンについて
P46
佐藤:英国軍艦ビーグル号の南米測量に便乗して動植物の標本を採集したりする航海から戻るんですけど、学会にもほとんど出ないし論文を発表するわけでもない。親から援助を受ける悠々の身で、しかも株で儲けていたみたいです。母親は陶器のウェッジウッド家の出で、彼もウェッジウッド家のイトコと結婚しているんです。そうして、50歳になっていきなり書いた本が『種の起源』(1859年)だった。

4つの福音書
P57
佐藤:まず最初にマルコができているんです。それとは別に現存していない謎の福音書がある。とりあえずドイツ語で「資料」をあらわす(QUELLE)の頭文字を取って、Q資料と呼ばれています。(「あらわす」が「あらわず」、と誤植されている)
(中略)
まずマルコがあり、マタイによる福音書はマルコとQがベースになっており、それにマタイの独自資料が加わっています。ルカによる福音書もマルコとQがベースになって、それにルカの独自資料が加わっています。そしてヨハネによる福音書だけは、まったく独自の資料からでいているんです。マルコ、マタイ、ルカの3つは、見方がだいたい同じだから「共観福音書」と呼ばれています。

P59
竹内:新約聖書は大きく4つのパートから成っていて、4つの「福音書」、「使徒言行録」、パウロ書簡などの「書簡」、それに「ヨハネ黙示録」でしたよね。そのうちの「使徒言行録」というのは、初期のキリスト教が広まってゆく様子を記したもので、主にパウロの活躍が描かれている。

P113
佐藤:パウロが説くキリスト教と、ほかの福音書の距離はけっこう離れていますね。ユダヤ教とパウロ以外の福音書の距離よりも、ずっと離れている。

P120
佐藤:聖書を読めばよく分かるけど、キリスト教というのは、そもそもユダヤ教の時代から、人を選別して、気にくわない者は皆殺しにする――ジェノサイドが専売特許ですからね。イエスのキリスト教だって、その伝統は消えてないわけで、博愛でもって人を均しく愛することなんて考えてないですよ。

P184
竹内:人間は哺乳類の中で唯一、おっぱいをあげている期間でも交尾ができるでしょ。その理由は、おそらく子殺しを防ぐためというのが定説です。ネコなんか、授乳中はどう頑張ったって交尾ができない。

P192
竹内:イケメンの睾丸は本当に大きい。対してイクメンは、子育てというのが片手間にはできない仕事なので、浮気せず集中できるよう睾丸も小さいです。

P203
竹内:(精子バンクに登録している)Aさんの精子はイワシの大群みたいにまっしぐらに泳ぐんだそうで、ものすごく数が多くて質がいい。(中略)で、Aさんのことを取材してみると、女性関係はメチャクチャだし、あちこちで金銭トラブルを起こしている。(中略)
佐藤:男っぽくなくて、結構チャライ感じなんですね。
竹内:ジャニーズ系の優男なんです。精子の数が多い男というのは、案外、優男なんですよ。(中略)最近ではイケメンは精子の質がいいという研究が現れています。その際、顔の評価をしているのは女なので、女から見たイケメン、つまり少し女性っぽい顔の男は精子の質がいいということではないかと思います。

P201
竹内:サウジ(の王様の子どもの数)は50人とか。あとモロッコ最後の皇帝ムーレイ・イスマイルなんか、888人だってギネスに載ってます。それはいいとして、モルモン教初代大管長のジョセフ・スミス・ジュニアの妻の数は36人。(初期モルモン教は一夫多妻制で、2代目ブリガム・ヤング=53人の妻に57人の子ども。日本でも、蓮如は5回の結婚で27人の子どもをもうけている。蓮如が5番目の夫人と結婚したのは72歳の時で、最後に子どもを儲けたのは83歳・・・概して宗教家は絶倫の方が多い印象)

【関連図書】

「聖書を語る 宗教は震災後の日本を救えるか」中村うさぎ/佐藤優


「どろどろの聖書」清涼院流水


「性(セックス)と宗教」島田裕巳

【ネット上の紹介】
動物行動学VS神学、決着はつくか? 「知の巨人の佐藤さんが本気で神を信じるのですか?!」 「竹内さん、世界中に宗教がある理由は?」 キリストと遺伝子から、テロと浮気までわかる異色の対談! 【目次】 第1章 神様はホントにいると思いますか? 宗教と科学のデスマッチ 第2章 聖書っていい加減ではないですか? 天才イエスと悪人パウロの合わせ技 第3章 愛する隣人って誰のこと? 血縁と非血縁のはざま 第4章 人はなぜ浮気をするのですか? パートナーと愛人の選び方 第5章 将来のこと、動物に訊いていいですか? 人間と動物の合わせ鏡
第1章 神様はホントにいると思いますか?―宗教と科学のデスマッチ(遺伝子と神、どちらを信じる?
私って、理性教? ほか)
第2章 聖書っていい加減ではないですか?―天才イエスと悪人パウロの合わせ技(イエスは実在した?
ヨハネ福音書だけが違うわけは ほか)
第3章 愛する隣人って誰のこと?―血縁と非血縁のはざま(献身―チスイコウモリの場合
偽者に注意せよ―ホンソメワケベラの場合 ほか)
第4章 人はなぜ浮気をするのですか?―パートナーと愛人の選び方(言葉は浮気をするためにある
子どもの人数と浮気の関係 ほか)
第5章 将来のこと、動物に訊いていいですか?―人間と動物の合わせ鏡(動物の声を聞け
必ずしも自分で産む必要はない ほか)


「性(セックス)と宗教」島田裕巳

2022年06月30日 04時54分05秒 | 読書(宗教)


性(セックス)と宗教」島田裕巳

性をテーマに宗教が語られる。
仏教、キリスト教、イスラム教の違いがよく分かる。
読んでみて!

