原題:『茅ヶ崎物語 ~MY LITTLE HOMETOWN~』
監督:熊坂出
出演:宮治淳一/中沢新一/加山雄三/萩原健太/神木隆之介/賀来賢人/野村周平/桑田佳祐
2017年/日本
改めて思い知らされるビートルズの偉大さについて
最初は自称「日本一のレコードコレクター」である宮治淳一が多くの有名ミュージシャンを生む茅ヶ崎を加山雄三などからのインタビューを通して芸能史の視点から、人類学者の中沢新一が「アースダイブ」という手法で地理学的観点からその謎をあぶり出すというドキュメンタリー映画として観ていたら、急に1973年9月に高校三年生の桑田佳祐が最初にライブをした学園祭「Live at 県鎌'73」を再現したフィクションが流れたことに意表を突かれた。
もしもこの再現が忠実なものであるならば、興味深いものがある。桑田佳祐が結成した即席バンドの前に演奏したバンドは「キャロル」のコピーバンドである。「キャロル」も桑田佳祐もロックの素養はビートルズから来ているのであるが、「キャロル」のメンバーが革ジャンでリーゼントという初期のキャヴァーン・クラブ時代のビートルズを模倣していたのとは対照的に、即席でバンドを組んだ桑田は1969年9月にオノ・ヨーコやエリック・クラプトンたちとトロントのフットボールスタジアムで急遽開催した「ロックンロール・リヴァイヴァル・フェスティヴァル」がベースになっている。その違いこそがサザンオールスターズの楽曲の臨機応変の豊かさを生んでいるのであるならば説得力を感じるのである。