原題:『肥龍過江 Enter the Fat Dragon』
監督:谷垣健治
脚本:ウォン・ジン
撮影:石坂拓郎
出演:ドニ―・イェン/ウォン・ジン/ルイス・チョン/テレサ・モウ/竹中直人/丞威/渡辺哲
2020年/香港
「ファット・ドラゴン」になった意義について
主人公のチュウ・フクロンはやり手の敏腕刑事なのだが、やり過ぎる嫌いがあって危うく警察長官を自身が運転していた車で轢き殺しそうになったことから、証拠品保管所へ左遷され、備え付けのお菓子の自動販売機を「活用」していたら半年で66キロの体重が120キロを超えてしまい、スリムだった体型が「デブゴン」と化したのである。
フクロンの働きで上手く出世した同僚のファン警視の計らいで、AV監督の山本勇二を日本に護送しながら彼を狙う日本のヤクザを捕らえる「東京ミッション」を担い、成功すれば刑事に復帰できる約束を取り付ける。
ここまでは悪くはなく、築地市場や東京タワーで繰り広げられるカンフーアクションもそれなりに楽しめるものの、そもそもストーリーの根本部分に不備があるように思う。香港においてカンフーを駆使して犯人を捕らえていたフクロンが、すっかり太ってしまったまま東京に向かった後、スリムだった頃と同様にカンフーを繰り広げてしまっては肥満による「ハンディ」がストーリーに活かされず、つまりドラマツルギーとして太った意味がないと思うのである。