「火のみち」乃南アサ
満州・奉天で終戦を迎えた一家。
昭和22年に引き揚げた時には、7人いた兄弟は4人になっていた。
長男は終戦直後の暴動で、三男は疫痢で、末っ子の邦子は引き揚げ船の中で息を引き取る。
父は満州で招集され戦死しているので、母・きよゑがいたが、帰国後、衰弱死。
残されたのは、次の4人。
19歳の長女・昭子。
次男・次郎は14歳。
9歳の満男は知能の発達に遅れがあった。
君子は6歳。
昭子は東京へ一人で行き、身を売って仕送りする。
次郎は乱暴者で短気、人を殺して刑務所へ。
満男は工場に働きにでて行方不明。
残された君子は施設へ。
この一家が戦後をどう生きたのか?
あらすじのように書いたが、ここまでが序章にすぎない。
P20から第一章、ここから物語が始まる。
P69
「養女、ですか」
君子は目を丸くした。急に何を言い出すのかと思ったが、先生は、真剣そのものの表情で、はっきりと頷いた。
「あなたのことを思って言うの。これから先の、南部さんの人生を考えた場合にもね、それがいちばんなんじゃないかと思うのよ」
P207
火のみちを読む。読んで、支配できれば、人間の勝ちだ。そして窯出しの瞬間は、その勝敗が分かるときだった。
【感想】
重厚な大河ドラマである。
読み終わって、疑問が残るのが2点。
昭子はどうなったのか?
八重子はどうなったのか?
昭子に関しては、「水曜日の凱歌」に引き継がれたのだと思う。
もしかして、八重子も、どこかで登場するのかも?
【ネット上の紹介】
妹を守るために人を殺した男。空洞が埋まらない心。欲したのは、古の焼物の「天空の色」。それは奇跡の美か、悪魔の色か。愛と憎悪。美と妄想。憧憬と執着。「許されざる領域」に踏み込んだ男の、凄絶な人生を描いた新たな代表作、ここに誕生!