MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

「マウスが『ラット』と書く」

2017-07-30 20:14:14 | 美術

 渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムでは「ベルギー奇想の系譜 ボスからマグリット、

ヤン・ファーブルまで」が催されている。最近、ベルギー系の奇妙な絵画を観る機会が多く

なっている気がするのだが、ここではマルセル・ブロータールス(Marcel Broodthaers)の

「マウスが『ラット』と書く(La souris écrit rat)」という1974年の作品を取り上げたい。

 この活版印刷の作品に対してキャプションでは「La souris écrira」ともなり「マウスが書く

だろう」という未来形としても解釈できると書かれていたのだが、それでは全く本作の説明に

なっていないと思う。

 まずタイトルの訳が間違っている。ここでは「La souris」は「マウス」ではなく、「若い女性」

という意味で、それは英題「The mouse writes rat」でも同様である。そうなるとタイトルの

意味は「若い女性がラットを描く」となり、実際に、若い女性の組んだ腕の影がラットの黒い影

として映し出されているはずなのである。

 しかしすぐに分かるように映し出されている影はラットではなく、ラットの天敵のネコのように

見えるのだが、これはブロータールスと同じベルギー出身のルネ・マグリット(René Magritte)の

「イメージの裏切り(La trahison des images)」という作品の意図と同様に捉えるべきであろう。


「これはパイプではない(Ceci n'est pas une pipe)」


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