P49
十字軍という名称は後からつけられたもので、ウルバヌス2世はそれを最初、「旅」もしくは「巡礼」と呼びました。十字軍の目的はイスラム教の支配下にあった聖地エルサレムを奪回することにありましたが、それが罪を贖うための聖地巡礼としてとらえたのです。

P97
キリスト教と仏教以外の宗教を見渡したとき、聖職者が独身を守っているのは、他にはインドのジャイナ教くらいしか例がありません。

P98
キリスト教に特徴的な原罪の教義は、ユダヤ教やイスラム教には存在しないのです。人間を罪深い存在としてとらえないのであれば、聖職者に独身が求められることはありません。

P110
解脱は、とくに仏教で説かれたことで、輪廻のくり返しそのものを脱することです。

P118
老子を祖とする道教は神秘主義の傾向が強く、道教の教えを実践する目的は仙人となって不老不死を実現することにあります。

「婚姻の書」アナスによると
P145
「預言者ムハンマドは9人の妻を持ち、一晩のうちに数人の妻を訪れる習わしであった」
「預言者は当時9人であった彼のすべての妻たちと一晩のうちに交わった」
(ムハンマドには7人子どもがいたそう・・・絶倫の割に子どもは少ない?もっと多くの子どもがいてもおかしくない。いずれにせよ、イスラム教が性に寛容なのは、このあたりに起因するのかも・・・ただし、男性にとって)

新妻のもとに急ぐ者に対する預言者のアドバイス
P150
預言者は「夜まで待ち、女達が髪を梳り、陰部を剃ってから入るようにせよ」と命じたといいます。果たしてこれは衛生上のためだったのでしょうか。(中略)より快楽を高めるためではなかったかとも考えられます。

なぜイスラム教徒の女性はスカーフを被るのか?
・・・コーランに次のように書かれているから!
P155
また女の信仰者たちに言え、彼女らの目を伏せ、陰部を守るようにと。

P188
(蓮如は)5回の結婚で13人の男子と、14人の女子を儲けています。全部で27人ということになりますが、驚異的なのは、このうち早逝したのがわずか2人だけということです。
(蓮如が5番目の夫人と結婚したのは72歳の時!最後に子どもを儲けたのは83歳!・・・どんだけ絶倫なんだ!浄土真宗が驚異的な発展を遂げたのは、蓮如の子どもたちのネットワークのおかげか・・・私は単に、蓮如本人の「営業努力」と思っていた)

P244
仏教とキリスト教は性を否定的なものととらえ、禁欲を説きます。それに対してイスラム教には、そうした面が見られないのです。

P250
ムハンマドが9歳のアーイシャと結婚したことにふれましたが、それはスンナに示されたことで、イスラム法の本来の考え方では、9歳が女性の結婚する最低年齢になったのです。現在、イスラム教が広がった国々では、9歳で女性は結婚できるとはされていません。だが、少数ではあるものの、9歳での結婚を合法と考える人間たちはいます。
(スンナとは預言者ムハンマドの残したことばや行動を伝えたもの)

【ネット上の紹介】
キリスト教・イスラム教・仏教…人間の欲望と戒律にまつわるすべての疑問に答える!宗教界最大のスキャンダルといえば?人間の性の欲望と宗教の本質に迫る!
第1章 なぜ人間は宗教に目覚めるのか―信仰の背景にある第2次性徴と回心の関係性
第2章 イエスに邪な気持ちはあったのか―キリスト教が「原罪」と「贖罪」を強調した理由
第3章 なぜ聖職者は妻帯できないのか―仏教とキリスト教の違い 女犯とニコライズム
第4章 戒律を守るべき根拠は何か―邪淫が戒められる理由
第5章 なぜ悟りの境地がエクスタシーなのか―房中術と密教に見る性の技法
第6章 なぜイスラム教は性を禁忌としないのか―預言者のことばから読み解くその実態
第7章 親鸞は本当に「愛欲の海」に沈んだのか―浄土真宗だけが妻帯を許された理由
第8章 神道に性のタブーはないのか―日本独特の道徳観と系譜
第9章 なぜ処女は神聖視されるのか―マリアとスンナに見るその意味


「どろどろの聖書」清涼院流水

2022年02月01日 08時29分34秒 | 読書(宗教)


「どろどろの聖書」清涼院流水

聖書のダイジェスト版・・・人間関係の愛憎を中心とした入門書。
知らなかった事がいっぱい知れて良かった。

P9
イスラエルの国王となったダビデは、ある時、王宮の窓から見える泉で水浴びする美女に目を奪われました。バト・シェバという名の女性をダビデ王は呼び出し、彼女が部下の戦士ウリヤの妻であると知りながら関係を持ち、妊娠させてしまいます。(勇者で的確な判断力を持った建国の父・ダビデでさえこれだったら、他の人はどーなるの? キリスト教徒のモラルって、どーよ? そう言えば思い出したエピソードがある・・・知り合いのクリスチャンの女性・看護師は、不倫して妊娠し、正妻から旦那・ドクターを奪った、と聞いた。絶句・・・です)

P34
現代でもイスラエルとパレスチナ――ユダヤ人とアラブ人の争いがいっこうに絶えないルーツは、実は4000年前のアブラハムの正妻サラと女奴隷ハガルの確執に発端を見ることができるのです。

P130
ソロモン王ですが、国内だけでなく周辺諸国からも迎え入れた700人の王妃と300人の側室たちの影響で、異教の神々を崇拝するようになってしまいます。(賢王と名高いソロモンって、頭脳だけでなく絶倫だった、と? 権力を持つと、下半身に歯止めが効かなくなり、こうなるのだろうか?『700人の王妃と300人の側室』って、日本の大奥や中国の後宮クラス、あるいはそれ以上)

P171
現在、ユダヤ人の聖地となっているエルサレムの「嘆きの壁」(英語名ウェスタン・ウォール)は、このヘロデ神殿の西壁の一部になります。(エミルー・ハリスとリンダ・ロンシュタットのデュエット・アルバム=『ウェスタン・ウォール』って、そういう事だったの!)

