MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス』

2015-01-16 00:46:35 | goo映画レビュー

原題:『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス』
監督:塩谷直義
脚本:虚淵玄/深見真
撮影:荒井栄児
出演:花澤香菜/野島健児/佐倉綾音/伊藤静/櫻井孝宏/沢城みゆき/東地宏樹/関智一
2015年/日本

当たり前とされている「システム」の不気味さについて

 正直、テレビアニメの『PSYCHO-PASS サイコパス』を観ていない者としてはストーリーについていくことが大変だった。ストーリーの核となる「シビュラシステム」は何とか理解できるものの、密入国してきたテロリストが「メモリースクープ」されて何故死んでしまうのか分からなかった。もちろん狡噛慎也と槙島聖護の因縁なども全く分からない。英語のセリフがこのままずっと続くのかと思って最初の方は後悔していたくらいである。
 そのテロリストがマルセル・プルーストの『失われた時を求めて 13 第七篇 見出された時II』の日本語訳を所持していたり、敵方で黒人のデスモンド・ルタガンダがミシェル・フーコー(Michel Foucault)の『監獄の誕生(Naissance de la prison, Surveiller et punir)』やフランツ・ファノン(Frantz Omar Fanon)の『黒い皮膚・白い仮面(Peau noire, masques blancs)』を読んでいたりするので何か深い意味があるのかと思ったが、どうやら本作は衒学的な要素が売りで、書物にそれほど深い意味を与えているわけでもなさそうである。
 ラストで「シビュラシステム」を実験的に導入していたSEAUn(東南アジア連合/シーアン)の水上都市シャンバラフロートで事件が起こった責任をとってハン議長は辞任するのであるが、結局、再度の立候補で当選してしまうというところは皮肉と捉えていいと思うが、それだけ問題があると思われる「シビュラシステム」が日本においては何の問題もなく機能しているという「現実」は既にテレビアニメで解決されているのであろうか? あるいはその不気味さこそを暗示させたいのであろうか?
 しかしそもそも主人公の常守朱にそれほどカリスマ性が感じられないと言ったら身も蓋もないのであるが、登場人物たちがかなりのヘビースモーカーであるところは逆に好感が持てる。


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