「忘れ形見~漢方医・有安」秋山香乃
以前、この著者の作品を3冊読んだ。
「お茶々」シリーズ3部作、である。
とても良かったので、他の作品もどうだろう、と思っていた。
予感は的中・・・やはり、本作品も楽しめた。
供割(ともわり)と言う言葉がある。(P6)
国許では考えられぬ無礼だが、江戸の大通りでは急ぐ町人が大名行列を割って横切っても、罪にならない。過去には罪になった時期もあるが、幕府目付より諸藩の江戸留守居に寛文年間にお触れが出、「一切咎めまじく候」となった。
将軍家が許しているのである。
ゆえに、横切った女が罰せられることはない。
だが、横切られた若侍の運命は過酷である。その背に、冷たい汗が流れた。
藩の面目を潰した咎で、軽くて謹慎、逼塞。下手をすれば追放、切腹。最悪の場合は、お家お取り潰しの沙汰が下るやもしれぬ。
ここから物語が始まる。
この若者はどうなるのか?
なぜ女は、供割をしたのか?
漢方医・有安はどうかかわるのか?
・・・というわけで、楽しく読める人情時代小説。
PS
大名行列を横切るといえば、生麦事件を思い出す。
同じ江戸時代でも、かなり違う。
【ネット上の紹介】
江戸で漢方医を営む有安は、自分が斬った男の娘を育てるために刀を捨てた。彼は娘が真実を知る瞬間を恐れつつも、かりそめの平穏に身を置いていた。しかし、呉服商の娘の最期を看取ったことをきっかけに、彼の過去を詮索する人物が現れ…。優しさ溢れる下町人情小説。