P172
当時、「イエス」というのは非常にありふれた名前であったため、彼が幼少期から30歳頃まで過ごした場所であるナザレとセットにして、聖書の中では「ナザレのイエス」と呼ばれることもよくあります。(「イエス」ってありふれた名前だったのか!)

ローマ・カトリック教会=ローマン・キャソリック・チャーチ
東方正教会=イースタン・オーソドックス・チャーチ
P208
キャソリックは「普遍」を、オーソドックスは「正統」を、それぞれ意味する言葉です。
(中略)
カトリックでは教会内に磔刑像があり、プロテスタントの教会では十字架だけが掲げられているのが一般的です。

【参考図書】
「プロテスタンティズム 宗教改革から現代政治まで」深井智朗 


「キリスト教でたどるアメリカ史」森本あんり

「キリスト教と戦争」 石川明人

「アメリカと宗教」堀内一史

「宗教国家アメリカのふしぎな論理」森本あんり

【ネット上の紹介】
「新約は旧約の中に秘められ、旧約は新約の中で解き明かされる」聖書には、実在した歴史人物たちの愛僧劇が無数に描かれています。本書は、そんなどろどろの聖書の愛憎劇の中から、厳選したエピソードを51本集めた、いわばベスト・セレクションです。また、それらを通じて、聖書の全体像を把握できるつくりとなっています。
第1章 イスラエルの族長たちの愛憎劇(偉大な「民族の父」は妻を2度も売った
正妻と女奴隷の確執が現代の民族紛争のもとに ほか)
第2章 イスラエル建国以前の愛憎劇(民族を虐殺する王に息子を引き取らせた女
人間と家畜の初子がすべて殺される災厄 ほか)
第3章 ダビデとソロモン時代の愛憎劇(人気と実力を兼ね備えた部下を憎む王
殺したい相手から王は2度もいのちを救われる ほか)
第4章 王国分裂とバビロン捕囚時代の愛憎劇(偉大な王も恐れた神に選ばれた男の大罪
預言者を殺そうとして犬に食われた悪の王妃 ほか)
第5章 救世主イエスをめぐる愛憎劇(救世主誕生を恐れた王による大量幼児虐殺
洗礼者の生首を要求した魔性の踊り子 ほか)

「キリスト教でたどるアメリカ史」森本あんり

2020年03月22日 11時25分33秒 | 読書(宗教)
「キリスト教でたどるアメリカ史」森本あんり
 
宗教からアメリカを切り込む、って作品は少ない。
日常に宗教が大きく絡んでいるにもかかわらず。
一般向けに書かれた貴重な作品と思う。
ちなみに著者は、牧師で、国際基督教大学教授。
 
P15
しばしば、コロンブスは地球が丸いことを教会当局に証明しようとして航海に出たとされるが、これは誤解である。地球が平らでなく丸いことはギリシア時代から知られており、当時の船乗りたちや地図製作者たちの常識となっていた。
 
P20
16世紀の覇者スペインは、キリスト教世界の威信をかけてオスマン帝国と戦い、カトリックの大義を掲げてオランダの反乱勢力と戦い、ヨーロッパの覇権を求めてフランスと戦ううちに、国力を使い果たしていった。
 
17世紀ピューリタン
P41
クリスマスやイースターはカトリック的な行事なので、特別なことは何もしない。そればかりか、クリスマスに贈り物を交換したり着飾って外出したり宴会を催したりすると、罰金を科されることになる。
P43
イングランドで迫害された彼らは、ニューイングランドではむしろ迫害する側に立って、異なる信仰を排除することもあった。(差別された者は、立場が変われば同じことをする・・・残念なことに、これはよくあることで、パレスチナ問題にも言える)
 
P67
そのような(「三角貿易」)奴隷船の船長の1人が、賛美歌「アメイジング・グレイス」を作詞したニュートンである。(熱心なクリスチャンがレイシストだった?音楽の美しさと人間性は関係ない、ってこと?・・・現在のモラルで過去を断罪できないけど)
 
P97
19世紀に入ると、ヨーロッパでの産業革命の進行とジャガイモの不作で貧窮した移民が大量にアメリカに流入し、彼らの持ち込むカトリック信仰が次第に批判の標的とされるようになる。「ネイティヴィズム」(Nativism)と呼ばれる排斥運動は、この頃始まったものである。(反カトリックは根強いのか、カトリックの大統領はケネディだけだ)(追記:2021年1月20日、ジョー・バイデン氏が、米史上2人目のカトリックの大統領となった)
 
P144
奴隷制度は黒人だけの問題でなく、女性の問題でもあった。夫たちが結婚関係をないがしろにして黒人女性に子どもを産ませるからである。
 
P153
「分離すれども平等」(separate but equal)というこの差別的な待遇は、1896年の連邦裁判所判決によって支持され、1954年に覆されるまで、アメリカの人種差別を正当化するドクトリンであり続けた。
 
P182
「ファンダメンタリズム」は、その後隆盛した「イスラム原理主義」との連想から、忌避される言葉となった。代わりに人々が自称として用いるようになったのが、広義に「プロテスタント」を意味する「福音派」(Evangelicalという呼称である。現代アメリカで使われる際の語感としては、聖書的な権威の尊重、贖罪と回心の重視、伝道への熱心などが共通して含意される。堕胎や同性婚などをめぐる見解は保守的で、特にこれらを議題とする人々を「宗教右派」と呼ぶこともある。
 
