MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『中国のゴッホ』

2017-07-22 23:24:04 | goo映画レビュー

原題:『中国梵高』 英題:『China's Van Goghs』
監督:ハイボー・ユウ/キキ・ティエンチー・ユウ
撮影:ハイボー・ユウ
出演:ジャオ・シャオヨン
2016年/中国・オランダ
(SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2017 監督賞)

中国人の「オリジナル」に対する感性の鈍さの原因について

 主人公のジャオ・シャオヨンは中国の深圳市近郊にある「大芬(ダーフェン)油絵村」でファン・ゴッホのレプリカを制作している画家である。家庭の経済事情で中学校を一年で退学した後に、独学で絵画を学び20年の間複製画を描いて家族を養っているのであるが、本人は写真などを参考に複製画を描いているだけで、本物のファン・ゴッホの作品を見たことがなかった。
 パスポートを取ってオランダのアムステルダムへ弟子たちや家族と赴き、自分の作品を買ってくれている店に立ち寄るのであるが、そこはギャラリーではなく土産物店だったことにがっかりする。さらにファン・ゴッホ美術館を訪れようやく原画を見て、さらにゴッホが入院していた病院や墓地を訪ねていき、『夜のカフェテラス』で描かれた店も訪問しゴッホと同じように模写を試みる。帰国後、ジャオ・シャオヨンは複製画ではなく、自分の画を描こうとするのだが、それはゴッホの筆のタッチによる「オリジナル」なのである。
 本作が興味深い点は、ジャオ・シャオヨンが、ゴッホと同じように貧しい環境において作品を制作していることから、いつか自分も50年、100年後に残るような作品を描きたいと語っているのであるが、ジャオ・シャオヨンは気がついていないようなのだが、ゴッホは一流の画家であるのみならず、様々な一流の画家の作品を模写しながら、色彩について研究していた一流の「化学者」でもあったということである。つまり皮肉なことにここに金銭面に拘り過ぎる中国人の「オリジナル」に対する感性の鈍さが表われてしまっているのである。


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