原題:『Bariera』
監督:イエジー・スコリモフスキ
脚本:イエジー・スコリモフスキ
撮影:ヤン・ラスコフスキ
出演:ヤン・ノヴィツキ/ヨアンナ・シュツェルビツ/タデウシュ・ウォムニツキ/マリア・マリツカ
1966年/ポーランド
人波に流されながらも人生を模索する「子供たち」について
なかなかストーリーを追うことが難しい作品であるが、大まかに書き連ねてみる。
冒頭は電気コードで両手を背後で縛られたまま、順番に医学生4人が目の前のマッチ箱を口でくわえるゲームに興じている。ようやく勝者が決まり、本作の主人公となる彼は豚の貯金箱を持って一人で寮を出る。父親に会いにいくのであるが、彼は車イスに乗っている。何故か見知らぬ男たちが次々と2人の前を通り過ぎていくのであるが、父親は息子に手紙を持たせて、ある女性の元を訪ねさせる。最初、主人公は清掃員と勘違いされるのだが、手紙を見て、主人公にサーベルを持たせる。結婚することを決意した主人公は右から左に人波に流されていくのであるが、信号で立ち止まると何故か主人公の目の前を車イスに乗った父親(=「老い」の暗喩)が通り過ぎていき、信号が変わると再び主人公は人波に流されていく。
主人公は偶然、路面電車の女性車掌に出会い、2人は仕事の合間を縫って出かけると、スキーのジャンプ台の頂上から主人公はトランクに乗って滑り落ちて転倒したりしているのであるが、やがて主人公はライラックの花の中にうずもれてしまう。
そのうち、主人公となかなか会えなくなった女性車掌が休みをもらうために、自分と代わって仕事をしてくれる人を探すのであるが、なかなか見つからない。彼女も左から右に人波に流されていくのであるが、信号で立ち止まると何故か担架で運ばれる主人公(?)(=「病気」や「怪我」の暗喩)が通り過ぎていき、信号が変わると再び女性車掌は人波に流されていく。
そして路面電車を運転している女性車掌の目の前に主人公が現れる。彼は電車のフロントガラスにしがみ付いており、停まった勢いで電車から落ちるのであるが、女性車掌は笑顔で「風邪をひくわよ」と声をかけて作品は終わる。
子供が「お金」と「武器」を持って大人になるまでの「寓話」が描かれていると思うが、はたして2人が「大人」になれたのかどうかは微妙である。