原題:『こどもつかい』
監督:清水崇
脚本:清水崇/ブラジリィー・アン・山田
撮影:ふじもと光明
出演:滝沢秀明/有岡大貴/門脇麦/中野遥斗/尾上寛之/西田尚美/田辺桃子/山中崇/吉澤健
2017年/日本
愛の深さが生み出す「憎悪」について
シンクロとはよくある話で、例えば本作も『ディストピア パンドラの少女』(コーム・マッカーシー監督 2016年)と『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』(ヨアヒム・ローニング、エスペン・サンドベリ共同監督 2017年)の要素を合わせ持ったような作品なのであるが、これはただのホラー映画ではない。
主人公で新人記者の江崎駿也が追っている「トミーの呪い」はある人形に憑りついたものであるが、子供たちの恨みを晴らそうとするその呪いは、例えば作品冒頭において柴田絵理奈のようなシングルマザーの、娘の瑠奈に対する虐待やリサイクルショップ経営者の近藤創の、少女に対する性的虐待や1957年の「上之郷サーカス」に所属していた劇団員のトミーの、子供たちに対する虐待の報復なのである。
しかし裏を返してみるならばそれらの虐待には必ず子供たちに対する、歪んではいようが「愛」があったことに間違いはないし、保育園で保母として働いている原田尚美が、自分が母親から虐待を受けていたことを忘れていた理由は、母親に対して愛を失っていたからであろう。
それでは尚美が園児の笠原蓮から買った恨みを許してもらえた理由を勘案するならば、尚美が蓮の母親になってあげるという口約束だけだったからであろう。逆に言うならば尚美と蓮をつなげた愛情はそれほど深くはなかったことを意味するのであるが、このアイロニーはとても深い。