先日観に行った東京都美術館で催されている「ブリューゲル展 画家一家 150年の系譜」
においてヤン・ファン・ケッセル1世(Jan van Kessel the Elder)と葛飾北斎の類似性を
指摘したのだが、渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで催されている「ルドルフ2世
驚異の世界展」で葛飾北斎のような画家が他にもいることが分かる。
(『花瓶と果物、昆虫(Vase of Flowers Surrounded by Fruits and Insects)』)
上の作品はヤーコブ・フナーヘン(Jacob Hoefnagel)が1629年に描いた水彩画である。
(『2頭の馬と馬丁たち(Horses and Grooms)』)
上の作品はルーラント・サーフェリー(Roelandt Savery)が1628年頃に描いた
油彩画で、ブリューゲル風の画家だったサーフェリーは鳥を描くことを専門としたヨーロッパ
最初の画家として知られている。さらにサーフェリーはクリステイン・ド・パス(Crispijn
De Passe)やロベルト・ファン・フルスト(Robert van Voerst)という彫刻師と組んで、
『「絵画術・素描術の光」シリーズ(On the True Art of Painting and Drawing)
「Luce del dipingere et disegnare / Van't Light der teken en Schilder konst」』と
いう、まさに北斎漫画のようなスケッチ画集を1628年から1636年にかけて制作して
いる。つまり1830年代前半にヨーロッパに渡った北斎漫画よりも200年早いのである。
何故サーフェリーではなく北斎漫画がヨーロッパ文化に影響を与えたのか考えるならば、
ルドルフ2世が築き上げたこのような文化的遺産が1618年から1648年にかけて
勃発した三十年戦争で散逸してしまったからなのか、あるいは北斎漫画がヨーロッパの画家
が描いていなかった鯉なども描いていたからなのか? この単純な問題を解くためにあと
どれくらい歴史を勉強しなければならないのか?
(『春(Spring)』フィリップ・ハース(Philip Haas))2010年
(『コロッサス:巨像(Colossus)』フィリップ・ハース(Philip Haas))2010年