【資料】
 
【検討課題】・・・セイラム村の魔女事件
P52:この経過には指導的牧師のマザー父子もそれぞれ賛否を表明しているが、概して牧師たちの関与は間接的で、裁判当事者に慎重さを求めるものであった。
著者は牧師に対しても事件に対しても好意的に書いているが、中野京子さんが異なる意見を書かれているので、次に紹介しておく。
【アメリカの魔女狩り】
 
【おまけ】
P99:シャムロック=アイルランドの象徴、とある。
松田志乃ぶさんの短編「これはかぼちゃ王国の鍵」に、次のような箇所がある。
P274(エリザベスは順序で言えば十一番目の子どもか。ジュリエットと一番仲のよかった姉――シャムロックの修道院に入ったというのはこの子だな。賢そうな顔立ちのきれいな娘だ)
つまり何が言いたいかと言うと、ハーツランド=アイルランドということだ。ジュリエットはアイルランドから来たのだ。ちなみに、エリザベスは後ほど「たんぽぽと卵」のヒロインとして登場し、シャムロック修道院から1週間の長旅をへて王都へやってくる。
 
【さらに脱線】
EU離脱ではアイルランド北部が英国なので、国境をどうするかでもめている。また、Brexitに絡んで、Megxitなる造語もできた。メーガン妃が王室から「離脱」するのに付けたニックネームだ。洒落た言葉のように感じていたが、そうではないと言う考えもある。次に紹介しておく。
この言葉は新しいわけではなく、メーガンが受けてきた差別を象徴する暗い背景をもつという。
メグジットは2018年5月2人の結婚式ごろからSNS上に現れ、母親が黒人のメーガンへのヘイトキャンペーンに由来するらしい。これはメーガンを英国と英王室から追い出すことを目的とし、人種差別的、性差別的な画像や言葉を伴うことが多い。このハッシュタグを用いた投稿の多くは、彼女がscheming(狡猾な)social climber(成り上がり)で、世界的セレブを目指すためにハリーと王室を利用していると主張。メーガンが妊娠を発表すると、そうした攻撃はさらに増えたという。こうしたdisturbing(不穏な)背景を考えると、メグジットはloaded term(含みの多い言葉)だと言え、使わないほうがいいという声も上がっている。(by ロッシェル・カップ Globe, March 2020 No.227)
脱線ついでに書いておくと、メーガン妃は「SUITS/スーツ」でレイチェル役に出演して有名になった。日本にもファンは多いと思う。「SUITS」は衣服のスーツ以外にも、法廷という意味もある。つまりタイトルはdouble meaningで、「高級スーツ」に象徴される弁護士が活躍する「法廷ドラマ」ですよ、と。
さらに脱線すると、法廷というとcourtの単語を思い出すが、フランス革命の際「テニスコートの誓い」(憲法制定まで解散しないことを誓い合った事件)を授業で習う。これもdouble meaningで、テニスコートと「法廷・裁判所」の両義となっている、と思う。(まったく関係ないけど、「SUITS/スーツ」はBLが潜在テーマになってヒットしたように思う)
 
【余計な一言】
キリストというと「愛」だが、もし、イエス・キリストが誕生しなければ、多くの戦争とトラブルを回避出来たかもしれない。これってパラドックス?
 
【関連図書】
「キリスト教と戦争」石川明人
https://blog.goo.ne.jp/takimoto_2010/e/2ac917e48b5a25d43e24a80ff43cd236
「私たち、戦争人間について」石川明人
https://blog.goo.ne.jp/takimoto_2010/e/d9733d35e083014d4c76809e0f15c770
「プロテスタンティズム 宗教改革から現代政治まで」深井智朗
「アメリカと宗教」堀内一史
 
【ネット上の紹介】
アメリカがアメリカと「なってゆく」過程を知らずして、今日の実像を理解することはできない―。苦難の連続の建国前夜から陰謀論・反知性主義が渦巻く現代の混沌まで、彼の国を一貫して突き動かし、その寄る辺となってきた理念とは、まさしくキリスト教そのものであった。自由・寛容・狂信・傲慢…相反する両面を携えて、驀進する宗教国家の軌跡を一冊で通覧する。神学・宗教学の泰斗が記す、全く新しいアメリカ史。
「アメリカ」の始まり
ニューイングランドの建設
ピューリタンの信仰と生活
大覚醒
独立革命期
諸教会の伸展と変容
アンテベラム時代
新しい信仰の諸形態
南北戦争期
アメリカの膨張
二つの世界大戦
戦後から現代へ

「キリスト教と日本人 宣教史から信仰の本質を問う」石川明人

2019年09月06日 11時08分13秒 | 読書(宗教)
「キリスト教と日本人 宣教史から信仰の本質を問う」石川明人

P68
宣教師のなかには、1580年から教会領になっていた長崎と茂木を要塞化して、ポルトガル・スペインの軍隊を呼び寄せ、そこを足がかりにして日本を制圧することを真面目に検討する者もいたのである。

P79
欲望に基づく「侵略」よりも。善意や正義感に基づく「防衛」の方が凶暴なのだ。

フランシスコ会宣教師・アセンシオンの言葉
P85
スペイン国王は日本のキリスト教とたちを「救済」「防衛」するために、長崎や平戸に要塞を設け、武装艦隊を配備すべきだと説いていたのである。

P87
伴天連追放令の背景としてさらにもう一つ言及すべきなのは、当時ポルトガル人が女性や子供を含む日本人を奴隷として売買していたという問題である。秀吉にはそれも許せなかったのである。

P98
秀吉の時と違って完全な「禁教」にすることができたのは、カトリックであるスペイン・ポルトガルに対し、プロテスタントのオランダ・イギリスとのあいだで宣教を伴わない貿易が可能になったからでもある。

