MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『ひかりのたび』

2017-07-25 00:10:03 | goo映画レビュー

原題:『ひかりのたび』 英題:『dream of illumination』
監督:澤田サンダー
脚本:澤田サンダー
撮影:西田瑞樹
出演:志田彩良/高川裕也/瑛蓮/杉山ひこひこ/萩原利久/山田真歩/浜田晃
2017年/日本
(SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2017)

「移動」を巡る物語について

 主人公で高校3年生の植田奈々は外国人相手の不動産業を営む植田登の仕事の都合で幼い時から転校を繰り返しており、今の街に越してきて4年が経つとしていたのであるが、そろそろ高校卒業と同時に進路を決めなければならない7月を迎えていた。父親は東京に引っ越す予定で奈々にも一緒に行って暮すか、あるいは海外に留学してもいいと言うのだが、奈々は今住んでいる場所で就職して暮らしたいという強い思いがある。
 奈々はたびたび自分の自転車が壊される被害に遭っており、校舎の屋上に置かれている缶コーヒーとタバコの吸い殻越しに自転車置き場に向かう奈々を映し出すカットが素晴らしい。奈々は父親を恨む人の嫌がらせだと分かっているのであるが、新しい自転車を買うことを止めて、同級生の狩野公介の自転車に同乗したりバスに乗って通学するようになる。しかしそれは地元に根を下ろそうとする奈々の意志とは裏腹に、やはり「移動」させられることになるのである。
 一方、登は奈々に3年前に遭遇したある男の子の話をする。母親の梶本道子に叱られた息子の大樹は家出をしたのであるが、その時偶然登は乗っていた車の中から大樹を目撃した。しかし登は声をかけることもなく大樹はどこかへ行ってしまい、翌日、登は大樹が事故に遭って亡くなったことを知るのだが、「移動」好きの登らしい話ではある。
 だからラストにおいて奈々がウェイトレスのバイトをしている「移動」が活発なファミリーレストランで居眠りをしていた登が「罰」を受けることは極めて自然な流れではあろう。


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