「生き物が老いるということ」稲垣栄洋
P70
地球上で、閉経する生物は、人間と、シャチとゴンドウクジラの三種類だけである。
それにしても、どうして、閉経して繁殖能力を持たないおばあちゃんシャチが長生きをするのだろうか。(中略)
おばあちゃんがいない場合と比べて、おばあちゃんがいる群れは、孫の生存率が高まるというのである。そして、おばあちゃんシャチが死ぬと、その後、孫の生存率が低下するという。
海は危険がいっぱいである。おばあちゃんシャチの豊富な経験と知恵が群れを正しく導いていく。そして、母親世代のシャチに子育ての知識を伝え、家族の世話をする。こうしておばあちゃんシャチの存在によって、群れの生存率が高められていくのである。
【ネット上の紹介】
イネにとって老いはまさに米を実らせる、もっとも輝きを放つステージである。人間はどうして実りに目をむけず、いつまでも青々としていようとするのか。実は老いは生物が進化の歴史の中で磨いてきた戦略なのだ。次世代へと命をつなぎながら、私たちの体は老いていくのである。人類はけっして強い生物ではないが、助け合い、そして年寄りの知恵を活かすことによって「長生き」を手に入れたのだ。老化という最強戦略の秘密に迫る。
第1章 「老い」は「実り」である
第2章 「老い」が人類を発展させた
第3章 ジャガイモは死なない―死を獲得した生命
第4章 そして男と女が生まれた
第5章 限りある命に進化する
第6章 老木は老木ではない
第7章 「若さ」とは幻である
第8章 植物はアンチエイジングしない
第9章 宇宙でたった一つのもの