P184
1637年の島原天草一揆の時は、原城に立てこもったキリシタン(カトリック信徒)たちに対して、オランダのプロテスタントたちが海側から艦砲射撃を加えたこともあった。彼らはその見返りとして、ポルトガル船を日本から締め出して貿易を独占できるようになることを期待したからである。

P205
幕末から明治初期にかけては、確かにカトリックは「天主教」、プロテスタントは「耶蘇教」と呼ばれるようにもなった。

P215
ザビエルがやってきた戦国時代の日本人は、キリスト教を前にしても「新しい宗教がやってきた」という認識はなかったことになる。当時の人々の頭には、そもそも「宗教」という概念がなかったからだ。

P224
これまで宣教に費やしたコストとその成果とを比べるならば、やはりキリスト教は日本で成功したとは言い難い。

P226
フィリピンや韓国など、日本と同じアジアでありながら日本よりはるかにキリスト教が広まっている国はある。

【おまけ】・・・韓国事情
Wikipediaによると、韓国では、仏教が22.8%、プロテスタントが18.3%、カトリックが10.9%、儒教0.2%となっている。プロテスタントとカトリックを合わせたキリスト教全体では29.2%となっていて仏教より信者の数が多い。
・・・隣国であり、民族的にも近いのに、この差はいったい何なんだろう?
摩擦が起きるはずだ・・・「近くて遠い国」?

ちなみに、日本のキリスト教徒の割合は1%・・・以下、Wikipediaによる日本の場合、
NHK放送文化研究所による「ISSP国際比較調査(宗教)2008[6]」によると、「あなた自身は、何か宗教を信仰していますか」という問いに対して、「宗教を信仰していない」(無宗教)49.4%、仏教34%、神道2.7%、その他の宗教1.1%、プロテスタント0.7%、カトリック0.2%などとなっており、「宗教を信仰していない」人49.4%に対して「宗教を信仰している」人は38.7%となっている。

【感想】
著者の作品は今まで2冊読んだ。
「キリスト教と戦争」
「私たち、戦争人間について」
どちらもレベルが高く、分かりやすく書かれていて、面白かった。
今回も予想に違わず、とても良かった。お薦めです。

「キリスト教と戦争」
「私たち、戦争人間について」

【ネット上の紹介】
日本人の九九%はキリスト教を信じていない。世界最大の宗教は、なぜ日本では広まらなかったのか。宣教師たちは慈善事業や教育の一方、貿易、軍事にも関与し、仏教弾圧も指導した。禁教期を経て明治時代には日本の近代化にも貢献したが、結局その「信仰」が定着することはなかった。宗教を「信じる」とはどういうことか?そもそも「宗教」とは何か?宣教師たちの言動や、日本人のキリスト教に対する複雑な眼差しを糸口に、宗教についての固定観念を問い直す。
第1章 キリスト教を知らずに死んだ日本人に「救い」はない?
第2章 戦争協力、人身売買、そしてキリシタン迫害
第3章 禁教高札を撤去した日本
第4章 「本当のキリスト教」は日本に根付かないのか
第5章 「キリスト教」ではなく「キリスト道」?
第6章 疑う者も、救われる

東洋英和女学院、深井智朗院長を懲戒解雇

2019年05月10日 20時23分36秒 | 読書(宗教)
東洋英和女学院、深井智朗院長が懲戒解雇された。
著者の「プロテスタンティズム」はとても良い本だった。
読売・吉野作造賞も受賞している。
驚いた。


「プロテスタンティズム 宗教改革から現代政治まで」深井智朗

2018年03月05日 20時32分49秒 | 読書(宗教)


「プロテスタンティズム 宗教改革から現代政治まで」深井智朗
Lucas Cranach (I) workshop - Martin Luther (Uffizi).jpg 
マルティン・ルター      

世界史の授業で習った「宗教改革」が、やっと分かった(ような気がする)。
硬いテーマだけど、とても勉強になった。
しかも、おもしろかった。(素人にも分かるように例え話を出して説明してくれる)
学生時代から引っ張ってきた様々な疑問が氷解した。
読んで損はない、というか、お薦めしたい作品だ。(書評サイトでも好評だ)

PⅧ
プロテスタントは、ルターの改革以後に発生したさまざまな教会とその信者たちを指す。そしてプロテスタンティズムとは、いわゆる宗教改革と呼ばれた一連の出来事、あるいは1517年のルターの行動によってはじまったとされる潮流が生み出した、その後のあらゆる歴史的影響力の総称だ。

P9
さらに教会はこう説明したのである。天国に行くためには教会の教えに従う必要がある。天国への道を知っているのは教会だけで、その道を通過せずには天国に行けないのだと。これがキリスト教的ヨーロッパの完成であった。教会は天国とそこにいたる通路を支配した。教会は「あの世」というきわめて宗教的な問題を取り扱っているのだが、実際には「この世」を支配した。

P66
東方で急速な拡大を続けるオスマン帝国が1526年にハンガリー王国に勝利し、国教に迫る勢いを見せていた。そのためカール五世は国内勢力の結集のために、ルターを擁護する諸侯に対して強く出られなかったのであろう。

カルヴィニズムについて
P96
フランスではユグノーと呼ばれるようになり、またスコットランドでは国教となっている。スコットランドでカルヴァンの影響を受けた人々は長老派と呼ばれるようになった。
ルターとカルヴァン(右)

P98
すべての信徒が聖書を読み、解釈する自由を認めたプロテスタントは解釈をめぐって争い、分裂し、互いに対立するようになった。「プロテスタントの宗派や教団についての本を書けばそれは必ず電話帳よりも厚くなる」という冗談があるほどだ。

P116
おそらく一番力を入れたのは、日曜日の礼拝の充実であった。(中略)
(礼拝は英語で「サービス」という)。

P185
カウンタビリティとは神学用語である。神の前での最後の審判において、人間が天国行きの最終決定を受けるための、自分の人生についてのアカウンタビリティである。神の前で人生を説明してみせるのである。

P186
アメリカの公共宗教研究所の2014年の調査によれば、所属する宗教ではキリスト教が78.2%であった。(中略)神を全く信じない人々は8%で、どの宗教団体にも属さない人が14%いる。ユダヤ教とイスラムはそれぞれ2%程度である。(この数字にもかかわらず、米国がイスラエルを擁護するってどういうこと?!政財界、マスコミの影響力が超弩級?)

