原題:『新幹線大爆破』 英題:『The Bullet Train』 仏題:『Super Express 109』
監督:佐藤純弥
脚本:佐藤純弥/小野竜之助
撮影:飯村雅彦
出演:高倉健/千葉真一/宇津井健/山本圭/志村喬/織田あきら/竜雷太/宇津宮雅代
1975年/日本
「権力者」だって持っている苦悩について
『日本暗殺秘録』(中島貞夫監督 1969年)と関連づけて論じるならば、本作の主人公の沖田哲男は自身が経営していた町工場が倒産し、妻と離婚しており、仲間の古賀勝は元過激派で、もう一人の仲間の大城浩も無職で血を売って生き延びているような有様で、「弱者」をフューチャーしている点においては同じなのであるが、海外においては「新幹線が時速80キロを下回ると爆発するという状況下の中で繰り広げられる、犯人たちと国家との攻防劇」というプロットが評価され、犯人の出自にはあまり関心は示されず、その部分はカットされて公開されている。
当時の状況を実感していないためなのかもしれないが、どうも犯人の生い立ちが上手く描かれているようには思えず、だから海外で受けなかったのではないだろうか? 犯人たちが国鉄本社に要求した500万ドルで海外に逃亡して何をしたいのかよく分からず、つまり完全犯罪を目指すのであるならば、奪った500万ドルだけでも見つからないように隠してもよかったはずで、ラストであっけなく射殺されてしまう沖田をリーダーとする犯人たちよりも寧ろ、新幹線をいかに確実に安全に停車させようかと悪戦苦闘している、宇津井健が演じる倉持運転指令室長や千葉真一が演じる青木運転士などの「国家側(当時は国鉄なのである)」に感情移入しやすく、製作者たちの意図に適っているのかどうかはともかく、結果的に本作は「弱者」同様に「権力者」にも苦悩があるというメッセージが込められることになっている。