原題:『Sev Beni』 英題:『Love Me』
監督:マリナ・エル・ゴルバチ/エメフト・バハドゥル・エル
脚本:マリナ・エル・ゴルバチ/エメフト・バハドゥル・エル
撮影:スビタトスラブ・ブラコヴキー
出演:ウスハン・チャクル/ヴィクトリア・スぺスィヴセヴァ/オリーナ・シュテファンシュカ
2013年/ウクライナ・トルコ
(SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2014)
お互いを理解するために使われる言葉の信憑性について
母親に勧められて一度も会話さえしたことがない女性と結婚するはめになってしまった主人公でトルコ人のジェマルは、結婚前に親戚の男たちと共に憂さ晴らしにバチェラーパーティーをするためにウクライナに向かい、その際に現地のクラブでサーシャと出会う。2人はお互いに惹かれあうのではあるが、それぞれの言語を解さないためにジェマルは様々なトラブルに遭遇する。
実はサーシャは娼婦ではなく、金持ちのロシア人のアレクサンドロに囲われている愛人だった。サーシャは母親と祖母の家計を支えなくてはならず、やむを得ない選択だったのであるが、いつかは幸せな結婚をすることを夢見ていた。そんな時にサーシャはジェマルと出会ったのである。
しかし愛情だけでは2人の間に立ちふさがる壁を超えることは出来なかった。ラストでジェマルがいる空港にクルマで向かうサーシャにアレクサンドロから電話がかかってくるのであるが、結局、サーシャはクルマを停めて電話に出る。つまりサーシャはジェルマではなくアレクサンドロを選ぶのであるが、ここには経済的な問題に加え、コミュニケーションの不便さも関係しているであろう。しかし言葉が通じるからといって人間関係が上手くいくわけではないことは、例えば、ジェマルが警察に連行される原因になった夫婦喧嘩や、地面に描かれた燃え盛るハートマークの中で目の前のアパートに住んでいる恋人にアピールするものの火傷を負って、母親に連れ戻される少年などの描写でも明らかにされ、サーシャの選択に幸せになる保障は全くもってない。
本作はヴィクトリア・スぺスィヴセヴァの美貌も手伝って、まるでブリジット・バルドーやアンナ・カリーナが主演するような「アイドル映画」として観ることもできる。