日本のキリスト教徒人口は193万人、国民の1.5%、プロテスタント人口はその半分(2016年12/3、文化庁の調査)
P199
隣国の韓国がほぼ同時期にアメリカの宣教師によってプロテスタンティズムを伝えられ、今日では人口の30%以上がキリスト教徒であるのとは対照的である。
韓国でのキリスト教徒の割合は約30%。この理由は次のように説明されている・・・以下、「教養としての宗教事件史」島田裕巳より――朝鮮王朝(李氏朝鮮)の時代になると、儒教が国教に定められ、仏教は弾圧を受けて衰退した。
儒教は基本的に男性のための宗教、上層部のための宗教であり、女性や下層階級はその枠のなかから排除されてしまう。朝鮮半島でも仏教の信仰が衰えなかったとしたら、それは女性や下層階級を含む民衆を救済する役割を果たし、宗教的な空白を作ることはなかったであろう。ところが、空白が存在したために、代わってキリスト教がそれを埋めることになったのである。P252)


【誤植】
P36
早くから理解され。

早くから理解された。

【おまけ】
宗教関係としては、昨年読んだ「キリスト教と戦争」 石川明人に匹敵する良書と思う。


【ネット上の紹介】
1517年に神聖ローマ帝国での修道士マルティン・ルターによる討論の呼びかけは、キリスト教の権威を大きく揺るがした。その後、聖書の解釈を最重要視する思想潮流はプロテスタンティズムと呼ばれ、ナショナリズム、保守主義、リベラリズムなど多面的な顔を持つにいたった。世界に広まる中で、政治や文化にも強い影響を及ぼしているプロテスタンティズムについて歴史的背景とともに解説し、その内実を明らかにする。
第1章 中世キリスト教世界と改革前夜
第2章 ハンマーの音は聞こえたのか
第3章 神聖ローマ帝国のリフォーム
第4章 宗教改革の終わり?
第5章 改革の改革へ
第6章 保守主義としてのプロテスタンティズム
第7章 リベラリズムとしてのプロテスタンティズム
終章 未完のプロジェクトとして


「キリスト教と戦争」 石川明人

2017年12月20日 21時16分10秒 | 読書(宗教)


「キリスト教と戦争」 石川明人

戦争とキリスト教…どうしてこうも親和性があるのだろう?
愛と平和のキリスト教…なのでは?
このように感じたことはないだろうか?
「右の頬を打たれたら左の頬も向けよ」なのでは、と。
「汝、殺すことなかれ」なのでは、と。

思った以上によい本で、内容も濃かった。
戦争や宗教に興味のある方なら、読んで損はない。
むしろ、読むべき本、と思う。
コンパクトな中に、ぎっしり重要事項が詰まっている感じ。

P22
全世界で見るならば、全キリスト教徒約23億人のうち、最も多いのはカトリックであり、その信者数は12億人にのぼると推定されている。各プロテスタント諸派の合計は5~6億人、東方正教会は2~3億人、残りはその他もしくは不明、というのが大まかな内訳である。

P36
アジアに目を向けるなら、伊藤博文を暗殺した安重根も、実はカトリックの信者であった。

P69
聖書に「右の頬を打たれたら左の頬も向けよ」と書かれているから、キリスト教徒はみな、せめて建前上は絶対平和主義者である非暴力主義者だろうと考えるのは「宗教」に対しても「戦争」に対しても、認識が甘いのである。

P74
新約聖書はイエスの死後、かなりの時間がたってから、コイネーと呼ばれる俗語ギリシア語で書かれ、編纂された。イエスが新約聖書を書いたわけではない。そもそもイエスはギリシア語ではなくアラム語を話していたので、イエスの教えはイエス自身の話した言葉ではない言語で今に伝わっているわけである。

旧約聖書「創世記」について…カインとアベル
P75
人間から生まれた最初の人間に関するエピソードは「殺人」なのである。

P77
旧約聖書を読んで感じる「平和」の論理に関する疑問は、非常に素朴なものである。すなわち、殺人は聖書のなかで明確に禁止されているが、それにもかかわらず、どうして多くの戦争の記述があり、また信者たち自身も戦争を繰り返しているのか、というものである。

「平和」に相当するヘブライ語「シャローム」について
P90
そうした広い意味をもつ「シャローム」は、必ずしも「戦争」や「暴力」を排除するものではない。戦いに勝利することも「平和」に含まれるからである。

P136
単純に考えれば、もし最初からすべてのキリスト教徒が「平和主義的」に振る舞っていたら、キリスト教徒は絶滅していたか、せいぜい小さなセクトであるにとどまっていたのではないかと思われる。

1099年の十字軍について
P147
十字軍がエルサレムに突入した時は、イスラム教徒に対するおぞましい虐殺が行われた。守備隊のみならず、女や子供も殺された。戦闘や虐殺がなされた場所には血が池のようにたまり、十字軍兵士と彼らをのせた馬も、そのなかをじゃぶじゃぶとわたっていったと伝えられる。

ジャンヌ・ダルクについて
P157
平和主義を自称するキリスト教徒たちも、剣を手にした「聖人」ジャンヌの姿を見て、「話し合いで解決すべきだ」などと批判したりしない。

