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「いちばん長い夜に」乃南アサ
1作目「いつか陽のあたる場所で」
2作目「すれ違う背中を」
そして、シリーズ3作目最新刊にして最終刊「いちばん長い夜に」
一番よかった、盛り上がった、みごとなエンディング。
前回在庫切れで、入手するのに苦労したので、発売してすぐE-honに注文した。
ところが、表示が『出版社から取り寄せ中』、と。
いったいどうなってるんだ?早くも在庫切れか?
時間がかかったけど、なんとか入手。
このとき気づくべきだった。
予想以上に人気で、売れていることを。
内容が今までと違うことを。
ここからネタバレなので要注意。
未読の方は読まない方が、ずっと衝撃を受けて驚くことが出来るから。
今回は怒濤の展開だった。
シリーズで一番エキサイトして読んだし、面白かった。
今までの2巻は、刑務所を出た二人の細々とした日常を描いていた。
(あとがきより)
小森谷芭子と江口綾香には、共に前科持ちという事情がある。罪を犯した代償として人生を大きく狂わせ、多くのものを失った彼女たちにとっては「取り立てて大きなことの起こらない日常」こそが貴重であり、かけがえのないものに違いない。(中略)だから、「あえて何も起こらない話」にしようと思っていた。
前作同様、本作品でもささやかな日常が描かれるだろうと思っていた・・・ところが、怒濤の展開。
P135、第3章「その日にかぎって」・・・正確に言うとP180の2行目から急展開が始まる。
『その日』とは3月11日であった。小森谷芭子はたまたま一人で朝早くから仙台に出かける。
そして午後2時46分。
ポケットの中から、「ウー、ウー、ウー」というサイレンのような音がした。自分の携帯だと思うが、こんな音は聞いたことがない。
何だろうと思って携帯電話を取り出す。開いてみると、画面に「緊急地震速報」という文字が浮かび上がっていた。
――緊急?
何だろうと思った瞬間だった。ごうっという音が響いて、地の底から、何かに引きずり倒されるような衝撃があった。
意識する、しないに関わらず、『3.11』は日本の大きな節目となった。
評論、ノンフィクションが多く書かれた。
でも、普通の中間小説で、このようにきっちり表現されたのを読むのは(私は)初めて。
だからよけい驚いた・・・まさか「このシリーズ」で「この登場人物」が「経験する」なんて!、と。
第4章「いちばん長い夜」では、地震が起きてからの右往左往と、仙台から東京までの「脱出」が描かれる。これが超リアル。それもそのはず、3月11日、著者もたまたま仙台で本作の取材していたから。
イヤリングをなくしたのも著者の体験。ホテルでの経験もそう。だから超リアルなのだ。
静かに穏やかに進行する本作品テイストが覆った。それは嬉しい驚きである。
(あとがきより)
今回のことでは誰もが、それぞれの環境にいて心に傷を負ったのだと思う。被災した人も、被災を免れた人も、情報として知るだけだった人も、あらゆるところの、あらゆる人が傷ついたのだ。それが2011年3月11日以降の私たちの姿だ。そこから目を背けるわけにはいかなかった。
(中略)
この物語が、まさかこういう終わり方をするとは、私自身もまったく予測していなかった。だが、生き残ったものは生き続けなければならない。体験したことを決して忘れることなく、胸に刻みつつ、それでも諦めずに。芭子と綾香とは、既に新たなステップに踏み出している。
物語で登場するホテル法華クラブ仙台
〒980-0014
宮城県仙台市青葉区本町2-11-30
【参考リンク】
「いつか陽のあたる場所で」乃南アサ
「すれ違う背中を」乃南アサ
【TVリンク】
いつか陽のあたる場所で | NHK
【ネット上の紹介】
前科持ちの刑務所仲間―それが芭子と綾香の関係だった。“過去”に怯えながらも、東京の下町に居場所を見つけて、ゆっくりと歩き始めた時、二人は自分たちの大きな違いに気づき始める。人を殺めるとは何か。人が生きていくとは何か。亡くなった人間が残すものとは何か。そして、いつか、彼女たちの長い夜は明けるのだろうか?受苦の時代に暮らす全ての日本人に贈る、感涙の大団円。