原題:『三尺魂』 英題:『3ft Ball & Souls』
監督:加藤悦生
脚本:加藤悦生
撮影:八重樫肇春
出演:村上穂乃佳/木ノ本嶺浩/辻しのぶ/津田寛治
2017年/日本
(SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2017 SKIPシティアワード)
『銀魂』に挑む『三尺魂』の意気込みについて
花火師の城戸のネットへの書き込みに誘われ、研修医の高村、主婦のふみ、そして女子高生の希子が小屋に集まってくる。小屋の中央には城戸が用意した三尺魂の花火が置かれており、発火ボタンを押すだけで一気に死ねるようになっている。城戸は花火事業の拡大に失敗し莫大な借金を抱えてしまい、妻と娘のために生命保険で返済しようと企んでいるのである。高村は上司の木村のパワハラが原因で鬱を発症し小屋にやって来た。ふみは自分が運転する車を運転中、横から来た車に衝突され、助手席に乗っていた息子の翔太を亡くしていた。希子は同級生たちのイジメを受けていて、それぞれ死に場所を探していたのであるが、希子が押して爆発はするものの、何度繰り返しても爆発前の状態に戻ってしまい4人とも死ねないでいた。
小屋の中で4人だけで行われる「ワンシチュエーション」の部分はよくできていると思うが、これは監督よりもベテランの津田寛治の経験がものを言ったような感じである。しかしそもそもこのシーンは「ループ」というよりもネット上の自殺サイト内で交わされた会話をヴィジュアル化したように見える。希子がハンドルネームを変えるなどして混乱した様子が描かれ、2016年9月18日に全員が退会したと解釈もできると思うがさすがにこれは見方がうがち過ぎだと自分でも思う。
結局、4人は自殺を思いとどまり、それぞれの生活に戻っていくのであるが、時間は一気に進み、小泉という男が慌てて病院に入院している妻の病室へ駆け込むと、そこには赤ん坊を抱いた希子がいるのである。城戸は再び花火師の仕事が軌道に乗って妻と娘と上手く暮らしている。さらに時間は進み「未来(みく)」と名付けられた娘が道路に飛び出し、小泉の目の前で車に轢かれそうになるところをたまたまそばにいた女性に助けられる。小泉はお礼をしようとしたが、女性は旦那と一緒に歩いて行ってしまう。その後に希子が夫と娘のもとに来るのであるが、実は女性はふみで、希子とふみは出会い損ねているのである。この予定調和なストーリーの慌ただしさの是非は意見が分かれるかもしれないのだが、唯一出てこなかった高村の不在がやはりあの後自殺したのだという仄めかしであるならば、悪くはないと思う。
「SKIPシティアワード」に本作が選ばれたことは個人的にはとても意外だった。「最優秀作品賞」「監督賞」「審査員特別賞」は選ばれた3作品の中で争われると思っていたが、「SKIPシティアワード」は残りの2つの日本映画から選ばれると思っていた。加藤悦生監督は2013年で『PLASTIC CRIME』でも本映画祭長編部門にノミネートされたこともあり今回は本映画祭に対する「功労賞」という意味合いが強いように感じる。