P175
1637年の「島原の乱」も、単なる美しい殉教の話ではない。キリシタン側も人々に武力で改宗を強制し、寺院を破壊し、罪のない僧侶を処刑したのである。

【参考リンク】
 石川明人『キリスト教と戦争』

【ネット上の紹介】
世界最大の宗教、キリスト教の信者は、なぜ「愛と平和」を祈りつつ「戦争」ができるのか?殺人や暴力は禁止されているのではなかったか?本書では、聖書の記述や、アウグスティヌス、ルターなど著名な神学者たちの言葉を紹介しながら、キリスト教徒がどのように武力行使を正当化するのかについて見ていく。平和を祈る宗教と戦争との奇妙な関係は、人間が普遍的に抱える痛切な矛盾を私たちに突きつけるであろう。
序章 キリスト教徒が抱える葛藤と矛盾
第1章 ローマ・カトリック教会の説く「正当防衛」
第2章 武装するプロテスタントたち
第3章 聖書における「戦争」と「平和」
第4章 初期キリスト教は平和主義だったのか
第5章 戦争・軍事との密接な関係
第6章 日本のキリスト教徒と戦争
終章 愛と宗教戦争


「いきなりはじめる仏教入門」内田樹/釈徹宗

2016年01月09日 22時13分12秒 | 読書(宗教)

角川文庫 角川ソフィア文庫<br> いきなりはじめる仏教入門 
「いきなりはじめる仏教入門」内田樹/釈徹宗

昨年は何冊か仏教系の本を読んだ。
何となく気になったから。
この本では、そう言った「モヤモヤした感じ」を説明してくれている。

「啐啄(そつたく)の機」とは?
P26
「雛が卵から出ようとして内側から殻をつつく」のが「啐」、母鳥が雛を孵そうとして卵をつつくのが「啄」、これが同時になされる絶妙の時期を指します。

因果律とは?
P27
因果律とは、「あらゆる現象や存在には、原因がある。原因があれば必ず結果がある」という原則です。この法則には例外はない、とうことで仏教は成り立っています。
(ただし、P31にあるように、因果律に基づかない宗教も少なくありません、と・・・キリスト教やイスラム教などもそうです、と)

P33
仏教から見れば、「自己実現」、という概念などは、かなり怪しい、ということになります。(中略)首尾一貫している自己がどこにあるかというストーリーに振り回されちゃいけない、と説きます。

P73
宗教とは、聖なる領域をもち、人間の行為や思考に意味を与え、行動様式を形成する体系、と理解することが可能です。

P80
執着 一般には「しゅうちゃく」と読みますが、仏教用語では「しゅうじゃく」となります。私たちの日常の言葉は漢音読みが多いのですが、仏教用語は呉音の読み方(禅系の用語は、宋の読み方が多い)をする傾向があるからです。

P132
少なくとも、一度は宗教について、自分なりに取り組み、それなりの解決をつけねばなりません。言ってみれば、経済理論は必要なくても、きちんとお金の使い方は学ばねばならない、ってところです。

お正月に初詣にいったい何人が出かけるか?
・・・九千万人弱、と。
P 136
メッカに巡礼するムスリムもびっくり!

P165
智慧はパーリ語でパンニャーと言いますので、それを音写して「般若波羅蜜」とも言います。
(中略)「慈悲なき智慧」も、「智慧なき慈悲」も波羅蜜にならないのです。

なお、今作品は「インターネット持仏堂1 いきなりはじめる浄土真宗」の文庫版、である。
釈徹宗さんの説明は分かりやすい。
他の作品も読んでみようかな。

 【参考リンク】
内田樹の研究室

【ネット上の紹介】

仏教について何も知らない哲学者が、いきなり仏道に入門!?ゼロから刻苦勉励を重ねて、仏道とは何であるかを自得できるのか?レヴィナス、ヒューム、ラカン、カント、デリダ、甲野善紀、マタイ伝―。思想と身体性を武器に、常識感覚で果敢に宗教に挑み、「悟りとは何か」「死ぬことは苦しみか」「因果とは何か」「日本人の宗教性とは」など、根源的なテーマについて、丁々発止の激論を交わし合う。知的でユニークな仏教入門。

[目次]

その1 はじめに‐私の「ご縁」論―私がまさにそのときに会うべき人がちゃんと私を待っている
その2 仏教における「自由と宿命」―仏教はどこまでいっても「因果律に則った自由意志」です。しかし…
その3 「因果」論‐月光仮面・マタイ伝・レヴィナス―必ずしも「原因」が先にあって「結果」が後にある、というものではない
その4 仏教の因果―その落とし穴を避けるためにこそ仏教の因果律という認識手法はあるのです
その5 「宿命」論―宿命というのは、それが宿命であることが私たちに知られない限りにおいて宿命として機能する
その6 仏教の基盤をひとまとめ―もし、“仏教”という商品のカタログがあるなら、そこにはぜひ「脱構築機能内蔵」と
その7 「死ぬこと」は苦しみか?―なぜ「殺す技術」であるはずの武術の修行が人間にとって意味があるのか
その8 仏教の悟り―「生きる」ほうが「死」よりも苦しいという場合もあります
その9 「日本人の宗教性」について―自分自身を顧みて思うのですが、私はかなり宗教的な人間だと思います
その10 賢者と愚者の宗教性―宗教性を成熟させた人には、賢者と愚者、両側面を確認することができます
その11 「善性」と「邪悪」について―欲望は欲望を充足させるものすべての彼方を欲望する byレヴィナス

【仏教関連の作品】
朝日文庫<br> 梅原猛、日本仏教をゆく 
「梅原猛、日本仏教をゆく」梅原猛
「梅原猛の授業道徳」梅原猛
「梅原猛の授業仏教」梅原猛


「梅原猛、日本仏教をゆく」梅原猛

2015年11月22日 20時20分12秒 | 読書(宗教)

