原題:『Hacksaw Ridge』
監督:メル・ギブソン
脚本:ロバート・シェンカン/アンドリュー・ナイト
撮影:サイモン・ダガン
出演:アンドリュー・ガーフィールド/テリーサ・パーマー/ヴィンス・ヴォーン/サム・ワーシントン
2016年/アメリカ
受け継がれる「良心的兵役拒否」について
まだ子供だった頃、主人公のデズモンド・ドスが兄のハロルドと一緒に登って遊んでいたのどかな崖が、後に日本の沖縄において「Hacksaw(弓のこ)」と形容された激戦区としてデズモンドの目の前に現れ厳しい戦いを強いられるコントラストが効いている。
デズモンドは兄に怪我を負わせた経験と、父親のトムが先の世界大戦で別人のようになって帰還してきたことから武器を持たずに衛生兵として戦地に赴こうとするのであるが、上官からも同僚からも変人扱いを受けることになる。
しかしデズモンドには「セブンスデー・アドベンチスト教会(Seventh-day Adventist Church)」の敬虔なクリスチャンであるという強いバックボーンがあり、軍事裁判にかけられても曲げない信念を持っていた。ここで印象的なシーンはラストにおいてついに怪我を負ったデズモンドが担架で運ばれようとする際に、妻のドロシーに貰った聖書が無いことに気がつき、同僚に探してもらっている時を同じくして、日本兵の大将が切腹をする場面である。ここで2つの「狂気」が同時に描かれているのであるが、その後敗戦国となった日本はそれまでの「狂気」を放棄してデズモンドの「狂気」を受け入れる。その「狂気」が日本国憲法の第9条として今日まで維持されているところが興味深いのである。