原題:『Plastic Crime』
監督:加藤悦生
脚本:加藤悦生
撮影:八重樫肇春
出演:伊藤和哉/鄭美奈/辻しのぶ/小林真実/片岡功/小池真吾/鈴木タロオ
2013年/日本
(SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2014)
ニートの息子を持つ母親の悪夢について
家に引きこもってガンプラにはまっている主人公の夢人が外に出るきっかけとなったのは、自分の家に空き巣に入ってきた千歳と桐生に遭遇したことである。さらに夢人は仲間の韓国人女性のソニョンとの出会いで生き方を変えようとするのであるが、元締めの華子の策略で、自分が盗みを働いていることを両親に知られ、帰宅した時に母親の尚子が父親の純也の背中を鋏で刺しているところを夢人は見てしまう。
しかし突然フィルムが逆回転され、まるで全てが夢人の想像の産物だったかのように母親が夢人の部屋まで食事を持ってきた場面まで戻るのであるが、それは夢人の夢想というよりも、母親の尚子が見る、夢人が部屋から出ていく時に起こるであろう悪夢なのではないだろうか。それならば、例えば、華子と千歳と桐生が盗みに入る部屋を相談しあっている時に、明らかにホストにのめり込んでいて朝まで家を留守にしている女性宅に侵入しないということは考えられないなど、本作の演出や脚本の荒さは悪夢の「悪」として機能することになるであろう。
ところで夢人が引きこもりから抜け出せなかったことに関して監督は泥棒だからハッピーエンドは全く考えていなかったようであるが、華子の車の窓ガラスを割ってソニョンの在留カードを取り戻した後に、夢人とソニョンは2人ともに観た通りに「足を洗っている」はずで、それでも泥棒だからダメだと決めつけてしまうと、人間の可能性というよりも映画の可能性を殺いでしまうのではないだろうかという疑問は残る。