MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『ビジランテ』

2018-01-04 00:58:42 | goo映画レビュー

原題:『ビジランテ(Vigilante)』
監督:入江悠
脚本:入江悠
撮影:大塚亮
出演:大森南朋/鈴木浩介/桐谷健太/篠田麻里子/嶋田久作/間宮夕貴/吉村界人/岡村いずみ
2017年/日本

「地元」を守るのは誰なのか?

 地元渡市の市議会議員である神藤武雄の妻が亡くなった直後、父親の暴力に耐えられなくなった一郎と次郎と三郎の三兄弟は武雄を刺して逃走を図るものの、3人とも捕まってしまうのであるが、その際に使用されたナイフは一郎によって土に埋められた。しかしすぐに一郎だけが逃走して時が流れ30年後の武雄の葬儀を迎えるのである。
 武雄の後を継ぐように二朗は市議会議員になっており、三郎は地元のヤクザに雇われてデリヘルの店長をしている。地元にショッピングモールを建設するために武雄の土地を売却することにしていた二朗だったが、突然一郎が横浜で営んでいた会社が倒産したために帰郷してきたことから混乱が生じる。一郎はいつの間にか武雄から土地を譲り受けており公正証書まで作成していたのである。武雄が一郎に土地を譲った理由は、祖父が屑鉄をこつこつと売りながら買い上げた土地を守ることを約束したからであろう。逆に言うならば一緒に暮らしていた二朗や三郎は武雄に信用されていなかったのである。
 兄弟の諍いと同時進行している物語は、その土地に住んでいる中国人たちと二朗が所属している、昭和44年結成された地元の自警団との諍いである。つまり2つの物語は地元を守ろうとする「よそ者」と地元を変えようとする「地元民」という捩れた展開を辿り、市議会議員である二朗は「よそ者」の一郎とヤクザに雇われている「地元民」の三郎の間に挟まれた状態になる。
 かつて自分たちを守ったナイフを三郎が掘り出したことから事態が大きく動くことになる。三郎が部屋に残していたナイフを一郎が手に取ると、地元のヤクザの組長の首にナイフを突き刺して殺してしまい、大混乱の中で一郎も殺されてしまう。そのナイフを持って脱出した三郎が女性従業員たちを閉じ込められていたコンテナから救出した後に、一郎を追って横浜から来ていたヤクザの組長を乗せた車を見つけて、窓を開けさせると組長に向かって同じナイフで刺し殺すのであるが、返り討ちに遭う。つまり「よそ者」と「地元民」が殺し殺される構図が描かれるのである。これぞ映画という作品ではあるが、正月に観るものではない。


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