MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『螺旋銀河』

2014-07-26 11:00:23 | goo映画レビュー

原題:『螺旋銀河』 英題:『Antonym』
監督:草野なつか
脚本:草野なつか/高橋知由
撮影:岡山佳弘
出演:石坂友里/澁谷麻美/中村邦晃/恩地徹/石橋征太郎
2014年/日本
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2014 監督賞&SKIPシティアワード)

 似ていないのに似てしまう矛盾について

 英題の「Antonym」は「反意語、反義語」という意味である。それは夜間のシナリオ教室に通っている主人公の一人の澤井綾と、同じ会社の別の部署で働いている深田幸子の対称性として示されることになる。しかしお嬢様を気取る澤井とオタクっぽい深田は何故か2人とも人付き合いが下手で、澤井の元彼が深田の親戚だったりと類似が目立ちだし、やがて深田は澤井と同じチェックの柄の服を買い、偶然着ていった服が2人とも赤く、対照的な2人がお互いを「浸食」していく。そもそも2つの対立するものを「Antonym」という一語で表すことが矛盾しているはずで、その矛盾が「浸食」という形で現れるのかもしれないのであるが、作品の冒頭からラストまで「Antonym」という言葉の意味の繰り返される説明は澤井と深田のダイアローグまでが被ってしまうように却って自己同一性を崩壊に導こうとする。
 明らかに「前衛」と呼ばれる作品の類で、例えば、寺山修司の映像作品を想起させるものであるが、決して難解なものではない。難解であるとするならば、それはあくまでも抽象的な「Antonym」という言葉にこだわっているためで、本作は「Antonym」に関する寓話なのである。


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