ノルウェー出身の画家のエドヴァルド・ムンク(Edvard Munch)は表現主義の画家
として知られているのであるが、個人的には上の作品『叫び』(1893年)のような
うねるような描写の元となっている原因を知りたいと思っていた。そのような時に、
国立新美術館で催されていた「チューリヒ美術館展」で以下の作品を観たのである。
『ヴィルヘルム・ヴァルトマン博士の肖像(Portrait of Dr. Wilhelm Wartmann)』(1923年)
を観たことで謎が解けたように思った。『叫び』の解説に「遠近法を強調した構図」と
あるが、見ての通り、博士の足元にある絨毯のグダグダ感は擁護のしようがなく、本当は
ムンクは遠近法が理解できておらず、だからうねるような筆致を駆使して遠近法を
ごまかしていたように感じるのである。これはもちろん悪口ではなく、ウィークポイントを
独創的な作風に昇華させる天才のなせるわざなのだが。