朝日文庫<br> 梅原猛、日本仏教をゆく 
「梅原猛、日本仏教をゆく」梅原猛

梅原猛さんによる、日本仏教者列伝。
・・・その知識と思索に圧倒される。

P27
 弥生人が平地を占領して国をつくったとしたならば、土着の縄文人はどこへ逃げるか。それは当然山である。若き柳田国男が『遠野物語』で描いた、里人を驚嘆せしめる山人の文化はこのような山に逃げた縄文人の文化とみてよい。葛城山は『古事記』にあるように、大和に侵入した神武天皇の軍隊に対する粘り強い抵抗者の住む山であった。それが土蜘蛛とよばれ、胴体に対して手足が長い人間を指すといわれるが、自然人類学者の埴原和郎氏によると、縄文人は弥生人と比べて胴体が短く、手足が長かった古モンゴロイドに属する人間であるという。

P109
私は、法然が哲学者であったのに対して、親鸞は詩人であったと思う。

P175
イエスなくしてパウロはないが、パウロなくして今日のキリスト教はなかった。新約聖書にしても、そのもっとも重要な部分は四つのイエス伝と多くのパウロの手紙である。
 親鸞は東国で布教したが、その弟子はせいぜい数百にすぎなかった。しかし蓮如が死んだとき、浄土真宗の信者は数万、数十万に及んだ。(中略)
親鸞をイエス=キリストにたとえれば、蓮如はパウロにあたる。

P177
蓮如は85歳まで生きた
蓮如は5人の妻との間に27人の子をもうけたが、妻はいずれも前妻の死後に妻となったものであるといわれる。彼の死後、多くの子供たちも争いを起こすことなく、協力して真宗教団の発展を助けた。(絶倫もすごいが、相続争いのような事が起きなかったのも驚く・・・穏和な女性を選んで、子供の教育もしっかりした、ということか?絶倫と組織拡大能力の相関関係は?)

【ネット上の紹介】
日本人はなぜ仏教に惹かれるのか?聖徳太子、空海、親鸞、日蓮から西行、千利休、一休、良寛、宮沢賢治まで。42人の仏教者に日本人の心の歴史を探った、著者ならではの力作。週刊朝日百科「仏教を歩く」好評連載の単行本化。
1 仏教の伝来
2 神と仏の融合
3 仏教の革命
4 仏教と芸術
5 禅の展開
6 近代の仏教者


「梅原猛の授業仏教」梅原猛

2015年08月24日 21時48分24秒 | 読書(宗教)


「梅原猛の授業仏教」梅原猛

「知の巨人」という表現は、この方に相応しい。
難しいことを解りやすく教えてくれる力量に感服した。

P61
 西洋の聖者は二人とも殺された。これは重要なことです。ソクラテスは70歳で毒を飲んだ。イエス=キリストはまだ20代か30代前半ではりつけにされて殺された。ところが、東洋の聖者はそうじゃないんです。釈迦は涅槃で静かに死につく。孔子さまも畳の上で死んだ。これは西洋と東洋の思想を比較する上で大事な視点だと思います。
 西洋のほうは、どこか怒りの思想がありますね。聖者を殺した人間に復讐しようとする怒りの思想がある。東洋のほうはもっと安らかです。ある意味であきらめの思想、悲しみの思想があります。

P110
精進、禅定、正語、忍辱。やさしい言葉でいえば「こつこつ努力する」「集中力を養え」「正直であれ」「辱めに耐えろ」。この四つがあれば、人生は生きていけます。これが仏教で教える四つの大切な道徳です。

P189
親鸞は90歳まで生きました。
(知らなかった・・・当時としては途轍もない健康というか、生命力と思う。食事がよかったのか?)
一世を風靡した僧ですが、親鸞は一生をほとんど無名ですごし、京都の片隅の自分の弟の寺でひっそり死んだ。(これも知らなかった。女系のひ孫の覚如がささやかな教団を建てた・・・それが本願寺教団、さらに、覚如の子孫の蓮如により組織が飛躍的に拡大した、と。思想を深めるのと、組織作りは別の才能、と言うことでしょう)

P194
仏教には二つの原理があります。ひとつは平等ということですね。(中略)
もうひとつ大事なことは、悟りを得る、煩悩の世界を超えた生き方ができるということです。

京都のお寺を紹介してくれている。
P209
東福寺・・・鎌倉時代に禅の寺になった(昔は天台密教)
建仁寺・・・臨済宗の栄西が始めた、建仁寺派(臨済宗は多数の本山がある)
南禅寺・・・元・亀山上皇の別荘、禅寺となる・・・京都五山のトップ、徳川幕府の庇護を受ける

天龍寺・・・足利尊氏によってつくられる
相国寺・・・足利義満

P210
京都の東にあるのは鎌倉時代につくられた寺で、北にあるのは室町時代につくられた寺です。
本山が7つ・・・建仁寺、東福寺、南禅寺、天龍寺、相国寺、大徳寺、妙心寺

【ネット上の紹介】
宗教教育に基づいた道徳を教えたい―著者のその願いは中学校で一学期間授業をする形で叶った。その授業は、やさしい言葉で教える仏教の「いちばん大切なこと」。仏教を通して質の高い生き方を、中学生だけでなく、すべての学生から熟年世代まで語りかける名著。

[目次]

なぜ宗教が必要なのだろうか
すべての文明には宗教がある
釈迦の人生と思想を考える
大乗仏教は山から町へ下りた
生活に生きる仏教の道徳
討論・人生に宗教は必要か
日本は仏教国家になった―聖徳太子、行基、最澄
空海が密教をもたらした
鎌倉は新しい仏教の時代1 法然と親鸞
鎌倉は新しい仏教の時代2 日蓮と禅
現代の仏教はどうなっているか
いまこそ仏教が求められている