原題:『バンクーバーの朝日』
監督:石井裕也
脚本:奥寺佐渡子
撮影:近藤龍人
出演:妻夫木聡/亀梨和也/勝地涼/上地雄輔/池松壮亮/佐藤浩市/高畑充希/宮崎あおい
2014年/日本
野球に興味がなさそうな映画監督と脚本家の作品について
野球を題材とした作品とあってかなり期待して観に行ったが、日系二世が中心となって結成された「ASAHI」とカナダ人中心の「Mt. Pleasant」のゲームのシーンは決勝戦も含めて全く盛り上がらない。たまたまバットにボールが当たって生まれたセーフティバントの作戦が「Brain Ball」として有名になったことは事実としても、真夜中のレジー笠原とロイ永西によるボールを使わない「シャドー」バント練習はどう考えてもおかしな話で、素振りのようにバントの練習が成り立つのか疑問が残る。
クライマックスでロイが三塁に強烈な打球を放ち、レジーが逆転サヨナラのホームインをするのであるが、何故か他のメンバーと共に喜び合うこともなく、まるで勝ったらカナダ人に殺されるかのような不安な表情を見せるのであるが、そのような話だったのだろうか?
字幕にも問題があると思った。エミー笠原がメンバーたちを励まそうと友人に教えてもらった「Take Me Out to the Ball Game(私を野球に連れてって)」を歌うのであるが、何故か字幕が付けられていない。字幕があったとしても、例えば、ロイが相手投手と乱闘騒ぎを起こした直後、勤務先の監督官から「残念だ」と言われているのだが、彼が言う「It's a shame」は寧ろ「恥を知れ」というニュアンスだったと思う。このような微妙なニュアンスのズレが気になったのだが、誰が字幕を担当したのか分からなかった。
ちなみに「There are four seasons. Winter, summer, fall & baseball(4つの季節がある。冬、夏、秋とベースボール)」という店に貼ってあるポスターのキャッチフレーズは意味ではなく、冬と夏の単語の語尾を「er」で、秋とベースボールの単語の語尾を「all」で合わせて韻を踏んだところが面白いのである。