原題:『ブワナ・トシの歌』
監督:羽仁進
脚本:羽仁進/清水邦夫
撮影:金宇満司
出演:渥美清/下元勉/ハミシ・サレヘ/ハイディ・ギダボスタ/サミエル・K・アンドリウ
1965年/日本
素人を相手に物語を紡ぎあげるプロの俳優の力量について
主人公の片岡俊男は日本の学術調査隊の研究場所となるプレハブ小屋を建てるために東アフリカの国に一人でやって来たのだが、サポートしてくれるはずの日本人は病気で入院してしまい、『ホワイト・ナイルに沿って』という著書の作者で10年間現地でマウンテンゴリラの生態を研究している大西教授にもそで無くされて一人で小屋を立てなければならなくなる。
片岡はハミシを初めとする現地の住人を雇って小屋を建て始めるのであるが、仕事の遅さにイライラした片岡はハミシを殴ってしまい、彼らは仕事を放棄してしまうのであるが、簡単な裁判を経てハミシと和解した片岡の仕事を手伝おうと再び集結すると小屋が完成する。当初、このストーリーの流れは片岡を演じたのが渥美清ということで、『男はつらいよ』(山田洋次監督)において「暴力」を振るって家を離れて放浪を強いられる主人公の車寅次郎に対するアイロニーかと思ったのだが、『男はつらいよ』の映画版の一作目の公開は1969年で本作の方が先に制作されているのである。そうなると車寅次郎は「確信犯」ということになろう。
ラストでハミシが海水をコーラの瓶に入れて持ち帰るシーンがある。アフリカ人が本物の「コーラ」を発見するまでには『ミラクル・ワールド ブッシュマン』(ジャミー・ユイス監督 1980年)まで待たなくてはならない。