原題:『Hjertestart』 英題:『Handle with Care』
監督:アーリル・アンドレ―セン
脚本:アーリル・アンドレ―セン/ヒルデ・スサン・ヤークトネス/ホルヘ・カマチョ
撮影:ダーヴィッド・カッツネルソン
出演:クリストッフェル・ヨーネル/クリストッフェル・ベック/マーロン・モレノ
2017年/ノルウェー
(SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2017 最優秀作品賞)
タイトルから推測できる「アイデンティティ」の迷走について
ノルウェーに住む主人公のヒェーティルと妻のカミラはコロンビアから6歳になるダニエルを養子として迎えて育てていたのだが、カミラが交通事故で亡くなった後に、ヒェーティルとダニエルの関係がギクシャクするようになり、ダニエルを実母の元に戻した方がいいのではないかと考え、ダニエルの母親であるジュリ・ガリードを探しに2人はコロンビアへ向かう。
ダニエルを養子にする際にも世話になったタクシー運転手のタボ(グスタフ)を再び雇って養護院やジュリが働いていそうな職場などを訪れるのだが手掛かりはつかめず、だんだんとヒェーティルとダニエルの現状を知るようになったタボは一緒に住んでいる妹のヴィクトリアと彼女の娘のチェルシアと相談してダニエルを養子に迎えてもいいとヒェーティルに提案するのだが、チェルシアのおもちゃの車をダニエルが直す様子を見たヒェーティルは、タボのタクシーを修理した自分自身と重ねて見ることでようやく親子の絆を感じ始めるようになる。
ラストシーンにおいて更生して小学校の清掃員として働いていたジュリを見つけたヒェーティルがダニエルの写真を渡して教室を後にし、廊下を走って来る多くの児童たちと交錯した後に彼らが住むであろう街並みが映し出され美しいイメージで閉じられるのではあるが、そこには別の「ダニエル」がいるのであろう。最優秀作品賞は極めて妥当だと思う。
ちなみに原題の意味は「自動体外式除細動器(AED)」らしい。英題の邦題も意味が違い、タイトルに迷いが感じられる。