MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『この世界に残されて』

2021-01-24 00:49:40 | goo映画レビュー

原題:『Akik maradtak』 英題:『Those Who Remained』
監督:バルナバーシュ・トート
脚本:バルナバーシュ・トート/クラーラ・ムヒ
撮影:ガーボル・マロシ
出演:カーロイ・ハイデュク/アビゲール・セーケ/マリ・ナジ/カタリン・シムコ―/バルナバーシュ・ホルカイ
2019年/ハンガリー

残らない「残された者たち」について

 作品冒頭は主人公で産婦人科医のアルダール・ケルネル(=アルド)が女性の出産に立ち会っているシーンで、その後1948年、その赤ん坊が生理不順に悩んでいる16歳になったクララで、相変わらず42歳になっているアルドが既に2年前から主治医として診察しているのだが、アルドもクララも両親を戦争(ホロコースト)で亡くしており、クララはおばのオルギに育てられている。
 アルドとクララは似たような境遇で、おばとの折り合いが悪いクララの「押し」でアルドとクララは半同棲のような生活を送ることになるのだが、絶えずソ連当局の秘密警察の家宅捜査を気にしながら性交渉はないままで、ラストシーンは1953年の3月5日を迎える。
 クララの誕生日(?)でアルドや彼の恋人やクララのボーイフレンドのペペたちが集う中でヨシフ・スターリンが亡くなったことがラジオで報じられる。ペぺはこれで自由に仕事ができるということで喜んだりしているのだが、私たち観客はその後1956年に起こったハンガリー動乱の事実上の失敗によりペペが想像していたような自由を得ることはできなかったことを知っているために複雑な思いで彼らを見ることになる。同様に、スターリンの死去を知った後に全員で「ここにいない大切な者たち」のことを想いながら祈るのであるが、何故かアルドだけが祈っていないのはスターリンの死が全てを解決するわけではないと察していたからかもしれない。


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