MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『オール・ユー・ニード・イズ・キル』

2014-07-06 00:00:06 | goo映画レビュー

原題:『Edge of Tomorrow』
監督:ダグ・リーマン
脚本:クリストファー・マッカリー/ジェズ・バターワース/ジョン=ヘンリー・バターワース
撮影:ディオン・ビーブ
出演:トム・クルーズ/エミリー・ブラント/ビル・パクストン/ブレンダン・グリーソン
2014年/アメリカ

誰がオメガを殺したのか?(Who killed the Omega?)

 本来ならばNATO軍が率いるUDFの広報を担当しており実戦経験が無かったウィリアム・ケイジ少佐は、フランス行きを巡ってブリガム将軍との話し合いがこじれて命令違反で逮捕されてしまい、気がついたらヒースロー空港の基地で手錠をかけられてた。
 無理やりファレウ曹長にJ分隊に入隊させられると翌日ケイジは最前線に送られるのであるが、クレイモア対人地雷で敵のミミックと共に爆死したケイジは、目覚めるとヒースロー空港の基地で手錠をかけられてた。リタ・ヴラタスキ軍曹との出会いでケイジは自分がミミックの血を浴びてタイムループの能力を獲得したことを知る。
 カーター博士とも組んでケイジは何度も死んで目覚めることを繰り返しながら、敵の大本であるオメガがフランスのルーヴル美術館の地下に潜んでいることを知り、複数の手りゅう弾で倒すことに成功する。
 ここで問題となるのが、結末部分である。目覚めたケイジがいる場所はヒースロー空港の基地ではなく、UDFの広報としてヒースロー空港の基地に向かっている軍用機の中である。どうやらパリを中心とした敵の勢力が失われたようだというアナウンスが流れている中、ケイジはかつての同僚たちとすれ違いながら、広報担当として真っ先に「完全武装の雌犬(Full Metal Bitch)」や「ヴェルダンの天使(Angel of Verdun)」として知られ今回の戦争のイメージキャラクターを務めていたリタ・ヴラタスキ軍曹に会いに行く。もちろんリタはケイジと一緒に戦ったことなど覚えていないのであるが、実はケイジも自分が必死に戦っていたことなど覚えていないのである。
 しかしオチはこれで終わっていないと思う。このような作風で何が正確かを定義することは難しいが、輸血されてしまいタイムループが出来なくなったという設定にわざわざしたのだから、ケイジは水中でオメガの爆破に巻き込まれて死んでいなければならないはずなのである。記憶が失われず何度もトライが可能のタイムループの中では、リタがケイジのことをそう指摘したように「兵士(Soldier)」は「武器(Weapon)」と化すのである。そして臆病者のケイジでさえこの「ゲーム」の「ゴール」にたどり着けたのだから、本物の戦士であるならば、もっと簡単に「上がれる」はずなのである。つまり本作はリタ・ヴラタスキ軍曹のような立派な戦士に憧れ、「明日の端(Edge of Tomorrow)」を夢見ていたケイジの「夢オチ」なのである。


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